先日製品化前の最終試作版をお預かりしてレビューを書いた、同軸デジタルケーブル、KS-DIGITAL-001/EVO.I。
試聴を終えて返却しようとしていたところで、KS-Remasta主催の柄沢さんから連絡をいただきました。私のレビューをご覧になって「まだ改良の余地があるということに気付いた。それを盛り込んだ試作版を送るので、従来の試作品と比較してみて欲しい」というのです。
今までシェルリード線では同一素材で磨きが違うものの違いを聴き取ったり、使っているハンダだけが違う製品を聴き比べて「ハンダの音」を聴き比べたりはしましたが、全く同じ素材、仕上げで構造の僅かな差を聴き取るというのはさすがにかなりの難関です。しかもアナログケーブルではありませんから通す信号はS/PDIF準拠のデジタル信号です。これは正直プロの方に依頼した方がとも思ったのですが、私自身「このハンダを使ったらどうなるか」など色々と首を突っ込んでしまいましたので、ここはやらざるを得ないな、と。
というわけで、早速新構造を採用した試聴機が5本も届いてしまいました…。
例によってハンダ以外の違いはありませんので、外見上は型番ラベルを見ないと差は判別できません。今回は前回聴いた2機種の内の上位モデル、KS-DIGITAL-001/EVO.Iの改良型を試聴します。
改良前のモデルとの区別も付きませんので、うっかり混ぜてしまわないように注意が必要です。
きちんと向上が見られるのが凄いところ
今回は色々試聴する製品を混ぜてしまうと自分自身パニックに陥りそうですので、新旧の2本のみで比較します。
改良前のモデルの端子内はこのような状態でした。
ちょっと写真が見づらいので差がわかるかどうか…。
今回の端子内はこのようになっています。
内部の導体側がより綺麗に仕上がるようになったこと、シールド回りの加工に差があるというところでしょうか。どうやらこのシールド側の加工が今回のポイントらしいですが…。
早速音を聴いてみましょう。試聴法は前回と同様(というか、実は前回の試聴後KS-DIGITAL-001/EVO.Iはそのまま使っていました)で、FOSTEX HP-A8とCHORD Hugoの間の接続に利用して、Hugoのヘッドフォン出力で聴き比べるという形です。ソースも「Balluchon / 小川理子」(78回転盤)から起こした24bit/192kHz WAVと「TOTO IV / TOTO」(Friday Music盤)から起こした24bit/88.2KHz WAVを使います。
注)Hugoは現状レビュー未掲載です。
まずはTOTO IVから「It's A Feeling」を聴いたのですが、何と違いはありました。具体的にはハイハットのタッチがより鮮明になり、若干の濁りのような部分がなくなりました。すぐにつなぎ替えて聴き比べて、やっと判る程度の僅かな差ではありますが…。またベースラインの明瞭度も若干向上しているように感じられます。「Rosanna」では、冒頭のジェフ・ポーカロのドラムで力感が少しだけ増した印象があります
続いて「Balluchon」から「Smile」を聴くと、違いはピアノの左手方向に感じられます。ベースラインとピアノの低い音の分離が鮮明になり、分解能がより向上しているということが実感できるのです、ベースやドラム、ピアノの音は頭の部分がより鋭く表現されるようになったのか、全ての楽器でタッチがよりはっきりとしてきます。
基本的な音色の傾向は新旧で特に変わってはいないのですが、改良後は分解能の向上と付帯音の低減は明らかに感じ取ることが出来ます。オーディオ的な性能が向上したということでしょう。
見比べると確かに加工の違いはあるのですが、それで音質が向上するということがなかなか理解できない感覚です。その違いが音質に寄与すると判断できる辺りがケーブル造りのプロということなのでしょう。
このケーブルの線材はさほど高価なものではない、75Ωのアンテナ線ということです。ごくありふれた2~300円/m程度製品で、このシリーズの製造・開発のために探して大量に確保したものなのだそうです。75Ωのデジタルケーブルとして使うのに理想的なものだったというのですが、この辺りも私には正直あまり理解できません。ただ、それが正しいのかどうかはこのケーブルの音が十分に物語ってくれています。
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購入金額
55,000円
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購入日
2024年06月24日
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購入場所
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