マザーグースになぞらえたいわゆる「見立て」殺人の古典です。
「たあれが殺した クック・ロビン」
という童謡になぞらえて、名前がコック・ロビンである青年が矢で突き殺されるという事件が発端。
その後、次々と見立て殺人が行われる。
素人探偵ファイロ・ヴァンスがこの難事件にとりかかる!
この作品の素晴らしい点は、見立て殺人を行った理由が秀逸である事。
そして、その最終結末。
僕はその落ちの部分を読んだときに、背筋が凍る思いをしました。
この作品が1929年、つまり約80年前に書かれたという事実を知っていたからです。
1990年代以降に書かれた作品ならば、この結末は割りと珍しくないなと感じますが、当時としてはかなり画期的だったのではないでしょうか。
僕は、とある台詞を読んだとき、「ああ、もうこのレベルの文章を書く人が居たのか」という言葉が思わず口からこぼれ出てしまうほどでした。
その時僕は、軽い恐怖と絶望感、そして感動を同時に体験しました。
久々に推理小説でしか味わえない不思議な感覚を得られましたね。
名作です。
多分、現代推理小説を読みなれている人には若干苦痛な内容かもしれません。
冗長的ですし、グリーン家殺人事件の影響を引きずっているせいか、余計なペダントリーが散りばめられています。
それを読む事に耐えられるなら、楽しいかもしれません。
もっとも、最後の落ちについては賛否両論ですし、人によっては「それがどうしたの?」みたいな感じになってしまうかもしれません。
という事で、「本格」の原点を読みたいという方は是非。
蛇足
ちなみに、サマー・アポカリプスは、この作品のオマージュ作品だと僕は勝手に思っています。
最も、これだけではありませんけどね。
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購入金額
693円
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購入日
2009年05月25日
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購入場所
どこかの本屋さん
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