私自身、Windows時代になった後も286や486を搭載した本体を稼働状態にしておき、古いゲームを楽しんだりすることもありました。
ただ、一部のマニア層を別にすれば、ゲーム用と仕事用でわざわざPCを別々に用意するという発想はなかなかないものと思います。Windows95プリインストール済みのPC-9800系を買ったけれど、PC-9800対応の古いゲームもやってみたいというユーザーも多かったようです。もっとも、MS-DOSに関する知識無しにPC-9800シリーズ用のゲームを動かすという作業は、なかなか難易度が高かったわけですが…。
Windows95プリインストールのPC-9800(PC-9821)シリーズでは、CanBeシリーズなどごく一部を除き、MS-DOS用ゲームで音を出力する際に必要となるFM音源を内蔵しておらず、音を楽しみたければFM音源ボードを別に用意する必要がありました。特にステレオ和音出力に対応させるためには、NEC純正のFM/PCM音源ボードであるPC-9801-86に互換性を持ったFM音源ボードが必要となりました。
ただ、PC-9801-86はFM音源機能の他にPCM音源機能を持っているわけですが、これはWindows時代の多くのPC-9821シリーズで内蔵しているPCM音源機能との両立が、仕様上ほぼ不可能になっていました。PC-9801-86を内蔵した場合には本体側PCM音源を無効化して、PC-9801-86のPCM音源に対してリソースを割り当てなければいけなかったのです。ちなみにPC-9801-86はPlug&Playなどという洒落た機能に対応したボードではありません。
この場合もちろんMS-DOSで動作しているゲームでは快適な環境となるのですが、Windows上ではPC-9801-86のPCM音源部は極めて性能が悪く、実用に耐えられるものではありませんでした。
そこで待ち望まれたのがPC-9801-86のFM音源と互換性を保ちつつ、PC-9821系内蔵PCM音源と同等以上の性能を両立したPCM音源を1枚で備えたサウンドボードでした。
この要求に応えるべくNEC自身から発売されたPC-9801-118というサウンドボードがあったのですが、これは一見すると要求を完璧に満たしているように思えた製品でした。ところが実際には使用するリソース割り当ての問題などでMS-DOS上の殆どのゲームではこのボードできちんと出力をさせることが出来ず、期待していたユーザーを落胆させました。
そのような状況下でキュービジョンから発売されたのが、このWaveStarでした。一見PC-9801-118と同等に見えるスペックのボードでしたが、こちらはリソースの問題もきちんと考慮されていて、MS-DOS上のゲームでも概ねPC-9801-86との互換性が保たれていながら、PCM音源部もPC-9821内蔵と同等の性能を持っていたのです。
さらに当時の事実上標準規格であったMIDI音源拡張端子(Creative WaveBlaster互換)を内蔵していたり、MPU-401互換の外部MIDIインターフェースも内蔵端子と排他ながら利用することも出来、当時としては理想的な製品に仕上がっていました。
実はこの製品の前身となるWaveMasterというボードも存在していたのですが、これは性能的にPC-9801-86と同等で有りながらPC-9801-86との互換性が不完全で、MIDI音源拡張端子も備えてはいたものの独自規格品で自社製のオプション以外使えないなど、完成度の高い製品ではありませんでした。WaveStarはこの製品の弱点を解消したものとみることも出来ます。
私自身はメインPCのPC-9821Rv20からPC-9800標準拡張バススロット(通称Cバス)を撤去するまで、このボードのお世話になっていました。MIDI音源拡張端子にはRoland製のSC-55mkII互換品であったSCB-55などを載せて楽しんでいた記憶があります。
PC-9800系の環境は、このような出来の良いサードパーティー製品に支えられていた面も大きいことを実感させてくれる製品です。
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購入金額
0円
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購入日
不明
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購入場所
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