曲の内容は残念ながら歌詞対訳が無いため詳しくは分かりませんが、どうやら全篇愛の歌のようです。調性は短調のものが多めですが絶望感を抱かせるものは無く、愛の切なさや歓びを歌ったものが多いようです。曲調も真摯なものからおどけた感じのものまで様々で、編成も簡素ですがバリトン・ソロを中心にフィドル(バロック・ヴァイオリン)やリュート、ギターやリコーダー等が組み合わされ、中にはアカペラであったり歌の入らないインストゥルメンタルだったりして中々に飽きさせません。
その素朴ながらも生命力に満ちた歌たちを聴いているうちに、私はあの「カルミナ・ブラーナ」を思い起こしました。もっともそれはオルフのかの有名な世俗カンタータの方で、中世の原曲の方は未聴なのですが。まあそれはともかく、よく考えてみるとこの「ロハム」も「カルミナ」もドイツが発祥なので当然といえば当然なのかも知れません。
演奏ですが、フンメルのテノーラルなバリトンは声も甘やかで美しく、ビブラートも控えめで中々好印象です。ちょっと高音に独特のやにっこい節回しが目立ちますが、この曲集は宗教曲ではなく世俗的なものなのでこれもありだとは思います。しかし真摯な曲は良いのですが、おどけた曲調になると表現の限界を感じさせる所もあります。まあ、F=ディースカウのようなレヴェルを望んではいけないのでしょうが。
アンサンブル・ドルチェ・メロスのメンバーはこの作品の古雅な雰囲気をしっかり出しております。若干縦の線が乱れることもありますが、許容範囲内でしょう。中でも身びいきでは決してありませんが、矢板由希子嬢のリコーダーは闊達で音も美しく大健闘です。
録音はNAXOSらしく良好で、変にいじった所が無く、バリトンが中央で各楽器がその周辺に配置されているのが手に取るように分かります。定位がしっかりしており、おそらくワンポイントマイクに近い収録方法なのではないでしょうか。
ちょっと辛口な書き方もしてしまいましたが、企画としては画期的ですし興味を持たれた方が初めて聴くには充分な内容だと思います。美しくも切なく、そして楽しい1枚です。
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lapisさん
2011/02/27
この時代の作品というのはなんとなく、独特の雰囲気があるイメージです。
土臭さというか垢抜けなさはありますが、それが好い感じですねw
そういえばカルミナもドイツでしたね。
他の国でも世俗曲の本は残っていたかと思いますが、ドイツが目立っている気がするのはオルフのせい?w
当時の教会は、色々あったのかと思いますが、「神聖」な場所にどうしようもなく俗っぽい歌が集められた写本が残っているというのが面白いですよね。
げるねおさん
2011/02/27
聴く前はもっと禁欲的な感じのものかと思っていたのですが、想像よりもずっとメロディアスで伸びやかな曲調が楽しめました。おっしゃるとおり土臭さが親しみやすさにつながっているようです。
>「神聖」な場所にどうしようもなく俗っぽい歌が集められた
やっぱり神に仕える者も所詮は人間、今NHK-BSで放送されている「大聖堂」というドラマをちょこっとみたのですが、神父も俗物だったんかなぁと思わされる内容でしたw
ナンチャンさん
2011/02/28
げるねおさん
2011/02/28