今回試聴する中では最廉価モデルとなる製品です。例によってハンダの違いで音質の差が生じるというもので、今回取り上げるKS-DIGITAL-001/MR.IIはMusic Referenceグレードのハンダを採用した製品となります。
このMusic Referenceグレードのハンダは以前シェルリード線のKS-LW-4000MRで聴いて以来ということになります。
KS-LW-4000MRはオーディオ的な性能にはそれほど振っておらず、アナログ的な濃厚な音色を押し出したものという特徴がありました。しかし、今回のデジタルケーブルでは、KS-DIGITAL-001/STDがまさにそのような音であり、その下位となるKS-DIGITAL-001/MR.IIはどのような傾向を示すのかあまり想像が付きません。実はKS-Remasta製のアナログインターコネクトケーブルを以前何度か試聴していますが、全体的に私の評価が辛めだったということもあり、最下位のKS-RCA-001/MR.IIだけは聴いていないのです。
ある意味最も予想が付きにくいのが、今回のKS-RCA-001/MR.IIだということもあり、早速音を確かめてみることにします。ただ、前回のKS-DIGITAL-001/EVO.IIが数時間のバーンインを要するタイプであったということもあり。丸1日私の普段使いで慣らした後で試聴を開始します。
当然ですが外観上はシリーズの他製品と見分けは付きません…。
音色は良いが上位よりはレンジが狭く感じる
一応端子内部も確認しておきましょう。これまでの上位製品と同様に仕上がっているはずです。
試聴方法はこれまでと同様にFOSTEX HP-A8とCHORD Hugo間の接続に使いHugoのヘッドフォン出力で音を確認するというものです。ソースも同様に「Balluchon / 小川理子」(78rpm盤)と「TOTO IV / TOTO」(Friday Music盤)から起こした、それぞれ24bit/192kHzと24bit/88.2KHzのWAVファイルとします。
まず「Smile / 小川理子」を聴いたのですが、ちょっと「?」となりました。というのもベースラインがこれまでの上位モデルより大幅に細身になってしまうからです。細身といってもaudio-technica AT-RD5000/1.0比であれば量的に出ていないわけではないのですが、よく聴いているとベースの低めの音があまり出てない印象を受けました。ヴォーカルはKS-DIGITAL-001/STDよりはKS-DIGITAL-001/EVO.Iの方に近い声に感じられます。ハイハットの金属感は意外としっかり出ていますが、あと一伸びがなくて頭打ち感があったKS-DIGITAL-001/STDと比べても、ハイエンドがストンと落ちているような感触です。シェルリード線のKS-LW-4000MRではレンジが狭めで出ている帯域が濃厚という印象だったMusic Referenceグレードですが、デジタルケーブルではKS-DIGITAL-001/EVO.Iに近いバランスで、レンジを少し狭くしたような音です。もっとも、シェルリード線の試聴などで一般的なユーザーの反応を見る限りでは、この程度出ていればレンジの狭さは感じられない人の方が多いと思います。
続いて「Rosanna / TOTO」ですが、やはり曲頭のドラムがちょっと軽く感じられます。ただ、ボビー・キンボールのヴォーカルは張りがありますし、肉声という感覚はきちんと出ています。わかりやすくいうと、きちんとしたチューナーで聴くFMラジオくらいの帯域が充実していれば文句ないという方であれば、このケーブルの音にはかなり満足されるのではないでしょうか。上下とももう少し広いところまで聞こえる方だと、物足りなさを感じるかも知れませんが…。
「It's A Feeling / TOTO」ではイントロのベースラインが細身に感じられるため、この曲の雰囲気がやや薄まりますし、「Afraid Of Love / TOTO」ではハイハットがKS-DIGITAL-001/EVO.Iと比べるとやや金属的に感じられないため、この曲ならではの活きの良さが少し後退します。今回使っているソースがいずれも結構きっちりと低域方向に充実しているため、このケーブルの弱点がやや強調されてしまっている感はあります。
強いて言えば「ショスタコーヴィチ:3つの二重奏曲 作品97dから第1番:前奏曲 feat. イツァーク・パールマン / David Garrett」を聴いてみるとなかなか良かったので、小編成のクラシックなどを聴かれる方であれば、このケーブルで高い満足度が得られそうです。イヤフォンで例えれば出来の良いシングルBAドライバーの製品を思い浮かべていただけるとわかりやすいかも知れません。実際にはそれよりもう少しレンジは広いと思いますが。
シリーズのローエンドということで、唯一私がデジタルケーブルの基準としているaudio-technica AT-RD5000/1.0よりも安価な製品となるわけですが、オーディオ的な性能の高さが特徴のAT-RD5000/1.0に対して、レンジを欲張らず音楽の美味しい部分にフォーカスするのがKS-DIGITAL-001/MR.IIということになりそうです。
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購入金額
16,500円
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購入日
2024年06月27日
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購入場所
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