闇へ読者を引きずりこんだ作者が、ようやく光を見せるてくれるこの巻は、館シリーズを読んできた読者に対する作者の感謝の表れだと読み終わってから気がつきました。
きっとそのまま謎を明かさないという手もあったかもしれませんが、ミステリとして成り立たせるために、綾辻氏は胸の中に秘めた謎をぶちまけます。
「視点」の正体。
「玄児」の正体。
「18年前の殺人事件」の真実。
「今起きている」事件の真実。
それらが次から次へと明かされ、読者は七転八倒させられます。
脳内が混乱させられる人が多いかもしれません。
そして、最後に明かされる「私」の正体。
といっても、それは「ああ、良かった」と思える「私」でした。
綾辻氏がこの作品を最後に読んでくださいと訴えるのも分かります。
これは、館シリーズ全部を読んでいないと楽しめません。
この本だけだと面白さは半減どころか2割も楽しめないと思います。
それだけ、彼の執念の積み重ねである事の証拠でもありますが。
katsuwoさんの感想では、「黒死館」へ通じるものがあるとありましたが自分は「虚無」へのオマージュが強かったかなぁと思いました。
転覆事件で気づくべきでした、虚無読者としては。
まだまだ読み込みが足りないなぁ(苦笑)
暗黒館にしかけられたメイントリックに果たしてどれだけの人が気づくのでしょうか?
そして、「明かされなかった謎」についてどれだけの人が気づくのでしょうか?
館シリーズは、「暗黒館が最初であり最後である」と言うのが誰にとっても文句の無い言葉かと思います。
綾辻さんはもしかしたら映像化する事を想定してこの作品を描かれたのかもしれません。
十角館は映像化不可ですが、これは上手くやれば映像化できるかもしれないです。
なので、映画化されたら是非見に行きたいなぁ(^^)
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購入金額
700円
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購入日
2008年頃
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購入場所
どこかの本屋さん
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