レビューメディア「ジグソー」

英国の香り…はしませんな

以前から気になっていたものの、既に生産完了となっていて入手できなかったのが英国(発祥はドイツ)GoldringのローエンドMMカートリッジ、ELANでした。

 

ELANは接合丸針を採用していますが、これを接合楕円針にすると上位モデルELEKTRAに変わります。ボディーは共通で針先だけの違いです。

 

Goldringというブランドに憧れがあったとか、そういったわけではありません。今なお現行モデルのロングセラー、ELITEは既に持っていますからね。

 

 

 

 

 

以前OTOTENでナガオカが交換針を自作するというイベントを開催しましたが、私も参加させていただいて交換針JN-500を作りました。そして後日参加者にJN-500を利用するためのカートリッジとしてNAGAOKA NT-500Mというヘッドシェル付きカートリッジも送付されるという大サービスもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのNT-500Mですが、以前から噂があったわけです。それが「Goldring ELANと中身は同一」というものでした。これを確認してみたかったのでELANが欲しかったということです。というわけで、今回はELANとNT-500Mを比較してみるという趣旨で書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはELANの外観を確認してみますが、当時17,000円のカートリッジとしてはやはりちょっと安っぽいです。上位モデルELEKTRAもノブの文字以外外観の差はありませんが、ELEKTRAは2万円を超えていました。

 

ではここでNT-500Mと比べてみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交換針のノブ部分の色や文字は異なりますが、それ以外の違いを見出すのは難しいでしょう。どう見ても同一の構造です。

 

 

 

 

 

 

 

交換針の形状自体も特に違いはありません。上のJN-500は私の自作版なのでカンチレバーが長目ですが、製品版のJN-500であれば長さもほぼ同じです。

 

 

更新: 2025/01/31
総評

ちょっと利幅が載りすぎているような…

既に結論は出ているようなものですが、一応音も確認しておきます。

 

先日Jasmine Audio M1を試した環境で、そのままカートリッジだけを付け替えて聴く形です。メーカー名不明のアルミシェルに、シェルリード線Ortofon LW-3Cを組み合わせてELANを取り付け、Technics SL-1200G+TEAC PE-505で聴きます。負荷容量は暫定的に100pfで聴きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ELANの音は、一言で言ってしまえば「普通の音」です。接合丸針ですから緻密な音は出ませんが、ちょっと懐かしさを感じる、昔ながらのレコードというイメージの音です。レンジは程々で少し中低域に厚みを持たせ、突出した部分のない良くも悪くも無難な音でしょう。悪くはないのですが、17,000円と考えると少し物足りない気がします。

 

それではELANの針を自作版のJN-500に交換してみましょう。

 

 

 

 

 

 

ELANの針と比べるとちょっと厚みが減り、中域が持ち上がるようなイメージへと変化します。この時聴いていたのは「Twilight / Electric Light Orchestra」でしたが、ELOならではのスペーシーな音場を展開するこの曲の雰囲気には意外とこちらの方が合っているような気もします。いずれにしても無難ではありますが、じっくりと聴き込むタイプの音でもありません。

 

 

続いてNT-500M標準装着の針を拝借してELANのボディーに装着して聴いてみます。

 

意外だったのですが、今回用意した3つの針の中ではこれが最も好印象でした。基本的なバランスはELANと変わりませんが、NT-500M針の方が低域の輪郭がはっきりとしますし、演奏者が2~3歩ずつ前に出てきたような距離感に感じられます。これはNT-500Mがメーカーデッドストック品で完全未使用であった(私がいただいてから多少再生に使いましたが)のですが、ELANは代理店所有のデモ機上がりを買ったものですのでコンディションがやや落ちていることによる可能性があります。

 

とはいえ個体差なども多少はあるでしょうし、同一の製品であると言われも違和感を覚えるほどの違いでもありませんでした。そもそもELANはGoldring製品とはいえ「MADE IN JAPAN」と明記されていますし、ナガオカ製OEMであることは間違いなさそうです。NT-500Mの値段(当時3,240円)であれば素晴らしいコストパフォーマンスでしたが、17,000円ではちょっと辛い評価になってしまいます。

 

なお、Goldringでは既にELAN/ELEKTRAの交換針の販売を終了していますが、上記の通りNAGAOKA JN-500で問題なく代用できます。

 

それ以外にもベースモデルNT-500Mを他のOEMでも使っていたのでは無いかと探してみたところ、どうやらAurex(東芝)C-50Mというカートリッジが同一のボディーであるように見えます。C-50Mは東芝と旧ナガオカが共同開発したサファイア針「ウルトラC」を採用していましたが、ボディー側はELANと違いがわかりません。このC-50M向けの交換針はJICOでもラインナップされていますので、それを入手して付け替えるのも面白いかも知れません。

 

ELANのボディーは色々と遊べるのは確かですが、この値段を払うのであればaudio-technicaの方が良いでしょう。

 

なお、ELAN/ELEKTRAが生産完了となった後はGoldringのローエンドMMカートリッジが一新されています。ただ、相変わらず「MADE IN JAPAN」ですし、今回は構造図を見るとaudio-technica独自のVM型なんですよね…。

 

 

 

  • 購入金額

    8,900円

  • 購入日

    2024年12月07日

  • 購入場所

    オーディオユニオンアクセサリー館

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