iD PhotoはPCで一時期広く使われたMOの上位規格であるAS-MOを元に開発された規格で、音楽用のMDよりもさらに一回り小さいメディアに730MBのデータを記録することが可能でした。当時はメディアのMB単価もCFやSDの方が遙かに高かったため、安価かつ大容量のメディアである事が前面に押し出されていました。
一般的なMOは読み出しよりも書き込みの速度が大幅に遅いのが特徴ですが、iD Photoはこの弱点が大幅に解消されていて、安定して読み出しに近い速度での書き込みを実現していたため、連続記録性能が要求される動画の撮影にも最適ということでした。実際にIEEE1394接続でこのカメラをPCと接続すると外付けのリムーバブルメディアドライブとして使うことが出来るのですが、SCSI接続のGIGAMOと比較しても書き込み性能はずっと良好でした。
結果的にそのiD Photoを採用した唯一の市販品デジタルカメラとなってしまったのがこのiD Shot IDC-1000Zでした。光学素子は1/2インチ150万画素CCDですが、どちらかというとビデオカメラ用に近い特性を示すもので、この製品もVGA(640×480Pixel)30fpsの動画撮影に対応していることを大きくアピールしていました。ファイルフォーマットはQuickTimeムービー形式で、当時としてはPCで扱う際の汎用性を意識した選択であったといえるでしょう。
実際に撮影した映像の画質は、静止画については150万画素1/2インチCCDであるだけに、解像感は高くありません。ただ、当時のSANYOのデジタルカメラの特徴である意外な質感の良さや、発色の良さはこの機種でも見られ、比較的良好なものというレベルです。ただ、真価はやはり動画撮影時に発揮され、当時の機材でVGA解像度できちんとした画質を確保しつつ手軽に撮影できる機材というのはそう多くはなかったのではないでしょうか。最近のフルHD対応ビデオカメラと比べるべきものではありませんが、Hi8やS-VHS Cのカメラよりは明らかに見やすいものでしたし、miniDVのカメラでもこれ以下の画質のものは多くあったと思われます。
最大の弱点はスペックの割に高価(標準価格16万円)だったこと、商品化が遅れすぎて後継製品を出す前にiD Photo自体の価値が大きく損なわれてしまったことでしょう。初代Xactiには当初iD Photoを搭載する計画だったという話もありますが、その頃にはSDメモリカードが十分に安くなってしまっていたのです。
技術面でも意欲的な製品で、実際の仕上がりも悪いものではなかっただけに、メディアの規格一つで製品の命運が大きく左右されてしまったことが残念としかいいようがありません。
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0円
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不明
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