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2.山田耕筰: 長唄交響曲「鶴亀」/交響曲「明治頌歌」/舞踊交響曲「マグダラのマリア」(東京都交響楽団/湯浅卓雄)

 
 2枚目に紹介しますのは、あの山田耕筰作曲の3曲です。(下記参照)

山田耕筰と言えば特に有名な局に「赤とんぼ」「この道」「からたちの花」といった国民的愛唱歌があります。

 しかし彼は仏教の声明の要素を取り入れたカンタータを作ったり太平洋戦争中は戦意高揚のために国策映画の主題歌「米英撃滅の歌」や放送用歌謡曲「サイパン殉国の歌」を作ったり交響詩「神風」など間断なく世に送り出している。そのせいで戦後「音楽戦犯」呼ばわりされました。

 その後脳溢血で倒れ左半身不随となり、長く不自由な生活を強いられる事になりましたが、それでも晩年まで動く右半身を使いタクトを振りました。
 晩年の作には天理教のためのカンタータ「おやさま」や美空ひばりのために新作歌曲も書きました。
映画にも出て「ここに泉あり」、「夕やけ小やけの赤とんぼ」では本人役も演じています。
 しかし耕筰の一番の音楽的執念は歌劇、オペラにあり、「黒船」に続く「香紀」はボーカルスコアまでしかできず、死後に弟子である團伊玖磨によって引き継がれました。

 CD収録の1曲目:長唄交響曲「鶴亀」
・・・この曲はオーケストラの低音から始まり20秒後に三味線が入りガラッと雰囲気が変わります。
 時代劇で江戸時代のお殿様がお女中を連れ、お花見の場面を連想して頂くとよい。
もしくはニュース番組で「○○おどり」が始まった等といった時の場面の後ろに流れる音。

 この曲の構成は長唄部分が既にあった十代目杵屋六左衛門作曲の「鶴亀」そのものに、後で耕筰が対位法的に協奏するハープとの2管編成のオーケストラを付加したものです。

 長唄はこちらで寄っていかないと近頃ではめったに聴かなくなりました。昔はNHK-FMでよく邦楽の時間があり流れていたような・・・団塊の世代には懐かしいものがあります。

 2曲目:交響曲「明治頌歌」
・・・交響曲ということで西洋音楽のようにも思えますが、雅楽の律音階を使って第一主題とし、日本の象徴としている。そして金管のファンファーレに始まり金管が第二主題を奏でる・・・等々物語が展開してゆく。

 3曲目:舞踊交響曲「マグダラのマリア」
・・・マグダラのマリアについてはキリスト教の諸派で少し扱いが違うようなのでここでは取り上げませんが、キリストの子を宿し、その子がユダという名前らしい。検索すれば沢山ヒットするので興味をもたれれば調べてください。
 この曲はカーネギーホールで演奏の機会を得た耕筰が持参していたマグダラのマリアのスケッチを活用し、2幕だけをニューヨークで管弦楽編成して作ったものです。
 ピアノスケッチは失われ、スコアもない現在では詳細な展開が不明で、パート譜から起こされたスコアで現在演奏されています。

 以上ですが、長唄が新鮮に聞こえました。

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