フィンランド軍兵士の中でも有名で、この本の著者でもあるユーティライネン氏は、冬戦争と継続戦争に参加し、94+1/6機(端数は共同撃墜)を撃墜したとされています。この値はドイツ空軍のエースパイロットを除外すると世界最高位になります。冬戦争時はオランダのフォッカーDに搭乗し、なんと初空戦で初撃墜を果たしています。
継続戦争時は、アメリカ製のブリュースター バッファローに乗り、この機体で34機を撃墜しています。1943年からはドイツからもたらされたBf109Gに乗り換えてさらに戦果を伸ばし、Bf109での戦果は58機とされています。
ロシアは、アメリカやイギリスから多くの兵器を譲渡されており、その中には高速のP-38も含まれていたとされます。対するフィンランドは、モラン・ソルニエやフィアット、果ては鹵獲機まで、まさに飛行機博物館と称されるほど雑多な構成でした。その中でも多くの戦果を挙げたのがアメリカから購入したブリュースター バッファローだったのです。
この飛行機は一応、アメリカ海軍初の単発単葉艦上戦闘機なのですが、単にグラマン F4F ワイルドキャットが配備されるまでのつなぎで、戦力としてはまるで期待されていませんでした。アメリカたる国がいつまでも複葉機を配備しているのはダサい、という訳ですね。太平洋戦争ではその不恰好なスタイルから「ビア樽」と称され、日本の隼や零戦にボコボコにされています。
そんな、いわば駄機が44機ほどフィンランドへ売却されて、21機の損失に対して456機を撃墜したのです。キル・レシオは21:1です。これは、パイロットの技量のみによるもので、事実、P-38を撃墜した事もあるようです。その為、イスラエル軍のF-15によるキル・レシオ100:0とは質が違うのです。
ちなみに、公式記録での1機の戦闘機による総撃墜数も、このバッファローが世界一なのです。その記録は41機なので、大体飛行隊一個分くらいを1機で落とした事になります。
ところで、Bf109戦闘機は確かにバッファローとは比較にならないほど高性能なのですが、バッファローに乗り慣れたパイロットの中には、Bf109を嫌う者もいたようです。この辺りは日本での、零戦に乗り慣れたパイロットが雷電を嫌ったのと似通っていて、面白いものがあります。フィンランドは、このバッファローのコピーであるフムを生産しようとするほど、気に入っていたようです。
先日載せたIL-2にも、フィンランド軍のキャンペーンがあり、実際にバッファローに乗ってロシア軍と戦う事が可能になっています。ゲーム中でのバッファローは、旋回性能・速度ともにそこそこで、新米が乗っている新鋭機を落としたというのも、あながちウソではないと思います。
本の内容は、実はあまり覚えていなかったりしますが、さすがは実戦経験者という細かな描写がされていたと思います。また読み返したいと思います。
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購入金額
3,675円
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購入日
2007年08月31日
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購入場所
Amazon
sukiyakiさん
2011/04/23
名湯さん
2011/04/24
Vossさん
2011/05/03
「ついてないカタヤイネン」が真っ先に連想される私は、たぶん駄目人間(笑)
他にスオミといえば、Laggエンジン搭載型の牛とか・・・・
他じゃ見られないというか、鹵獲機含めて魔改造だらけというイメージ。
あれだけ雑多な種類の航空機を片っ端からメンテ出来てたとか、この国の整備士って、当時世界最高ランクだったんじゃないかと思う。
名湯さん
2011/05/05
まぁ、知っている事は損ではないのでは^^
>この国の整備士って、当時世界最高ランクだったんじゃないかと思う。
確かに、液冷機もろくにメンテできなかった日本とは違いますよね。整備性が悪いと言われたDBエンジンも、ちゃんとした講習を受ければ、さして難しくないそうですし。
魔改造というと、ドイツ軍の現地改造車両もすごいものがありますよね。