レビューメディア「ジグソー」

信じるものは...

VisionTek製Gaming Network Cardです。
BIGFOOT社の「Killer 2100」NPUを採用した製品です。

【製品情報URL】
http://www.visiontek.com/killer/
http://www.bigfootnetworks.com/killer-2100/

【基本仕様】
NPU:400 MHz Bigfoot Networks Processor
Memory:128MB DDR2 266MHz
対応バス:PCIe x1
接続端子:RJ45
接続速度:10/100/1000 Mbps Ethernet, auto-negotiation
消費電力:最大 10W, 平均 3W

機能:
Control Panel Application & Tray Indicator
Advanced Game Detect™ (traffic classification)
Visual Bandwidth Control™
Application Blocker
Online Gaming PC Monitor™
UDP traffic offload & acceleration
Windows Network Stack bypass

対応OS:
Microsoft Windows 7 32 bit
Microsoft Windows 7 64 bit
Microsoft Windows Vista 32 bit
Microsoft Windows Vista 64 bit
Microsoft Windows XP 32 bit


BIGFOOT社のKiller NICは「ゲームに特化したNIC」として、2006年頃に最初の製品が登場しました。
Killer NICは、従来CPUが受け持っていたネットワーク処理(特にオンラインゲームの少量のパケット通信)をハードウェア処理することでフレームレートを改善、さらにWindowsの一般的なネットワーク経路をバイパスする事で、レイテンシを改善するというものです。



ただし本製品が改善を謳う「レイテンシ」とはゲーム上で確認できるPing値そのものではないとの事です。
VisionTekの製品情報によれば
「ゲーム中に表示されるPing値は目安でしかなく、実際のレスポンスは大きく変動したり、不安定になります。特にオンボードLANの場合はそれが顕著になります。」
Killer NICはゲームのレスポンスに影響する「UDP latency」を改善、安定させる製品であるとの事です。

オンラインゲームでのレイテンシは非常に重要で、特にアクション性が強いFPSゲームでは死活問題です。それを改善すると謳っている製品ですから、以前から非常に「気になって」いました。

本製品の兄弟機となる「Killer Xeno Pro」はYorkfieldさんが購入、現在レビュー中でいらっしゃいます。


また、4Gamerにて「Killer Xeno Pro」の記事があります。
http://www.4gamer.net/games/032/G003289/20100721075/

「Killer 2100」は同社の最新製品ではありますが、「Killer Xeno Pro」とのハードウェア上の違いはほとんどなく、USBコネクタ、オーディオ入出力コネクタの省略など、むしろシンプルな構成となっています。
将来対応予定の機能などを省き、ファームウェア、ソフトウェアの改善によって「本来この製品に求められている基本的な機能を実現する事」に専念した製品といった感じでしょうか。

尚、この「Killer 2100」は単品では国内未発売となります。
そのため、個人輸入で購入しました。

※DELLのゲーミングデスクトップ「Alienware」のオプション品として「Killer Xeno Pro」及び「Killer 2100」が選択可能の様です。


【パッケージ】

パッケージに大きく
「オンラインゲームにおいて標準的なNICより10倍速い!」
と基準がよく分からない煽り文句が光ります。

開封しました。

内容は製品本体、ドライバCD、マニュアルとシンプルです。

【製品本体】
「Killer Xeno Pro」と異なり、基板はシールドで保護されています。
また、製品特徴で述べた通り、USB、音声入出力端子が省略されています。

裏側は基板剥き出しでした。



製品自体は一般的なPCIe x1対応カードです。
私はRampage III Extremeの PCIe x4スロットに、問題なく挿しました。

稼働中は赤くLEDが光ります。これは管理ソフトウェアでON/OFF切替可能です。

ドライバ未インストール状態では、デバイスマネージャ上で「PowerPC Processor」として認識されています。
カード自体が「PowerPC + 128MB DDR2 + ネットワーク物理層」を持ったひとつのPCの様な構成ですね。NICとしての機能はソフトウェア的に実現しているようですから、機能の変更、追加は今後も期待できそうです。
私はBigfoot社から最新(Ver 6.0)のドライバをダウンロード、インストールしました。

ドライバインストール直後の初回起動時に、速度診断を促すダイアログが表示されます。

速度診断直後、有無を言わさず強引にファームウェアのアップデートが始まりました。
せめて確認のダイアログくらい出してくれても良いのですが。(更新前後のファームウェアのバーションすら確認できません。)


無事、準備が完了したようです。

管理ソフトウェア「Bigfoot Networks Killer Network Manager」では、CPU、ネットワークなどの各種モニタリング、ファイアウォールの設定やアプリケーション毎のネットワーク優先度の設定などが可能です。


早速、いくつかのゲームサーバーに接続してみました。
ところが、オンボードLAN使用時と比べて、全く差を感じる事が出来ませんでした。

導入前後でゲーム画面で確認できるPing値は全く変わりません。
しばらくオンラインゲームをプレイしてみましたが、数値上も体感上も全く違いがわかりません。

4Gamerの「Killer Xeno Pro」のレビューでは
「LANカードによってping値が大きく変わるなどということはまずもってあり得ない」と強く否定しています。

ではLEADTEKの「WinFast Killer Xeno Pro」の製品ページに掲載されている
このグラフが意味するのは一体何なのでしょうか?


あまりにも導入前後の差異を確認できないので、Bigfoot社のウェブサイトからダウンロード出来るモニタリングソフト「Dashboard」でKiller 2100とオンボードLANのネットワーク状態を比較してみました。

平均値になるため参考程度にしかなりませんが、違いは全く確認できませんでした。
(むしろ誤差の範囲ではありますが、Killer NICの結果の方が低いようです。)

正直、「かなり疑念を抱いています」が、今後もう少しだけ検証してみようと思います。


「TCPNoDelay」と「TcpAckFrequency」

管理ソフトウェアの「ネットワーク」に気になる設定項目がありました。

微妙な日本語訳になっていますが、この「TCP 遅れ無し」、「TCP ACK 周波数」はWindowsでのTCP/IPに関わる設定「TCPNoDelay」、「TcpAckFrequency」で間違いないようです。
設定後にWindowsの該当レジストリの値が変わっている事を確認いたしました。

【TCPNoDelay】
Windows NT系(デスクトップOSでは2000/XP/Vista/7など)では「TCP nagle アルゴリズム」と呼ばれるものが実装されているそうです。
これは、遅延の大きな接続環境を想定して、標準でTCP/IPの送信の際に200msの遅延時間をあえて用意し、一定量のパケットが溜まってからまとめて送信するような仕組みになっているようです。
「TCPNoDelay」を設定する事で、このnaglingを無効化し、遅延時間なしで送信する挙動となります。

【参考URL】
http://support.microsoft.com/kb/241777/ja

【TcpAckFrequency】
「TcpAckFrequency」 は、未解決のTCP受信確認(ACK)がいくつになったら、遅延ACKタイマを無視して応答するかを決定する項目との事です。
WindowsのDefault値は"2"になっており、こちらも標準では200msの遅延時間を待ってから応答するような設定となっているようです。
「TcpAckFrequency」を"1"に設定する事で、遅延時間を減らし、より頻繁に応答を返すようになります。

【参考URL】
http://support.microsoft.com/kb/328890/ja

私はTCP/IPについては全くの素人ですので、上記の説明につきましては間違いがあるかも知れません。
もし、専門的な知識をお持ちの方、いらっしゃいましたらご指摘、ご教示下さい。

この「TCPNoDelay」、「TcpAckFrequency」については軽く調べた範囲でも一部のオンラインゲームをプレイしている方々には有名な話らしく、環境によっては100~200のPing改善、目に見えるレスポンスの向上があるようです。

ただし、ネットワーク送受信の頻度が増える事で、使用PC、ルータなどの機器への負荷の増大、相手サーバーへの負荷が高くなるため、最悪機器の故障などの弊害も起こる可能性があるようです。
この設定変更によって、いかなる損害が発生しても、あくまで自己責任でお願いいたします。

気になるのは、この「TCPNoDelay」、「TcpAckFrequency」はWindowsの設定の問題であって、Killer NIC固有の機能とは何の依存関係もない事です。

つまり、どのようなNIC(及びオンボードLAN)を使用している場合でも、上記の設定を変更する事で、環境によってはKiller NICが謳うレイテンシ改善を達成できてしまう可能性があります。

仮に、先に挙げたTF2のPing改善結果が、これらの設定を含めてのベストケースの結果であったとしたならば、極論すればKiller NICのハードウェア自体に存在理由はないとさえ言えると思います。

残念ながら、私の環境では上記の設定を変更しても、目に見えるPing、レスポンスの改善はありませんでした。
また、「TcpAckFrequency」を"1"に設定した状態で、Killer管理ソフトの帯域テストを実行すると、測定が完了しない症状が発生しました。


【+評価】
・噂ほど、ソフトウェア、ドライバの出来は悪くない(64bit環境でも不具合は発生せず)
・簡易ながらハードウェアレベルでファイアウォール機能を持っているのは◎

【-評価】
・誇大広告。効果が限定的ならば正直にそう謳うべき
・販売価格が高い。機能・性能に全く見合っていない
・オンラインゲームの劇的なレスポンス改善は望めない
・オンボードLANから替えても、「Ping」は全く変わらない
・管理ソフトの日本語が不完全(これならオリジナルの英語の方が内容を把握できる)


かなり「疑惑」の製品。
現時点では「Placebo効果」程度しか期待できない。
とても「おすすめ」出来る製品とは言えません。

また、Yorkfieldさん、4Gamerの記事を見る限り、「Killer Xeno Pro」との差異は
ハードウェア上の端子の有無程度しか確認できませんでした。
まるで、次々と販売される効果のはっきりしないダイエット製品のような商法を思い浮かべてしまいます。

誤差の範囲ですら、数値上でオンボードLANと変わらないとは、流石にこれは宣伝の仕方に問題があるでしょう。
仮にPing値に変化がない、数値に表れない範囲でUDPのレイテンシを改善する程度であり、その効果が「数値」でわかり難い結果となるのならば、真摯にそのような製品である事を謳うべきでしょう。

間違っても
「オンラインゲームにおいて標準的なNICに比べて10倍速くなる!」
などと誤解を招くような誇大広告をするべきではありません。

加えて製品情報で挙げられているPing値の改善結果は、(環境によっては)管理ソフトウェアの設定次第で実現可能と思われます。
しかしながら、これはWindowsのレジストリ操作でも可能な設定であり、他のNICでも結果は変わりません。
仮に、「製品情報で挙げられているレイテンシ改善の結果」がこのWindowsのTCP/IPの設定変更によって得られたものであるのならば、それを「製品の売り」として声高に宣伝するのはいかがなものかと思います。

現在のところ、相性問題や不具合は発生しておらず、少なくともオンボードLANに比べて、(ゲームに限っては)明らかな性能の低下は無いようです。
NICとしての最低限の機能・性能は持っている。それが唯一の救いでしょうか。
  • 購入金額

    11,000円

  • 購入日

    2010年07月頃

  • 購入場所

34人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (12)

  • つくもさん

    2010/08/01

    面白いものを購入しましたね^^

    Killerシリーズの高速ネットワークアダプタってずいぶんまえに4Gamersで掲載されていて気になっていたんですが、効果のほどは微妙な感じみたいですね^^;

    昔は、僕もFF11ユーザーだったので貴重なレビュー、非常に参考になりました!
  • s3zm4rさん

    2010/08/01

    つくもさん、『COOL』&コメントありがとうございます!

    効果については、ほんとに微妙な製品です。
    むしろ、「何故この製品が販売出来るのかが謎」なくらい効果を確認出来ません。

    体感はもちろん、数値上ですら性能向上を確認できないとなると...
  • 4453さん

    2010/08/01

    ハードウェアレベルでファイアウォール機能を持ってるのは、
    ちょっとおもしろそうですね。

    しかし、パッケージの10倍速くなる…は言い過ぎですよねぇw

    マニアックな製品だけに買い手を集める為には仕方がないのかも?
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