KENSO。神奈川県立相模原高等学校の略称「県相」からグループ名をとった、現役の歯科医清水義央先生を中心とするセミプロバンドだ。でもテクニックは本物。彼らのアルバムはフランス盤などもあるが、実際外国では高値で取引されているようだ。ジャンルはプログレッシブロック、いわゆるプログレ。変拍子ばりばり(通しの変拍子(7/8とか)も複合変拍子(3/4+4/4など)もあり)、緩急多彩な展開をみせる曲調、つかず離れずユニゾンが繰り返されるテクニック抜群の彼ら。旋律は日本的で音色もどことなく東洋の薫りがする。叙情的で繊細。
そんな彼らの最高傑作とされるのが1991年発売のこのアルバム。
前回この前作となる
を紹介したが、実は前作は人の出入りが多い。ドラマーの交替(山本治彦→村石雅行)、ベーシストの交替(松本公良→三枝俊治)が制作中に起こり、後にドラマ・アニメ音楽で活躍することになる佐橋俊彦もその後脱退した。したがって、そんなドタバタの中でも発売にこぎ着けたのは強いメッセージ性を持って光る楽曲、残る名曲が多かったということなのだが、どうしても(リズムセクションのプレイスタイルの違いもあり)統一感に薄い。
それがこのアルバムでは現在に至るまで続くメンツがほぼ固定された。ギターでリーダーの清水義央、キーボードは小口健一と光田健一、ベースの三枝俊治、ドラムスは村石雅行のツインキーボードスタイル(実際は前作SPARTAで加入したドラムスの村石雅行のみ14年後の2003年脱退し、後に野獣王国のドラムスを引き継ぐことになる小森啓資にチェンジする)。
このメンバーの固定化とメジャー3作目というこなれ方、各メンバーのテクニックと音楽にかける情熱、これらが渾然となってものすごく物語性のあるアルバムができあがった。まさにプログレの洗礼を受けた人物が、それを消化し、自分の言葉として発したようなアルバムだ。楽曲は統一された風合いを持っており、濃密で激しく、郷愁を誘うような旋律。リズムとスピード、曲調がころころと変わり息をつかせない。
まずアルバムは「月の位相-1」で幕を開ける。アコースティックギターと矩形波系の音でクラシカルにイントロが来たと思ったら、ハードなロックパターンでリズムイン。でも所々に変拍子が挟まっている。でも村石の超絶リズム感がなんにもなかったように変拍子をこなしていくため、聴く方は「あれ、いつ表と裏が入れ替わったのだろう」と言う感じ。後半にはハードロック!なオルガンソロもあり盛り上がる。いまだにライブでは取り上げられることが多い名曲。
壮大なアレンジのAメロと東洋的なブリッジがくり返される「心の中の古代」では、村石の鼓が破裂するようなはじける音と、難しいリズムのランニングベースを黙々とつづける三枝のリズム隊が素晴らしい。非常にリズム的には難解な曲だ。
「フォース ライク」はキャッチー?というか覚えやすいヘヴィな曲。ハイハット4つ打ちを基本とするミディアムテンポのハードな曲で、転調とシンコペーションリズムの多用が特徴。
そして「アルファマ」...わかりやすいw変拍子。ギターがリードするロック!なプログレ。ドラムスのはじけるリズム。ラストリズムオフして緩やかで幻想的なキーボードソロになり、これで終わりかと思いきや最後にドラムスがほぼソロ状態のようなスゴイ音数でフェードインしながらリズムイン!最後は6連符の嵐の超ユニゾン!
聴いてて鳥肌が立ちました。日本のロックが、「洋物のコピー」ではなくなった少なくとも一つの例の誕生に立ち会えたのですから。心のふるさとに還るような懐かしい旋律が、ここにはあります。
【収録曲】
1. 月の位相-1
2. 時の意味
3. 謎めいた森より
4. イア
5. 心の中の古代
6. 不安な記憶
7. 地中海とアーリア人
8. イアを去った日
9. フォース ライク
10. アルファマ
11. 月の位相-2
KENSO official home page
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購入金額
2,800円
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購入日
1991年頃
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購入場所
退会したユーザーさん
2011/08/02
cybercatさん
2011/08/02
かれらの試聴ファイルはあまりないんですが、このアルバムはさすがにようつべにもあり、こんな感じです↓