というわけで、今回のこの「イギリスのヴィオラ作品集」もそれを期待して試聴に望みました。しかし、ハッキリ申しますとそれには肩透かしを喰らってしまいました。いや、全くそうではないという訳では無いのですが、今回のプログラムからより強く感じられるのは印象派の響きの方だったのです。
まずは今回のメインであろうブリスのヴィオラ・ソナタ。これがもう全くのドビュッシー風で、しかも安易に人を寄せ付けない感じの作風のために私が考える「英国情緒」からはかなり離れた作品でした。
全曲で約30分弱の4楽章構成で、第1楽章は冒頭からドビュッシーそのもの、たゆとうようなメロディーで始まり、不協和音も厭わないという大胆さも備えますが堅実なソナタ形式の楽章です。続く第2楽章は緩叙楽章ながら甘さの少ないモノローグ的な音楽で、少々ハードボイルドなタッチです。第3楽章はエネルギッシュでスケルツォ的なフリアント、そしてフィナーレはいきなりコーダ(曲の終結部)風な出だしから始まり、その後第1楽章の第1主題が回顧されるように奏されて全曲を終えます。
それに対してディーリアス、こちらはもう数々の管弦楽曲で親しまれているとおりの作風で、やはり印象派風の響きながらも人懐っこい、親しみやすさを持った曲です。自然を愛した彼らしい、ノスタルジックでどこか懐かしさを感じさせる実に魅力的な作品です。本来はヴァイオリンが原曲らしいのですが、編曲もうまくいっているようで不自然な感じを抱くことなく楽しめました。ヴィオラ特有の落ち着いた響きも曲想に合っているのでしょう。
最後にブリッジの作品、こちらも所々で印象派の影響は感じさせますが、より普通な感覚で聴けるキュートな小品達です。ですがそれゆえに原曲(おそらくヴァイオリン)の持つ華麗さを求めたくなる所がいくつかありました。ヴィオラでは少々渋すぎるのです。
演奏については両者とも堅実で、良くも悪くも無難なところです。ディーリアスはまあまあ良いのですが、ブリスにはもっと豪胆さを、ブリッジには逆に愉悦感を求めたくなります。アンサンブルとしては良いのですが・・・。
相変わらず辛口になってしまいましたが、中々聴く機会に恵まれないであろうこれらの作品をまとめて聴けるのはありがたいです。企画としては好ましい1枚だと思います。
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今回のレビューは、かなり悩まされます・・・というのもドビュッシー以外対して知識がないという落ちがある為ですが・・・ さて、2枚目...
operaさん
2011/03/04
私はとてもクラシックの詳細が分からないので(笑)
何とか感じるままにレビューを頑張ります。。(^^ゞ
lapisさん
2011/03/04
でも、お眼鏡にかないませんでしたかw
げるねおさん
2011/03/04
ありがとうございます。考察というか、思ったことをそのままオブラートに包まず書いちゃいました。
感じたことを感じたまま表現することは非常に大切なことだと思います。その意気込みでレビューも頑張ってください ! !
>lapisさん
いやいやいや、とても「通」だなんて名のれるような境地には全くいたっておりません(滝汗
でも、このCDで英国情緒を語るのはチトきびしいかなぁ、と。作品自体が悪いわけではないのですが、プログラム構成と演奏家に問題ありだと思います。
いっそのこと、「英国の印象派」とでも銘打てば良かったかも(苦笑