所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。過ごしやすい気候で体にストレスがかからず、頭も感覚も冴える秋は、「芸術の秋」でもあります。そんな季節には、展覧会や同人イベントなど、芸術の発表会が多く行われます。音楽に関しても数多くイベントが催されますが、その中でも最大級のイベント、M3の常連のある音楽サークルの作品をご紹介します。
Room97。手持ちの作品などからは10年以上の活動歴がうかがえる音楽サークル(彼らは自身のHPやBOOTHを持っているが、販売中の直近の作品しか紹介がないので、いつから活動しているのか定かではない)。また音楽サークルを自称しているが、個人かグループかも不明。先日現在のHPやBOOTHから消えている過去の作品の紹介記事
を書いていた時に、(少なくともその当時の)Room97の主宰がのりるというベーシスト兼トラックメイカー・コンポーザーであることが分かったが、それ以外詳しい情報がない状態。ただ、年2回の音楽同人イベントM3では必ず新譜を届けているサークルではある。
そんなRoon97の、一つ前のM3=M3-2024春の新譜が“FLICK”。7曲入りのミニアルバムだが、このときは“SONIC WATER”というマキシシングルとダブルリリースだったので、その影響か。ま、Room97の物理CDは全曲のインストトラックが含まれているので、曲数的には十分なのだが(ちな、DL販売にはインストトラックは含まれないので、CDが販売終了した後にインスト版を手に入れる方法はない)。
「Ctrl+S」は、よく動くベースラインとチープなブラス音のラインが、線がやや細いつずなのヴォーカルを良く支えて、ギターと小口径の軽い感じのドラム音で構成される小粋な楽曲をよくまとめている。この「チープな音」というのは悪評価ではなくて、最近ではサンプリングやモデリング技術で、充分リアルな音が手軽に手に入るのに、あえて、一昔前の合成音くさい「シンセブラス」であるのが、ヴォーカルラインを邪魔せず、饒舌なブラスラインを軽く聴かせているのが、つずなの声質と相性が良く、いいバランス。
この作品では、内田真礼などのサポートで活躍するベーシスト吉川竜矢がベースを弾いてる曲が3曲あるのだが、そのうち2曲が、最近Room97では若干影ありめのクロっポイ路線の曲で、よくヴォーカリストとして採用されているEVO+の絡む楽曲で、この2曲がいい。
まずEVO+ソロの「DNA」。ファンキィ風味のポップスで、イメージとしては初期のMISIAをぐっとポップにした感じ。ヴォーカルラインが結構クロめの旋律で、それを支えるスラップ織り交ぜた吉川のベースが前進力を出している。対照的に、音もフレーズも「ザ・打ち込み」という感じのドラムとパーカッションが軽やか。この曲の間奏のソロはベース、というのが「らしくて」GJ。
最後の「薄雪」は、そのタイトルのイメージからはやや離れた、クロっポイソウルフルな男声×女声のデュエット。EVO+と熱い掛け合いヴォーカルを取るのは、男声が求められる場合のRoom97楽曲で常連のIzumi。ハネるスローなリズムに絡む、EVO+の普段よりハスキーな声と、張りのあるIzumiの声の掛け合いが沁みる。音数はすごく多いわけではないのだが、ここぞというときに印象的な動きをする吉川のベースラインも、曲に表情をつけている。
全体的にややソウルめ系統の曲が多く、春リリースの割には「夏に向かって超アゲで」という感じではなく、少し大人っぽい曲が多い。
その雰囲気が、今の季節になって「合って」きた作品です。
本作のリリースから半年経った2024年の10月にはM3-2024秋が開催されたが(2024/10/27)、そこでもRoom97は新譜をリリースした。今度はどんな「季節」を感じさせる作品なのだろうか。
シンプルなジャケットイラストは、ここのところ連続でpasoputi師が手掛ける
【収録曲】
1. スタンドバイミー(feat.棗いつき)
2. Ctrl+S(feat.つずな)
3. 必ず君に(feat.touna)
4. DNA(feat.EVO+)
5. DIAMOND(feat.棗いつき)
6. 薄雪(feat.Izumi & EVO+)
7. ノア(feat.鈍色聴)
8. スタンドバイミー -inst-
9. Ctrl+S -inst-
10. 必ず君に -inst-
11. DNA -inst-
12. DIAMOND -inst-
13. 薄雪 -inst-
14. ノア -inst-
「Room97【FLICK】XFD」
今回複数曲参加のヴォーカリストが複数いるので、カラーが収束している感じ
Room97の楽曲は、曲に適したゲストヴォーカリストを招聘して曲を表現するため、場合によってはアルバムに収められている曲のイメージの振れ幅が大きすぎる場合があるが、本作はかなり収束していて、統一感がある。
-
購入金額
2,000円
-
購入日
2024年04月23日
-
購入場所
Room97 (BOOTH)
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。