尾崎豊。彼の死後20年が経とうとしている現在、彼をリアルで聴いていた世代はオトナになり、彼のかつていた世代・彼が代表していた世代は彼の直接歌う姿を識らない。そして時代も違う。置かれた環境、世代の空気、そういったモノが異なる現在に彼がいたらまた違った歌を歌っていたかもしれない。魂の叫びのようだった彼の歌、血の涙のようだった彼の詩、でもそれらが、今回の参加アーティストの中に入り、解釈されて、また表現された。カバーアルバムでなくトリビュート、という形式で。
みな解釈が違う。尾崎の心情に寄り添うように重ねたアーティストもいれば、曲の良さを表現するためにオリジナルの外形に忠実な人もいる。尾崎の曲をさらに超えて行かんとする人もいれば、最高の素材と向き合った料理人ヨロシク、自分の味付けを試みたミュージシャンもいる。みんな、それぞれ。いろんな世代のいろんなジャンルのひとが、一人の天才の遺した曲を表現する。
「ダンスホール」。Coccoが休養していたときの録音。彼女の歌が聴きたいな、と思っていたときの曲。なぜだがもう一世代前の「少年」を歌うアーティスト、浜田省吾の初期を想い出させるような歌い方。元曲のイメージ濃く、すっと入っていける。
「僕が僕であるために」も比較的原曲のイメージが強い。ただやはり桜井和寿の上手さと巧さが出ていて、尾崎ほど迸ってはないが、でも桜井の声!がやはり「そこ」にあり、♪僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない♪と歌った尾崎の想いが聞こえてくる。
「I LOVE YOU」。これは宇多田ヒカルの17歳の時のライヴテイク。ライナーにあるが、この作品が出された2004年当時の彼女でなく、尾崎が歌った世代の彼女が、そのときの彼女が感じて歌ったモノ。感情が先行しすぎて、また敬愛する尾崎の歌を人前で歌う事に震えて、声はかすれているが、彼女の「そのとき」が見える。リリース当時の「上手い」彼女じゃあダメだったんだろうなぁ。このテイクは。一部尾崎の歌をカッコよく歌う事に気負いすぎている曲もあるけれど、それぞれのアーティストが尾崎を「こう受け取った」というのがわかる作品。じぶんの持つのは初出のCCCD版だけど、試聴ファイルのある通常版に繋いであります。Amazonのレビューでは賛否両論、特にもとからの尾崎のファンからはほとんど否定的な発言がされていますが、ぜひ自分の耳で聞いて良否を判断して欲しい、作品です。尾崎という稀代のアーティストが遺した巨大な足跡が感じられます。
【収録曲】
1. ダンスホール Cocco
2. 僕が僕であるために Mr.Children
3. 路上のルール 橘いずみ
4. 十七歳の地図 175R
5. I LOVE YOU 宇多田ヒカル
6. 太陽の破片 岡村靖幸
7. LOVE WAY 大森洋平
8. 街路樹 山口晶
9. OH MY LITTLE GIRL 竹内めぐみ
10. 闇の告白 斉藤和義
11. Forget-me-not 槇原敬之
12. 15の夜 Crouching Boys
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購入金額
3,059円
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購入日
2004年頃
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購入場所
UDさん
2011/11/27
私の持ってるのは、新品なのに1,472円になってます…。
cybercatさん
2011/11/27
>私の持ってるのは、新品なのに1,472円になってます…
...っ、なんと!!!