○はじめに
今回、HDL-A2.0に応募したのは現在使用中のNASの転送速度に不満があったからです。
NASといってもPT2やPX-W3PEで録画したTSファイルを放り込んで、リビングや自室のテレビで視聴する際のTS置き場となっていました。ただ、書き込み速度が遅く1時間番組を転送するだけでも結構な時間がかかっていました。
また、スマートフォン用のDLNAサーバーはWindows 7標準のものを使用しているために、電力の無駄づかいでもあります。
そのため、そろそろ他のNASを購入しようかなーと思っていたところHDL-A2.0の応募があり、ダメもとで応募したところ有難いことにレビュアーに選んで頂き、レビューするに至りました。
○開封
届いてまずビックリしたのは、メーカー直送だったこと。発送も最近流行りのステルス発送ではなく、商品到着前に当選連絡が届いたことを考えると、メーカー直送だったことも納得できますね。
段ボールを開けてみるとI・O DATAからのメッセージがあり、商品も上下発泡スチロールの分厚い緩衝材で保護されており、厳重な梱包でした。
商品の外箱のバーコード部分には非売品シールが貼られており、少しだけ優越感が味わえますw
外箱を開けると購入に対するお礼のメッセージが記されており、なかなかにくい演出がなされています。
本体は静電気防止袋に入れられています。バルクのHDDを買った際に入っているツルツルの袋ですが、こういう細かい心づかいもありがたいですね。
内容品一式です。LANケーブルも同梱されているので、ルーターやハブがあれば別途購入するものはありません。
電源自体はACアダプターですが、コンセント部分は普通のプラグなので干渉が無いのもいいですね。
○本体外観
本体の正面とトップは光沢仕様です。高級感が出る反面、指紋やほこりが目立つので個人的にはマイナス点です。
左側面の下部には、LAN DISKのロゴと吸気口があります。
右側面には中央にI・O DATAロゴと、左側面と同じく吸気口があります。また、四隅には横置きにも対応できるようにゴム足が貼り付けられています。
底面にはMACアドレス等が記載されていますが、驚いたのは『Made in JAPAN』であること。この手の製品で日本製というのは珍しいですね。
背面には冷却ファンをはじめ、端子類が全て集約されています。LANポートはギガビット対応で、ケーブルフックがあるのも便利です。
※USBポートについては後述します。
○セットアップ
それではセットアップしていきましょう。
LANケーブルと電源コードを背面の端子に接続します。このNASは電源スイッチがあるので、電源コードを繋いでも勝手に起動はしません。
接続が完了しましたら、背面の電源ボタンを押して電源を入れます。
起動完了時には『ピー』と音が鳴り、ステータスランプが緑の点滅から点灯に変わります。電源ボタンを押してから完了するには約3分ほどかかるので、この点はマイナスですね。
※電源の切り方
電源を切る際には電源コードを抜くのではなく、電源ボタンを長押しします。長押しすると『ピッ』と音が鳴るので、後は電源が切れるのを30秒ほど待ちます。
起動が完了したら、付属のCD-ROMをセットし『Magical Finder』を選択します。
『Magical Finder』を選択すると以下の画面になります。
IPアドレスを固定しないならそのまま『ブラウザ』を選択してもいいですが、今回はNASなのでIPアドレスを固定します。
固定する場合は『IP設定』をクリックします。パスワードを要求されますが、初期設定なので何も記入せずにOKをクリックします。
LAN DISKの名前は初期設定でもいいですし、自分がわかりやすい名前に変えてもいいです。
IPアドレスを固定するには、『次のIPアドレスを使う』を選択し、IPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイは使用するネットワークに合わせて設定します。IPアドレスは、設定用パソコンのIPアドレスと同じサブネット上に設定する必要があります。
設定完了後にMagical Finder上で設定内容が反映されていることを確認できたら、『ブラウザ』ボタンをクリックします。クリックすると、以下の画面が出ます。
最初にパスワードを要求されますが未設定なので、未記入のままログオンします。ログオン出来たら、はじめて設定を選択します。いきなり、詳細設定を選んでもいいですが、とりあえずということでw
途中までは『IP設定』で設定した内容と重複しますが、時刻設定と省電力設定があるので設定します。省電力設定は4つの設定から選べますが、10分でいいと思います。
『設定する』をクリックすれば、初期設定は完了です。これでNASにアクセスできるようになりました。
○アクセスしてみる
『プログラムとファイルの検索』に『\\デバイス名』と入力すると、HDL-A2.0の共有フォルダ一覧が出てきます。私の場合はデバイス名がHDL-A2TBなので、『\\HDL-A2TB』と入力します。
○転送速度を測ってみる
NASへのアクセスが確認できたので、早速ウリの一つである転送速度を測ってみます。まずは、CrystalDiskMarkでの速度を計測しました。
HDL-A2.0はフレームサイズを『未使用/4KB/9KB/カスタム』と選択できるので、PCに搭載しているIntelのNIC・EXPI9301CTも同じサイズのジャンボフレームに設定して計測しました。
CrystalDiskMarkのスコアを見ると、ウリであるReadの読み込みが90Mb/sという数値には程遠い結果です。ジャンボフレーム設定では、未設定時よりも低くなっています。
一方、Writeは旧製品のHVL-AV1.0から大幅に高速化されており、ジャンボフレームのフレームサイズが大きくなるにつれて、速度も上がっています。
Writeの性能には満足ですがReadは公称値と程遠い結果だったので、ベンチマークではなく実際のファイル転送で計測することにします。
HDL-A2.0と通信するドライブがボトルネックにならないように、ドライブはRAMディスクを使用しました。また、ソースファイルは約2GBのmp4ビデオファイルです。
■Readスピード比較
■Writeスピード比較
zigsowのサイズでは文字が読めないので、実際の転送スピードは動画をクリックして大きいサイズでご覧下さい。
ReadスピードはCrystalDiskMarkのスコアと違い、メーカーの公称値通りの速度が出ています。シングルドライブで、しかもNASなのに90Mb/sの速度が出ているのを実際に見ると感動します。内蔵ドライブ感覚で使えます。フレームサイズ4KBでは70Mb/s程度と20MB近く落ち込んでいますが、9KBでは80Mb/s程度で10Mb/s程の落ち込みです。しかし、旧製品からは大きな進歩です。
Writeに関してはCrystalDiskMarkのスコアと同じ結果なので、CrystalDiskMarkのスコアをそのまま参考にしても問題ないようです。
転送時間の結果をグラフにしてみました。
ジャンボフレーム未設定時と設定時とで比べてみると、設定時は書き込みが速くなる一方で、読み出しは遅くなると言えます。読み出しが遅くなる分よりも書き込みが速くなるメリットの方が大きいので、ジャンボフレームを設定するなら9kB設定がベターですね。
○地デジ番組のムーブ時間を比較してみる
HDL-A2.0と所有しているHVL-AV1.0は共にDTCP-IPのムーブに対応しているので、ムーブ時間に違いがあるのかも調べてみました。
ソースは地上波の30分のアニメ番組です。
結果はグラフの通り、一目瞭然です。旧製品のHVL-AV1.0に比べて約2分も短縮されています。速いですね。まぁ、ぶっちゃけPT2やPX-W3PEを持っているとDTCP-IPをする機会はほとんど無いんですけどねw
あと、気になったのがDTCP-IPでムーブした番組のレジューム再生です。USBやLAN経由で録画した番組やPT2の録画ファイルはレジューム再生できますが、DTCP-IPムーブした番組はレジューム再生できません。レジューム再生出来ないどころか、一度再生を停止するとUSBかLANのHDDに戻っており、再び再生するには機器選択からDLNAサーバーと番組を選択しなおさなければなりません。
この症状(というか仕様?)は新旧関係なく発生します。旧製品から改善されているのではないかと期待しましたが、残念ながらそのままの様です。
○リモートアクセスを試してみる
このNASは転送速度が速いだけでなく、外出先からもアクセス出来るリモートアクセスが出来る点にもあります。スマートフォンを購入したことで写真や動画を見る機会が多くなったので、試してみました。
まずは、設定方法から紹介します。
先述したMagical Finderからブラウザでログオンします。詳細設定を選ぶと様々な設定が出来るので、上部のアイコンの『新規ユーザー』を選択し、ユーザー登録をします。
ユーザー登録が完了したら、次はリモートアクセス時にアクセスする共有ファイルを作成します。上部のアイコンの『新規共有』を選択し、任意のフォルダー名を決めリモートアクセス共有にチェックを入れます。
この共有ファイルをLAN内でDLNAクライアントからアクセスしたい場合は、DLNA共有にもチェックを入れます。自分は家の中でもスマートフォンで動画などを見るので、チェックを入れています。
そして、Remote Link2の設定をおこないます。サービスタブからRemote Link2設定画面へいきます。iobb.netへ登録・更新は『有効』を選択。ポート番号はデフォルトでOK。
接続名とパスワードはユーザー登録で登録したものとは別に設定しましょう。
外部ポート設定は通常なら設定不要ですが、ソフトバンクのスマートフォンで3G回線経由でアクセスする場合には、設定が必要です。自分はソフトバンクのスマフォユーザーなのでソフトバンク設定です。ポート番号は『する』を選択するとデフォルトで入力されている数字そのままで大丈夫です。
※リモートアクセスを有効にすると省電力設定は無効化されるので、注意が必要です。
以上で、設定は完了です。それではアクセスしてみましょう。アクセス先は『http://rm2.iobb.net/』です。
アクセスすると、以下の画面が出てきます。
Remote Link2の設定で設定した接続名を入力して、『接続する』をタップします。
接続するとログイン画面があらわれるので、ユーザー登録したユーザー名とパスワードを入力してログインします。
ログイン以降の様子は動画をご覧ください。ちなみに、今回検証した環境での3G回線速度は次の通りです。
使用してみた感想は、写真は3G回線でも問題ないですが動画は厳しいというものです。特に、動画はビットレートが高いものは無理で、ビットレート1Mbpsなら問題なく見れるというレベルものです。
使用しているDesire HDは画面解像度が800×480なので720pのビデオファイルでなくても良かったんですが、最近のスマートフォンは1280×720のものが増えてきたので720pで検証しました。720pのmp4ビデオファイルだとビットレートは2~3Mbpあった方がいいので、高解像度の動画視聴はWiMax等で接続することをおススメします。
今回は家の中で検証しましたが、外出時は自分自身が一定の場所にとどまっておらず動くので電波が不安定です。このため、ビットレートが低い動画でも動画視聴は不安定になると思うので、動画視聴時は3G回線は避けるべきだと思います。
○net.USBを使ってみる
このNASはUSBデバイスを複数のPCで共有できるnet.USBの機能も備えているので、試してみました。接続する機器はプリンターを考えていましたが、最近は無線LAN内蔵のプリンターも増えてきており面白くないので、ブルーレイドライブを接続してみました。使用したドライブは内蔵タイプなので、SATA-USB変換ケーブルで接続しました。
net.USBの設定方法は、以下の通りです。
Magical Finderからログインし、詳細設定に入ります。サービスタブのUSBポート設定で、net.USBとして使用する背面のUSBポートに対応するUSB設定を『net.USB』を選択する。
次に、HDL-A2.0の製品ページからnet.USBをダウンロードして、インストールします。インストールが完了したら、デバイスを接続します。接続後、ウインドウを開き接続すデバイスを選び接続します。接続が完了すればPCに内蔵している時と同じように使えるようになります。
今回は、ブルーレイドライブを接続したので途切れることなく視聴できるかを検証しました。検証は、有線接続と無線LAN接続でおこないました。無線LANアダプターはルーターが300Mbpsまでの対応なので、5GHz帯対応の300Mbpsのものを使用しました。
視聴ソフトはレンタルしたBD版『トランスフォーマー ダークサイドムーン』です。視聴時の映像や音声は公開できないので、視聴時のビットレートネットワーク使用率を動画でご覧下さい。
■有線(ギガビット接続)
■無線(300Mbps)
結論から言うと、有線のギガビット接続なら全く問題なく視聴できます。早送り時は内蔵時に比べワンテンポ遅れる感じで始まりますが早送りが始まればスムーズで、再生ボタンを押すとすぐに再生もされます。内蔵時とほぼ遜色なく使用できます。
一方、無線接続では5GHz帯を使用していてもビットレートの高い場面になるとコマ送りになり、スムーズな再生は不可能でした。これで問題なく視聴できれば、光学ドライブ非搭載のウルトラブックでも外付けドライブなしにブルーレイ視聴が出来るようになると淡い期待を抱いていたんですが、脆くも崩れ去りましたw
ただ、450Mbpsでは試していないので、450Mbps接続ならあるいは…。今回は対応ルーターを持っていなかったので検証していませんが、機器が揃った時に改めて検証したいと思います。
○UPSとの連動を確かめる
このNASはUPSとの連動にも対応しているので、しっかりと動作するか確かめました。ただし、全てのUPSで対応しているわけではりません。対応UPSはI・O DATAのホームページで公開されています。
LAN DISK対応UPS一覧
掲載されているUPSは所有していないものの、CyberPowerのBackup CR 900というUPSを所有しているので連動するか確かめてみました。
結果を言うと、ダメでした。HDL-A2.0がUPSを認識出来ず、コンセントを抜いて擬似的に停電時を再現しましたが、NASをシャットダウンすることは出来ませんでした。
残念だなぁと思っていると、対応UPSであるオムロンのBY35SがNTT-Xで9980円という格安価格で販売されていたので、すぐにポチりました。蛇足ですが、このUPSはオムロン製で正弦波にも対応しているので、かなりいい買い物を出来ました。
それでは、UPSとの連動設定をしていきます。
Magical Finderでログインし、詳細設定からサービスタブを選択しUSBポート設定に入ります。UPSの場合はnet.USB以外を選べば問題ないようです。私は共有モードを選択しました。
設定が完了したら、UPSを接続します。接続が完了すれば、ステータス画面に接続状態とバッテリー容量が表示されます。
次に、UPSがバッテリー動作状態になった際のNASの動作を設定します。UPS設定の『UPS警告機能を使用する』にチェックを入れ、さらに停電後どれくらいでNASをシャットダウンさせるかを選択します。時間設定は使用するにNASの容量から判断して設定しましょう。
さらに、停電復旧時のNASの再起動設定をおこないます。システムタブのその他の設定から、『自動起動する』を選択します。
これで、UPSに関する設定は完了しました。
では、実際のUPSと連動動作を動画でご覧下さい。
UPSがバッテリーモードになると、ステータスランプが赤色になり警告音を発します。今回は1分後にシャットダウンを選択したので、1分経過するとシャットダウンの動作を開始してしっかりとシャットダウン出来ました。
UPSが再起動すると同時にNASも起動を開始し、停電復旧時のNASの再起動設定が問題なく機能していることが確認できました。
○消費電力
ワットチェッカーを持っているので、消費電力を計測しました。
アイドル時の消費電力が低いのはいいですが、省電力時の消費電力が高いのが気になります。省電力時はディスクの回転は停止するようですが、NASに搭載されているファンは回転し続けています。ファンが動いていることから、省電力時でも中で何らかの機能が働いているのでしょうか?
他にも省電力動作で気になる点はいくつかあります。まずは、10分後に省電力設定をして何のアクセスもしていないのに、10分経過しても省電力モードに移行しない点です。気づいたら省電力モードになっているといった感じで、謎です。
また、省電力モードに移行したことを目視では確認できない点も気になります。省電力時でもステータスランプはアイドル時と同じく緑色で区別がつきません。実際にNASを触って回転しないのを確かめるか、常時ワットチェッカーを繋いで消費電力で確認するしか方法がありません。
○まとめ
HDL-A2.0は転送速度もさることながら、様々な機能を搭載しており『かなり使えるNAS』であることを実感しました。リモートアクセスはもちろん便利ですが、net.USBがかなり便利でギガビット環境があるならブルーレイとの相性は抜群です。ドライブが1台あれば、後は再生ソフトを用意するだけで済みます(その再生ソフトが高価なことは触れてはいけない…)。300Mbpsの無線環境での再生は実用には耐えませんでしたが、450Mbpsで再生できるとなればノートPCとの相性もグンと向上しますね。
UPSとの相性も良いので、データ保護の信頼性も高いです。今回使用したUPSは正弦波対応タイプなのでNASにはもったいないですが、対応UPSで一番安いAPCのBE550G-JPあたりを買っておけば大丈夫だと思います。
シングルドライブなのでRAID 1は組めませんがUSB HDDを接続してバックアップ出来るので、UPSと組み合わせれば信頼性はかなり向上すると思います。
リモートアクセスも便利ですが、最大限に活用するなら3Gは避けてWiMax等を活用するべきです。
繰り返しになりますが、転送速度が速い上に機能も豊富でUPSとの相性も良いので、速さと信頼性を備えたNASで万人におススメできるNASです。
設定も専門的な知識は特に必要がなく、マニュアル通りにやれば設定できますので初心者にもやさしいです。
買って損はしないNASで値段以上の満足感を得られると思うので、NASの購入に迷った際に買ってみる価値があるNASだと思います。
最後に、長文にも関わらず最後まで読んでいただきありがとうござました。
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