所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。不朽の名作、と言う言葉があります。しかしそのときの最新のテクノロジーや流行（シンセサイザー、スクラッチ、サンプリング、電子ドラム．．．）を入れて創られるポップス系の音楽で、数10年経っても聴いて新たな発見があるような盤は多くはありません。でも日本にもわずかながらそんな盤があります。そんな盤をご紹介します。

ファンキィでポップ、ロックスピリットを持ちながら、コミカルでオリエンタル、そしてちょっとプログレってどんな音楽だい．．。そんな実験的な音を創り出す集団が1970年代初頭にいた。サディスティック・ミカ・バンド、今は亡き加藤和彦が率いたテクニック集団。メンツは加藤和彦・加藤（当時）ミカ・高橋幸宏・小原礼・今井裕・高中正義（メンバーは本アルバムレコーディング時）。奥田民生との活動をしている小原礼（尾崎亜美の夫）や、プロデューサーの今井裕は若干ツウ好みで知る人ぞ知るだが、YMOの高橋幸宏とスーパーギタリストの高中正義は多くの人が知っているだろう。．．．そしてトノバンこと加藤和彦．．。「帰って来たヨッパライ」のザ・フォーク・クルセダーズにいたひと。とても時代の先を行く感覚で、「同じことは二度とやらない」ポリシーから、このバンドでも各アルバムのイメージがかなり異なる。

そのサディスティック・ミカ・バンドの最大のヒット作が、2ndアルバムの本作"黒船"。外からの改革?ということで、Pink FloydのプロデューサーChris Thomasを迎えて創られた作品は、メンバーの才能がおもちゃ箱のように詰め込まれた、快作であり、怪作でもある作品。

これはLPのスリーブそのままですね←どうやら持っているらしい．．

このアルバムに関してもいろいろな要素が詰め込まれている。

ロックンロールとブギで軽快に始まる「タイムマシンにおねがい」。♪アンモナイトはお昼ね、ティラノザウルスお散歩アハハン♪歌詞もナンセンス、ミカのヘタウマなボーカルで繰り返される♪タイムマシンにおねがい♪このバックで高橋幸宏はYMOの時には見せないアツいドラムを聴かせる。

そして組曲「黒船」。嘉永六年六月二日、三日、四日と続く曲だが、二日と三日前半は完全に同一だがペリー浦賀来港日の三日は左右に飛ばした驚きの叫びで曲を構成するサウンドコラージュ。サンプラーも何もない時代にこれをやってるのがスゴイ。そして高中ファンにはおなじみの「黒船」である、六月四日になだれ込む。壮大なインストバラードで高中のコンサートラストの定番だった。

忘れてならないのが、日本の誇るファンキーポップ「塀までひとっとび」！！♪大好き好きな／チャチャお茶でも／湯呑みひとつふたつ／好き好き好きな♪ナンセンスな歌詞と、ファンキィな高中のギター、パーカッシヴにキレる今井のクラビネット、小原のドライヴするベース．．．4拍目の裏で入り続ける合いの手のコーラス．．この曲が1970年代前半に日本でモノされたのは大変な奇跡と思う。

この作品の次（3rdアルバム"HOT!MENU"）は、歌詞のコミカルさはまだ残っていたが（むしろ強まった？）、楽曲自体は方向性がよく言えばまとまって、「カオスのエネルギーゲージ」は少し戻ってしまった。

つっても全アルバム、BOXで持ってたりしたりして．．．．(^^ゞ

なんと言ってもこれはやはり奇跡の名盤。

この名盤を遺した加藤が逝ってから既に2年近く．．．彼は空の向こうでも歌っているのだろうか．．？ちょっとコミカルで切ない歌を。

【収録曲】
1. 墨絵の国へ
2. 何かが海をやってくる
3. タイムマシンにおねがい
4. 黒船(嘉永六年六月二日)
5. 黒船(嘉永六年六月三日)
6. 黒船(嘉永六年六月四日)
7. よろしく どうぞ
8. どんたく
9. 四季頌歌
10. 塀までひとっとび
11. 颱風歌
12. さようなら

「塀までひとっとび」