今回日本未発売のCorsair製モニタリング&制御システムである「Corsair Link」を先行提供いただきましたので、それを使った簡易水冷CPUクーラー(Corsair CWCH80)の制御を中心にレビューさせていただきます。
■商品内容■
ご提供いただいたのは「Corsair Link」、正確には「Corsair Link Cooling and Lighting Kit(cat.CL-9011106-WW)」というタイプで、その名の通り冷却と電飾をコントロールできる制御システムです。
「Corsair Link Cooling and Lighting Kit」には3つのパーツが含まれていました。
まず、この「Corsair Link」の中心となる「Corsair Link Commander」。
これは3.5インチベイに収められる情報収集/制御中枢ユニットで、USBピンヘッダ経由でM/Bと接続し、後述する冷却コントローラーと電飾コントローラーを制御するユニットです。
アルミ製でCOOLなCommanderのケースは、設置状況の写真ではオープンベイに積み外観から判るようにしていますが、一切のつまみやスイッチはなく、ソフトウエア制御なのでもちろんシャドウベイでかまいません(むしろネジ穴的には今回のように顔を出すように固定する方が困難)。付属品としては取付ねじとデジタルリンクケーブル3本となります。
次に冷却関係のコントロールを行う「Corsair Link Cooling Node」。これは5系統のファンと4系統の温度センサーが接続できるモジュールです。電源はペリフェラル4P(実際に接続があるのは2Pのみ)。付属品としてはデジタルリンクケーブル1本、ファン接続用延長ケーブル5本、温度センサー3本、本体固定用の両面テープです。
最後に電飾コントロールを行う「Corsair Link Lighting Node」。これは2系統のLEDストリップの接続口を持つライティングコントロールモジュールです。電源は同様にペリフェラル4P(実際に接続があるのは同じく2Pのみ)。付属品としてはデジタルリンクケーブル1本、3つの可変光LEDが仕込まれたLEDストリップ3本、LED接続延長ケーブル2本、本体固定用の両面テープです。
今回、私の課題はCorsair製簡易水冷CPUクーラーCWCH80のコントロールです。このクーラーは上位機種のCWCH100の半分の設置面積のラジエターをもつ簡易水冷CPUクーラーながら、2つのファンで挟むようにラジエターを冷やすため、CPUのオーバークロックにも十分対応が可能な高性能クーラーですが、ファンの速度はCPUクーラー本体についたボタンで行います。従って、PCケースに仕込んでしまえば調整が不可能となります。ベンチ専用PCやまな板上の動作ではそれでもかまわないかも知れませんが、通常使用、とくに「普段は静かに静音設定で、ここぞと言うときだけCPUをオーバークロックするので強烈に冷やしたい」などというありがちなシチュエーションでは意外に不便なところがありました。
しかし、CWCH80購入当時から説明書には「Corsair Link」のコネクタの記載があり、それでファン回転数を制御できそうな雰囲気。そのため今回の「Corsair Link」はまさに待望の、商品でした。
■接続■
接続は以下のようになります。なお、本来CORSAIR製品のコントロールに使うもののため適応外の使用法だと思いますが、ケースファンとして利用している「ENERMAX製 APOLLISH VEGAS UCAPV12-BL」もつないでみました。
・M/B USB2.0ヘッダ→Corsair Link Commander(直付けの接続ケーブル)
・Corsair Link Commander⇒CWCH80(デジタルリンクケーブル)
・Corsair Link Commander⇒Corsair Link Cooling Node(デジタルリンクケーブル)
・Corsair Link Commander⇒Corsair Link Lighting Node(デジタルリンクケーブル)
・Corsair Link Cooling Node~UCAPV12-BL(専用コントローラーのM/B接続用3Pコネクタ)
・Corsair Link Cooling Node~3本の付属温度センサー
・Corsair Link Lighting Node~2本の付属LEDストリップ
・3本の付属温度センサーを測定ポイントに固定
(今回CPU至近、ビデオカードクーラー部、HDDとしました)
・LEDストリップを固定(今回前面PCファンのメッシュサイド内側に固定しました)
(これとは別に電源線はつないでいます)
~詳しくは接続図をご覧ください~
■導入■
今回発売前の商品であるためか、説明書のたぐいは一切なく、6カ国語で書かれた「Downloading Corsair Link Dashboard」なる一葉の紙が入っています(といっても“The Software can downloaded from the following location”と書かれていてアドレスが書かれてあるだけなのですが)。Corsairの本国サイトに行って“Corsair Link Cooling and Lighting Kit”の「Download Manuals」と「Download Drivers」を試してみましたが、前者は各キットの内容物確認と先に説明した接続の図解です(これは是非落としておくことをオススメします)。後者が制御ソフト「Corsair Link」です。2012年8月末現在の最新バージョンは「v1.2.7」。これをダウンロードし、実行します。インストールそのものは何ら問題なく進みます。
そしてそれを実行するとPCケースの内部を表した写真と左端に「Sensors and Devices」として、USB経由でM/Bから取得した情報と温度センサやCooling Node経由で取得したファンの回転数、LEDの状態などを示す枡が並びます。
しかし、ここで問題が!
エラーメッセージとして「Please update H80 Firmware to 1.1」と表示され、H80関連の情報が全くとれません。では、とHPを見るも本国版含めて商品紹介ページには1.1どころかFirmwareに関する記載そのものがありません。ここでかなり行き詰まりましたが、探しているうちに本国ページの「The Corsair Support Forums」に回答がありました。ここに「Getting Message to Upgrade H80 to Firmware 1.1」スレッドがあり、この中に「1.1.12」の圧縮ファイルへのリンクがあります。これをダウンロード後、「Corsair Link」の“Tools”⇒“Firmware Update”⇒Device“Channel X:Corsair H80(XはCorsair Link Commanderの接続端子番号)”とたどり、先のファームウエア圧縮ファイルを解凍してできたファイルを“File”で指定し、「Start」します。すると下記写真のごとくH80のファームウエアが1.0.13から1.1.12にリビジョンアップします。
なおこの作業は全ての人に必要ではありません。上記フォーラムの別記事「Corsair Link Firmware Guide!(2012/3/12)」によると、Hydro SeriesのFirmwareは初期ではH80が1.0.13、H100の方は1.0.18でしたが、3月時点でH80とH100ともに1.1.12にリビジョンアップしているようです。私はH80を昨年(2011年)末に購入しましたので初期リビジョンだったらしく必要でしたが、現在販売されているもののほとんどは最新Firmware1.1.12適用済みと思われます。
これを適用した状態で「Corsair Link」を立ち上げるとH80の温度と二つのファンの回転数、H80のポンプの回転数という項目が付け加わります。
■使用■
実際の使い方は非常に簡単です。
左端の「Sensors and Devices」から調整したいデバイスを選択すると右側に調整できる内容が表示されます。またGraphタグでアイテムを選択することで、温度や回転数を表示させることができますデバイスはケース画像の任意の位置にドラッグしていけるので、複数のファンやセンサーがどこの位置のものかは直感的に把握可能なようにできます。
ファンコントロールの場合回転数をキメうちで入力する方法や、いくつかのプリセットから目的に合わせて選ぶ方法があります。
LEDの場合RGBの強さとそれを周期的に変えたり、温度によって変えたりもできますので、LEDの色合いを変化させて見栄えを良くすることも、監視したい個所の温度によって色を変えて、簡易温度警告としてもつかえます。Lighting Nodeの二つのチャンネル別々の周期、色合いで発光を変えられますので、かなり複雑な発光パターンも可能です(写真は2つのストリップを別の色合いで周期的にコントロールしています)。
ファンに関しては今回Corsair製ではなく他社製の速度可変、イルミネーションパターン可変のものを専用コントローラーを介して接続しましたが、専用コントローラーと制御が競合するのか速度が安定しません。キメうちで高い回転数を指定すると、数秒後フラフラと上昇したかと思うと、また定常状態まで落ちてしまうという現象が起きました。このトライをしたときのグラフはフラフラと安定していません(画像参照)。「Corsair Link」でコントロールするのはなにも特殊機能がない単純ファンの方が無難かも知れません。
ただ今回ソフト的なバグとも考えられる事象が起こりました。
ソフトをインストールして初回の立ち上げは今回説明したような情報取得と制御が可能なのですが、
1)一旦ソフトを閉じてしまうと“In order to obtain CPU temperature properly, you must run Corsair Link as Administrator”と表示され、二度と立ち上がらない(対象PCには私一人しかユーザー設定しておらず、権限はもちろん「Administrator」です)。
2)それではと「最小化」をしてタスクトレイに格納しても「最大化」に相当する選択がなく復元できない。
という現象です。従って当方の環境では、毎回都度Corsair Linkを再インストールしてその初回立ち上げのみでしかコントロールができませんでした。
完全に作動している時には大変有用かつ優秀なソフトのため、レビュー〆切直前まで回避策を模索しましたが、残念ながら解決に至っておりません。
■まとめ■
Corsair製モニタリング&制御システムである「Corsair Link」はソフト上からCorsair製対応機器の状態監視、ファンコントロール、イルミネーションコントロールができる大変ユニークな商品でした。それまでその冷却性能に比して「音」という点では今一歩不満の残っていた簡易水冷CPUクーラーCorsair CWCH80を完全にコントロール下における優秀な商品でした。
この商品のメリットは
・Corsair製簡易水冷CPUクーラーCWCH80を完全にコントロールできる
・ファンコンと温度監視、イルミネーション制御が一手にソフト上で行える
・観測位置や温度変化などが解りやすいグラフィカルなインターフェース
というような事でしょう。特に今までケースを開ける必要があったCWCH80のファンコントロールがソフト上でできる、というのは大きなアドバンテージと思われます。CWCH80(100)ユーザーはこの目的で入手したいというヒトは多いのではないでしょうか。
一方(一部は製品版でなかった故のことと思われますが)一部不具合・要改善点も見られました。
・説明書のたぐいが一切なく、どう設置して、どう設定するのかがHP上で確認するまで判らない。
・リビジョンアップが必要なCWCH80のファームウェアに関しては非常に判りづらいところに記載があり、探しづらい。
・Corsair Linkの動作が不安定で、初回起動時しか満足に働かない
と言うことがあげられます。1、2番目に関しては日本語による説明書1枚で済むことですので、国内発売時には改善されることを期待します。3番目に関しては私以外にも不具合を報告している人もいるようですので、原因究明と改善・回避策の確立をお願いします。
最後になりましたが、今回貴重な日本未発売のアイテムを評価させていただく事が出来、coneco.net様ならびに株式会社リンクスインターナショナル様には厚くお礼申し上げます。今回のレビューが商品開発・改良、および発売時の購入者の一助となれば幸いです。ありがとうございました。
■検証環境■
CPU:Intel Core i7-2600K
M/B:ASUS P8Z68-V PRO/GEN3
メモリ:AMD(Patriot) AP38G1608U2K
ビデオカード:MSI R6950 Twin Frozr II OC
HDD:WD Caviar Black 1002FAEX
光学ドライブ:非搭載
CPUクーラー:CORSAIR CWCH80
電源:ENERMAX EPM1000EWT
ケース:Abee AS Enclosure M2 Premium Edition
OS:64bit版Windows 7 Professional (SP-1)
*This article was posted on "coneco.net/coneco.net体験レビュー" on September 4, 2012
使えているときは◎、導入のハードルと安定性がマイナスポイント
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購入金額
0円
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購入日
2012年08月21日
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購入場所
coneco.net体験レビュー
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