モデル末期にはコスト上昇分吸収のため、実に50%もの値上げがあったものの、それでも尚色あせないコストパフォーマンスを誇った、MCカートリッジの歴史に残る名機です。現在はマイナーチェンジと少々の価格上昇が加わったAT-F3/IIIに置き換わっています(注.レビュー公開時点の状況。現在はAT-F3/IIIの製造は打ち切られ、下位に登場したAT-F2が実質的な後継機扱い)。私が購入した時点では、メーカー希望小売価格は10,000円でした。
当時実売価格では通常でも8千円台という製品でしたが、無垢ダイヤの楕円針とPCOCC6Nのコイルを採用していて、周波数特性も15~50,000Hzを確保。スペック的にはとても値段が信じられないものです。
他の追随を許さない、史上最高のコストパフォーマンス
当時カートリッジ交換が可能なプレイヤーを持っている人が、とりあえずMCのカートリッジを使ってみたいと思ったときに、真っ先に安価な入門用としてあげられていたのがこの製品でした。
針先がごく普通の楕円針ですし、さすがにヴォーカル曲のサ行を濁りなく完全に再現しきれるほどの緻密さはありませんが、ほとんどのソースを無難に再生してくれます。少なくともMM型から初めて付け替えた人が、「MCの音はこんな感じなんだ」と実感できるだけの水準は十分に保っているといえます。
一時期海外製品も含む実売価格1~3万円台のカートリッジは数多く使いましたが、この製品より部分的に上回る製品こそいくつかあったものの、明らかに格上と感じられたほどの製品には出会えませんでしたから、その実力はやはり本物だったのでしょう。
高級志向のユーザーからはどうしても軽く見られてしまうオーディオテクニカのカートリッジですが、このような低価格で充実した製品こそユーザーの裾野を広げる大きな原動力となっているのですから、もっと高く評価されて然るべきではと思ってしまいます。
(2018/06/19追記)
現在はカートリッジの価格がこのレビュー執筆時よりもさらに上昇してしまい、実質的な後継機であり、オーディオテクニカの最廉価MCカートリッジであるAT-F2ですら希望小売価格3万円となってしまいました。現在1万円台で買えるVMカートリッジはとてもここまでのコストがかかったものではなく、もはや二度と現れないお買い得製品だったと言って差し支えないでしょう。
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購入金額
5,780円
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購入日
1999年頃
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購入場所
ダイナミックオーディオ
退会したユーザーさん
2018/06/19
jive9821さん
2018/06/19
今ならこの金額でこれだけの内容を持った製品は絶対に作れないであろう名機でしたね。
音質的には一般的にイメージされた、やや細身でしなやかというMCらしいMCの傾向を持っていたことで、MCを使うなら最初はこれを買えば間違いないといわれ続けた定番でした。
以前から使っていたものもまだ残ってはいるのですが、現時点で箱から出していない未使用品も残してあります。もっとも、現在はAT33Rを主に使っているので、以前から使っていた方を音質評価のためにたまに使う程度になってしまいましたが…。