所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。演奏系のアーティストが使う機材は、資金に余裕が出てデビュー時から変わる場合もあれば、デビュー時から楽器を替えない場合もあります。活動歴が長くなるにつれ、徐々に他の機材も使い始めはしたものの、10年の節目であらためて初動画で使用した楽器と向き合った作品をご紹介します。
まらしぃ、ピアニスト。最近では動画サイト出身のアーティストというのも珍しくなくなっているが、彼はその奔りであり、「第1世代」とも呼べるあたりに属するアーティストかも知れない。そして、かつて彼の作品・演奏発表動画プラットフォームはニコニコ動画だった(実は同時期にYouTubeにも投稿をしはじめているが、彼がニコ生もやっていたこともあって、主戦場はニコ動だった⇒現在ではYouTubeの比重も大きくなっている)。
2008年、東方Projectの曲「ネイティブフェイス」の弾いてみた動画で投稿デビューし、その後順調に視聴者数を伸ばして、トヨタのハイブリッド乗用車のCFソングを手がけたり、嵐のアルバムに参加したりして、一般的にも識られるようになった。
そんな彼、現在では自宅地下に防音スタジオを備え、新たに購入したグランドピアノの使用も多くなっているし、夜の配信を支えたRolandのV-pianoやFANTOMと言った電子ピアノ/シンセサイザー系での動画も多いが、やはり原点といえば初動画からずっと使い続けている「茶色ピアノくん」と呼ばれている実家にある茶色のアップライトピアノ、YAMAHA W100MC。
そのピアノは、彼が「ピアノを真面目にがんばるから」と親に言って買ってもらったものらしく、強い思い入れがあるのだとか。
今まで動画や配信では使っていたものの、CD音源として録音はされていなかった、その「茶色ピアノくん」を、動画デビュー10周年を記念して全面的に使い、2018年の冬コミ、コミックマーケット95でリリースされたのが、“幻想遊戯 <家> ~Museum of marasy”。
<家>の名の通り、実家にあるW100MCにきちんとレコーディングエンジニアがマイクを立てて録ったもの。今までの動画と比べて高音質ではあるものの、一般住宅にに設置されたアップライトピアノなので、スタジオにあるグランドピアノなどと比べると低音の伸びや量感はやや薄い。しかし嬉しいことに、今まで動画・配信で良く聴いた彼の音色が再現されていて、「ああまらしぃの音だ」と感じるできばえ。
「ラクトガール ~ 少女密室(紅魔郷)」。東方Projectとしては初のWindows版ゲームで、東方がブレイクするきっかけとなったという「東方紅魔郷」の4面ボス、パチュリー・ノーレッジのテーマ。もの悲しく切ない感じのテーマの導入から、切迫感を煽るブリッジとテーマを複数回転調していくセットの繰り返しというシンプルな構成だが、テーマの切なさが耳に残り、印象深い。曲としては何度も取り上げられているが(この時点で“幻想遊戯<紅>”、同exで既カバー)、改めて馴染みの「茶色ピアノくん」で弾いた形。帯域が狭く中域が盛り上がった感じの「茶色ピアノくん」の良さが、こういったシンプルな曲には出ている。
「霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion(地霊殿)」は、すでにレビューした“幻想遊戯 Grand 2”
で再演されているが、あれはこの後新たに自宅の地下スタジオに導入した「茶色のグランドピアノ」こと、Steinway & Sonsのグランドピアノを使った作品。これは新旧「茶色のピアノ」を聴き比べると違いが明確。高い音が透き通り、下の弦の震えも力強い「茶色のグランドピアノ」に比べると、アップライトの「茶色ピアノくん」は帯域はナロー。ただ逆に中域の充実はこちらで、広がりが少ない分、印象的な切迫感溢れるメロディがかたまりになって攻めてくる感じ。元々東方楽曲自体がシューティングゲームのBGMなので、帯域狭く押してくる方がらしいとも言える。
最後の2曲はボーナストラック扱いだが、一方の「ナイト・オブ・ナイツ 10周年 ver.(メドレー)」は、東方Project楽曲のうち、十六夜咲夜のテーマ「フラワリングナイト」の下ネタ好きのヴォーカリストビートまりおによるアレンジ曲。元アレンジにも「月時計 ~ ルナ・ダイアル」のメロディが取り入れられているが、このアレンジでは「メドレー」の名の通り、ひとしきり「ナイト・オブ・ナイツ(フラワリングナイト)」のテーマを3分ほど奏でた後、30曲以上の東方楽曲を繋いで、最後にまた「ナイト・オブ・ナイツ(フラワリングナイト)」に戻るという構成の18分超の大曲。自分は東方系は、ZUNによるゲーム音楽は直接聴いたことがなくて、まらしぃをはじめとする東方奏者によって識っているだけだが、それでも何曲か識った曲が顔を出す。めまぐるしく変わる曲を上手く繋いでメドレーとするのは、動画や配信でもよくやるまらしぃの得意技なので、まさに面目躍如という感じ。
エンジニアがマイクを立てて録ったとは言うものの、スタジオ録音ではなく、アップライトピアノで上も開けずに録っているので、上下には音質的にも機材的にも伸びていないけれど、中域中心の音が暖かく、「あ、配信で良く聴く音だ」と。
そういう意味ではまさに「実家のような安心感」で聴ける作品です。
装丁はいつもの、さきの新月師。「茶色のピアノくん」が緻密に再現されている。
【収録曲】
1. 風神少女(文花帖)
2. 平安のエイリアン(星蓮船)
3. ラクトガール ~ 少女密室(紅魔郷)
4. 遠野幻想物語(妖々夢)
5. 千年幻想郷 ~ History of the Moon(永夜抄)
6. 霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion(地霊殿)
7. クレイジーバックダンサーズ(天空璋)
8. 始原のビート ~ Pristine Beat(輝針城)
9. 東方妖怪小町(永夜抄)
10. 夜が降りてくる ~ Evening Star(萃夢想)
11. ネクロファンタジア(妖々夢)
12. ナイト・オブ・ナイツ 10周年 ver.(メドレー:ボーナストラック)
13. ネイティブフェイス(風神録:ボーナストラック)
「ナイト・オブ・ナイツ 10周年 ver.(メドレー)」
ニコ動で彼の曲を聴いていた層には懐かしい音
ニコ動、近年はともかく、全盛期は「有料会員でないと低画質」とか「ゴールデンタイムは遅延が酷い」とか「某映画のあるシーンでバ○スと叫んで、サーバーを落とす」とかあったので意外だが、音質の方は実はYouTubeより良かったりする。
そんなニコ動のまらしぃの懐かしい動画で、馴染みのある音。
おかえり。
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購入金額
1,400円
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購入日
2024年05月08日
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購入場所
まらしぃさんのBOOTH
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