先日たまたま特価品を見かけたので購入してきた品です。
SHUREのイヤフォンといえば、カナル型の定番中の定番であり、ケーブルを耳の外周に回す装着法を「シュア掛け」と呼ぶほどの業界のスタンダードといえる存在です。
しかし、ユーザーの方も多くいらっしゃることを承知で書きますが、私自身SHUREのイヤフォンはさほど評価していません。以前BAドライバーを搭載するSHURE SEシリーズの現行モデルであるSE315、SE425、SE535、SE535LTD、SE846を一気に試聴する機会があったのですが、どのモデルも私にはしっくりとこなかったのです。音質だけでいえばSE846はまあ使えるかな、という感触ではあったのですが、価格を考えれば他に良い製品はいくらでもあるだろうという程度の印象でした。
SE215やSE215SPEはその機会には聴かなかったのですが、別の機会には聴いたことがあり、そのときの印象では低域の強調感が極端に感じられたSE215SPEよりは、SE215の方がバランスは良いかなという程度のものでした。ただ、ウレタンタイプのイヤーチップが付いた状態でしたので、音質自体それほど好ましいものだとは思いませんでした。
というわけで、世間で定番中の定番であるSHURE製イヤフォンに対しては、全体的にネガティブな印象を抱いていたということになります。まあ、私自身定番と呼ばれるオーディオ製品全般をあまり高くは評価していないのですが…。
ただ、折角割安に入手できるのであれば、一度じっくりと使った上で評価を下してみようと思い立ち、今回入手したというわけです。
イオンショッピングセンターの家電売り場で買っているので当然ではありますが、正規代理店経由品です。日本語の保証書が箱の背の部分に貼付されています。
やや甘口でレンジは狭め。バランスは悪くない
それでは試聴してみましょう。一応丸3日ほどONKYO DAC-HA300で鳴らし放しにして所謂バーンインを行った上で音質を確認しています。ケーブルは取り敢えず純正品をそのまま使っています。プレイヤーもそのままDAC-HA300を使います。
なお、イヤーチップはシリコン製のSサイズに交換しています。私はよほどハイ上がりなどの理由が無い限りはウレタンフォーム型のイヤーチップはまず使いませんので…。
まず第一印象としては、以前試聴した時よりはあらゆる意味で「普通の音」だな、というものでした。やや低域の特定の部分にピークは感じますが、それ以外の帯域にはあまり強調感を感じず、概ねどの楽曲でもごく普通の音で鳴ってくれるという印象です。
その上で細かく聴き込んでいくと、低域は盛ってある帯域の少し下辺りが殆ど出ていませんし、高域はごく普通のソースを聴いていても頭打ち感がありますので、実質的な帯域は結構狭いといえます。公称スペックでは周波数範囲は22 - 17,000Hzとなっていますが、実質的には低域は40Hz辺りより下が弱く、高域は10kHz辺りから落ち込んでいるのではないかというイメージです。
もっとも、比較的安価なダイナミックドライバーモデルではなかなか上手く鳴ってくれない「Dangerous / David Garrett」などはヴァイオリンの質感が出るところまではいかないものの意外と無難に鳴らしてみせますし、ピアノ系の音色も悪くはありません。決して良いわけではありませんが…。
ただ、どうしても高域方向の表現には難があり、ハイハットの質感はあまり出ませんし、全体的に雑な鳴り方に感じます。その割にヴォーカルのサ行が結構耳に付くのも妙なところです。もう少しエージングが進めば解消するのかも知れませんが。
そしてどの帯域でも解像度が甘めで、どの曲を聴いてもピリッとした感じがあまり出ません。音場は耳の幅分きっちりと構築されるのですが、その空間の密度はさほど濃くはなく、特筆するべき部分は感じません。BAドライバーの製品と比べるとやはり雰囲気がなく、直接音重視という印象です。
例えばアルバム「Unplugged」に収録されている「Layla / Eric Clapton」を聴くと、冒頭のギターの音色も弦からの音は意外とはっきりと表現するものの、胴鳴りや会場の空間はあまり表現してくれないという具合です。
ただ、これはケーブルの性質による部分もあるのでしょう。決して高価なケーブルではないのですが、Acoustic Revive製のREC-130SH-Sに交換してみると甘さは程々に解消され、空間の雰囲気もある程度は出るようになります。それでも水準という音でしかありませんが…。
というわけで、約5千円という購入価格であれば、取り敢えず不満が出ない程度の音ではあるのですが、通常1万円クラスの製品であるということを考えると、そこまで満足感は高くないというのが本音です。遮音性はSHUREらしく素晴らしいのですが、個人的には高すぎる遮音性は安全性の観点からはマイナスでしか無いと思いますので、これも高評価は出来ません。
無難であることは間違いなのですが、今なら他に面白い製品はいくらでもあるというのが個人的結論です。MMCXでリケーブルが可能ですし、ある程度の基準にはなり得る音ですのでイヤフォン沼に踏み出す第一歩としては悪くはないのですが、世間の評価はやはり少し過大なのではないかなと思います。
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購入金額
5,378円
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購入日
2018年10月21日
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購入場所
イオン幕張新都心店
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