レビューメディア「ジグソー」

幽霊の叫びに震えた。

ガストン・ルルーの「小説」では黄色い部屋の謎が一番有名でしょうか。
もっとも、金田一+劇団四季のお陰でこの作品の名前は大分知れ渡っているので、原作者は知らなくてもタイトルは知っている~って人は多いかもしれません。

早速、この作品を読んだ感想ですが、まずミステリとは呼びづらい代物です。
ミステリよりは文学と呼んだほうが良いでしょう。

オペラ座には「幽霊」がいる――。

物語はその噂話から始まります。
幽霊はオペラ座のすべてを監視し、管理しています。
噂が噂を呼び、人のでは決して成し得ない奇想天外な事件が立て続けに起き「幽霊」が段々と実態を帯びてきます。
そんな幽霊が目をつけたのが若手女優のクリスティーヌ。
彼女は幽霊が持つ「天使の声」により、自らの実力をめきめきと伸ばし頭角を現しはじめます。
その、クリスティーヌの恋人であるラウル子爵は幽霊に嫉妬し、幽霊の正体を突き止めようと孤軍奮闘します。
幽霊はクリスティーヌを我が妻としようとし、オペラ座のど真ん中から彼女をさらい、物語はクライマックスへと加速していきます。
ラウル子爵は幽霊「エリック」からクリスティーヌを救うことが出来るのか――。

まさに文学らしいねちっこい展開で、スピード感を求める人に、前半部はかなり退屈だと思います。
後半部もドキドキは無く、分かりやすい面白さを求める人には物足りない作品かもしれません。
しかし、文学が持つ心の苦しみ、葛藤を描いた本作品はかなり傑作だと思います。
特に、エリックの心境。
自分は、エリックの正体が分かったとき、彼の台詞一つ一つがぐさぐさと胸に突き刺さりました。
この男はどうしてここまで自らを愛し、自らを憎んでしまったのだろうかと何度も考えました。
この愛はあまりにも残酷で、あまりにも辛く、あまりにも美しい。

ミュージカルが何度も上演されているのも納得出来る内容です。

正直、Wikipediaを読まなくて大正解でした。
先にWikipediaを読んでいたらつまらなさ大爆発の作品に成り下がっていた事でしょう。
という事で、エリックの正体を知らない人は前知識ゼロで読むことをお勧めします。
文学らしい文学を楽しみたい時に最適な一冊だと思います。
  • 購入金額

    777円

  • 購入日

    不明

  • 購入場所

8人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • そいにーさん

    2008/12/26

    ちなみにリアルにオペラ座の地下もあんな(?)感じになってます。
    たしか牛とか飼ってたはずwwwwあと防火用の地下水層とか。
    パリの市街全体に地下の下水網があってオペラ座もそこに繋がってるとか。
    (たしか地上の道路と同じ形で整備されていたという記憶が・・・。
    曖昧な知識ですみませんwww

    ミュージカルも是非見てください^^
    我が愛は終わりぬ、夜の調べとともに・・・。最高ですw
  • Arc Cosineさん

    2008/12/26

    おお、リアルオペラ座の地下もそうなんですか。
    うぎゃー、そりゃあ、見たい!
    この小説が発表された時は相当リアリティあったんだろうなぁ。

    >ミュージカルも是非見てください^^
    >我が愛は終わりぬ、夜の調べとともに・・・。最高ですw

    最高ですw
    ミュージカルも是非見に行きたいと思います><

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