アナログオーディオにはそこそこ金をかけてきた私ですが、実はCDには全くといって良いほど金をかけてきませんでした。最も最近に新品で買った据え置きのCDプレイヤーはVictor XL-Z711であり、それ以降のメイン級となったYAMAHA CDX-2000(売却済)やPanasonic SL-PS840、SANSUI CD-α607はいずれも中古又はジャンクで格安購入したものでしたし、現メインのNEC CD-10に至っては4,000円の中古(一応初期不良保証が付いていたのでジャンクではありません)でしたから、いかに金をかけていないかは一目瞭然です。
色々入手した後もメイン機であり続けたNEC CD-10は、かつて絶大な人気を誇ったオーディオ評論家長岡鉄男氏が「CD-10が間違っているのかCD-10以外の全てが間違っているのかわからない」と評したとされるほど、このモデル独自ともいえる鮮烈な音が魅力でした。SANSUI CD-α607は比較的最近入手していますが、これも比較試聴の結果別宅用のVictor XL-Z621との入れ替えに回り、CD-10の地位を脅かすには至りませんでした。
CD-10が快調な内はCDプレイヤーを入れ替えることはないかとも思っていたのですが、CD-10には一つだけ重大な弱点があります。それはCD専用機であるため、SACDを聴けないということです。SACDは簡単に言えばDVD相当の物理メディアにDSD 2.8MHzの音声信号だけ(2層メディアでSACDとCDの双方を記録しているSACD Hybridメディアが主流ですが)を記録した規格であり、16bit/44.1kHz WAV相当のCDよりは明らかに音質面で有利です。しかし現時点でSACDを聴く場合には不調の初代PlayStation 3 60GBを引っ張り出してくるか、DVDプレイヤー(Pioneer DV-610AV等)を使うかでした。どちらにしてもオーディオ専用のシステムに組み込むのはちょっと無理があります。
そこでそのうち安いSACDプレイヤーは欲しいと思っていたのですが、最近はオーディオ機器全般が値上げ傾向であり、かつてはPioneer PD-30のような比較的手頃な価格(当時新品でも約6万円)でそこそこの質を持つ製品もありましたが、今では中古でもそれほど安いものがなかなか出てきません。質を無視すればある程度は見つかりますが、CDプレイヤーとして一定レベルをクリアしていてくれないと結局CD-10に取って代わることは出来ないでしょう。そのような中で手頃な価格かつそこそこの質という条件を満たす中古を見つけたので購入したのが、本機Pioneer PD-D9となります。
PD-D9は2007年10月発売で、USB端子等は無いシンプルなSACD/CDプレイヤーです。D/AコンバーターはWolfson WM8741(HDD時代のiPod等にも搭載されていた、割と普及していたチップです)を左右独立で搭載していて、パイオニア独自の高音質機能「レガートリンクコンバージョンPRO」やHi-bit変換(16bit→24bitコンバート)などを搭載していますが、当時の上位モデルとはいえ希望小売価格138,000円と実はさほど高価な製品ではありませんでした。CD時代の上位モデルPD-T07HSや、SACD最後の上位モデルPD-70AEと比べると何とも半端な立ち位置です。
それでも今時そこそこの水準のSACDプレイヤーがこの価格で売られていることは滅多にありませんので、取り敢えず購入してみることにしました。
SACDを楽しむことに不足はない
純正の外箱は無かったものの、オーディオ専門店らしくオーディオ機器用サイズと思われる段ボールで届けられました。
既に17年も前の製品(この個体は16年前)ですが、外装は意外と綺麗です。
出力はデジタルが同軸と光、アナログライン出力はRCAのみとなります。出来れば上位モデルなのですからXLRは欲しいところです…。
パイオニア製品ですが、恒例のハニカムシャシーではありません。銅メッキビス等は使われていますがこの辺りもちょっとらしくない気がします。
付属品はリモコンと電源コード(非純正)のみと記載されていましたが、恐らくメーカーサイト上のPDFを印刷したと思われる取扱説明書も同梱されていました。電源ケーブルは汎用のオーディオ向けとはいえないものでしたので、暫定的にACROTEC 6N-P4010を組み合わせます。
取り敢えずCD-10と入れ替えてみました。早速直前までCD-10で再生していた「The Dream of the Blue Turtles / Sting」を聴いてみますが…。
聴感上のレンジはCD-10よりも主に低域方向に広いと思いますし、高域方向の緻密さも時代分だけPD-D9が上回っているように感じます。ただ、楽器やヴォーカルの質感や分解能など、CD-10の方が上と思える部分も結構あります。
そこで「PURE AUDIO」モード(主にディスプレイの消灯)を有効にしたり、レガートリンクコンバージョンPROを無効にしてみたりしたのですが、個人的にはレガートリンクコンバージョンPROはOFFの方が自然な音色に感じられます。PURE AUDIOモードは主に高域方向の付帯音が少し減る程度ですから大きな変化というわけではありません。
そこでもう少し何とかしたいと思い、余っていた小型マグネシウムインシュレーター、SUNSHINE S10を入れてみます。
PD-D9に対してはちょっと小さいのですが、それでも低域方向の解像度が上がり、レガートリンクコンバージョンPROをOFFにしてもまだ残っていた中高域の癖がある程度緩和します。
CDを何枚か聴いてみた中で、割合良好だったのはこちらの「Adagio d'Albinoni / Gary Karr」(純金CD)でした。
CD-10ではどうしても勢いで押してくる感があったのですが、PD-D9ではコントラバスも弦楽器であることを再認識させられるように弦の質感が表現されます。ロック系楽曲ではCD-10の勢いや鮮烈さがPD-D9を上回ってくる感が強いですね。
続いてSACDも聴いてみましょう。私が持っているSACDはこれ1枚ですが…。
SACD再生時にはタイムカウンター上に「SACD」という表示が表れます。
このディスクはSACD層と通常のCD層があるハイブリッド盤ですから、レイヤーを切り替えて聴き比べてみると、さすがにSACD層のクオリティが圧倒します。レンジが広く一音ごとの質感が色濃く表現され、よりワイドレンジに感じられます。まあ、SACDはDSDですから、マスターの段階から音が違っているような気もしますが…。
SACDを再生すればそれなりに専用機のメリットを感じるだけの実力を示してくれる一方で、CDでは本機よりも18年も前に発売されたCD-10に及ばない点も見受けられます。もっとも当時のライバルモデルDENON DCD-1650AEも購入を検討して試聴させていただいたこともありましたが、思った以上にレンジが狭くエネルギー感も弱めで魅力が感じられず、結局購入を止めたということもありましたので、クラスなりの音はきちんと出ていると評することは出来ます。ただ、やはり現行モデルでいえば30万円台以上の製品のような表現力は無いということは認識しておいた方が良いでしょう。
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購入金額
25,000円
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購入日
2024年09月20日
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購入場所
サウンドハイツ
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