正確には、貰ったボーナスは通帳に入れ、半年後に本機が発売されたタイミングで購入した。
今思うと、貯蓄もほとんどなく、入り用が続いていた当時、20万円を超えるPCを購入する勇気があったものだと、つくづく自分に呆れてしまう。
貯蓄がほとんどないのは現在も同様で、本機を使った経験があるから言えるのかもしれないが、今ならこの選択はしないだろう。
誤解しないで欲しいのは、本機に重大な問題があるわけではない。あくまで自分のニーズ・利用シーンを考えるとこの選択はないと言いたいのだ。
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それまで私は、学生時代のバイトの手当と父親の融資で購入したデスクトップPCを使用していた。
いずれレビューさせて頂くがNEC製PC9821V13という機種だ。PC98シリーズは一大勢力を持っていたが、汎用的なハードウェア構成のDOS/V機(AT互換機)へと移ろうとしていた時期だった。
V13は、キーボードが異常に柔らかかったり、ビデオはXGAがでても256色だったり、拡張性が低くそれ用の部品も少ない、と不満が溜まっていた。
いや、3年程ともに生活してきたのだから頑張ってくれてはいた。ただ急激な技術確変の時期にあって、学校や会社にあるマシンと比べると限界を感じてしまっていた。
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そこで本機を購入した。
デスクトップの不満としてサイズの問題があったため、その反動かウルトラモバイルが欲しくなっていた。
当時、東芝のリブレットや富士通のFMV等のPCや、NECのモバイルギア等のPDA等がモバイル機器として存在していた。
ただ、これらは普通のPCとして使用するには力不足だったり制限があったりした。
私の用途は、出先でもWORD文書を編集したり、テストプログラムをコーディング・実行できる環境が欲しかった。
本機はそれができる機種だった。
液晶はWVGA(1024×480)と当時のノートでは広く、ウルトラモバイルでは異例だった。
外部ディスプレイを接続すればSXGAまで表示可能であり、それまで使用していたデスクトップの置き換えも考えていたが、検討の結果あくまで最後までデスクトップ的な使い方にはいたらなかった。
キーボードは一部変則があるものの17mmピッチとフルノートに相当する余裕があった。鍵打感は軽かったが、前述PC98のキーボードを使った後ではある程度の感触があった。
これだけあれば私の用途には十分だった。
さらに当時は珍しかったwebカメラが搭載されていた。
ほとんど付属SONY製アプリケーションでの撮影等が主用途ではあったが、やろうと思えばNetMeeting等でビデオ通話もできたようだ。
当時、そういった文化がまだ芽吹いていない時代だったが、現在であれば当然のように行われていることであり、まさに時代を先取った機能だった。
本機は、本シリーズ三代目にあたる。
本シリーズは4機種登場した後、TransmetaのCrusoeという省電力CPUを搭載したシリーズへと続く。
カメラ搭載といい省電力CPU搭載といい、実に意欲的なシリーズではあったが、残念ながら10機種が開発されて終了した。
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トータル的に見ると、まさに時代を先取った機種と言える。
数年前から本シリーズのコンセプトを受け継いだ機種が発売されているため、今購入するならそちらを選択することになるだろう。
技術が大きく向上していた時代にあって、新しい技術・コンセプトを取り入れた異端児的なPCではあったが、一石を投じたことは事実だろう。
当時の私もきっとこの意欲的な構成に魅せられて購入に踏み切ったのだろう。
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購入金額
240,000円
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購入日
1999年02月頃
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購入場所
しばさん
2012/08/11
たしかこれThinkpadみたいにトラックポイントが中央にありましたよね?
ウルトラモバイルの先駆け的な存在だと感じました。
あの頃はまだISDNが最速で、展示ブースでもISDNの速度体験が主だったような…。
子供心に見てもお世辞にも速いとはいえなかった…ような気がします。
でも閲覧するWebページは大手Yahoo!から中小、草の根まで、結構軽かったような気がします。少なくとも今のWebページをダイヤルアップ接続で見ようとすると…どうなるんでしょうね。
#この頃はまだExciteとかLycos(この響きだけで懐かしいw)なんかが頑張ってた時期でしたね…
蒼-aoi-さん
2012/08/11
505と悩んだのですが、大きさ、トラックポイント、そして当時珍しかった(今では当たり前?)カメラ付きという点で、モバイルでサイバーでトリッキーな感じに惹かれました。
当時は我が家もアナログ契約でしたので、56kで不満も持たず使っていました。
ホームページの容量もはるかに軽量でしたのでそれほど苦には感じなかったんだと思いますが、たぶん現在のような画像たくさんのページではそうはいかないでしょうね。
当時のページでも、2Gの9600では重かったですからね。
あの接続時のピーギャーという音が懐かしいですね。
そういえばC1R内蔵のモデムはジャックタイプではない、蓋を起こすタイプでしたので、デザインへのこだわりを感じました。
あの頃の試行錯誤を含めた熱いデザイン魂みたいなものは、最近薄れた感じがしますね。
CR-Xさん
2012/11/14
当時はこんなの日本にしか作れなかったんですよねー。
今は何処のメーカーでもチップで出来るので差が出ない
=日本の出る幕が無くなって・・・、はあ(ため息)
蒼-aoi-さん
2012/11/14
そうですね。
当時は、極度の差別化のための独自性による弊害はありましたが、今のどこをとっても同じという面白みのなさに比べたら、胸踊るマシンがたくさんあった気がします。
共通化は大事だと思いますが、もっとイノベーション溢れる製品を出して欲しいです。特に国内メーカーには。
国内メーカーは、そういうのが得意だったはずなのに、どこに忘れてきてしまったんですかね...?