レビューメディア「ジグソー」

細かい難はあるが音質的には今でも戦える

先日仕事で東京に行った際に、時間が余ったのでeイヤホン秋葉原店に久々に足を運びました。天気の悪い平日午後ということで店内は閑散としていましたので、じっくりと中古フロアを見ていると、ジャンク品と書かれたCOLORFLY U6というDAPを見つけました。余談ですが、COLORFLYはPCパーツメーカーであるColorfulのオーディオ向けサブブランドです。現在は公式サイトもColorfulに統合されているようです。

 

状態の説明を読むと、USBで電源を供給すれば普通に動くものの、給電しないと一切動かないというものでした。当然ここで疑われるのはバッテリーの不良です。ただ、給電を止めた瞬間に電源が落ちるというほど劣化しているのであればバッテリーが膨張するなどしていそうなものですが、頼んで外装だけ状態を確認させていただいたところ、そのような様子はありません。

 

ここで考えられる理由は幾つかありますが、私は直感的に「内部でバッテリーのフレキケーブルが外れているだけでは?」と思ったわけです。それなら直すのは簡単ですから、早速購入してきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外装は汚れこそあるものの傷等はほぼ無く良好です。

 

早速改めて状態を確認してみると、給電中は全く動作に異常はありませんが、暫く使い続けてもUSBケーブルを抜いた瞬間に電源が落ちてしまいます。こうなるとやはりバッテリーからの給電が全く無いと見るのが自然でしょう。ディスプレイ上バッテリー残量は100%表示ですが、充電状態は続いているのも妙です。こうなると分解して様子を見るしかありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外サイトを含めてこのモデルの分解情報は一切紹介されていませんでしたのでここで解説しておきますが、本体底面にビスがありますので、まずこのビス(2本)を外します。

 

次にバックパネルの縁(角付近)にオープナー等を突っ込んで隙間を作ります。私の場合はiFixItのキットに入っていたヘラを使いました。

 

 

 

 

 

 

 

隙間からカード上のものを突っ込み、横に動かしていくとバックパネルを固定している爪が少しずつ外れていきますので、折らないように注意しながら全ての爪を外せばバックパネル(バッテリーパック貼付済)が外れます。

 

さて、私が分解した時点で一切の引っかかりが無くバックパネルが外れたわけで、バッテリーが接続されていなかったのはほぼ間違いない無いでしょう。本体側基板の中央付近にバッテリーコネクターが存在しているのですが、これが非常に接続しにくく、しかも外れやすいのです。なんでこんな形状にしたのか正直理解できません。

 

結構苦労しましたが何とか接続を終え、バックパネルを開けたままUSBケーブルを接続すると、これまでと挙動が変わります。これまではいきなり本体が起動してOSを読み込んでいたのですが、バッテリーを接続した後はUSBケーブルを接続すると充電が始まりました。どう考えてもこれが正しい動作でしょう。そこでバッテリーが外れないように慎重に組み立てると、それ以降はごく普通に動作しています。私の見立てが正しかったようです。

 

 

 

 

▲バッテリー残量が「38%」と正しく表示されるように
▲バッテリー残量が「38%」と正しく表示されるように

 

 

更新: 2024/05/16
総評

10万円以下クラスとしては現時点でもなかなか良いのでは

折角動くようになったので、音を確かめてみましょう。もっとも私自身この製品は以前何度か試聴していて、そこそこ良いものの当時のメインイヤフォンであった64AUDIO U4で聴く限りHiBy R6Pro ALには勝てないかなという感覚でした。しかし当時とは使うイヤフォンが代わっていますので、また印象も変わるのではないかと、64AUDIO U6t、qdc WHITE TIGERを使って改めて聴いてみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずU6tの方ですが、相性としてはあまり良くないかも知れません。U6tをちょっと駆動し切れていない感覚があり、音場が十分に広がりませんし、スネアドラムの帯域のレスポンスが鈍く、低域方向の迫力感とのミスマッチが目立ちます。ソースとしてはJ-POP、アニソン系が比較的好相性でしょうか。「stars we chase / ミア・テイラー(cv.内田秀)」辺りは思った以上に良かったです。ただ「Born For This Moment / Chicago」辺りはヴォーカルの質感もイマイチで、SOULNOTE風にいえば音が死んでいます。

 

そこでイヤフォンをWHITE TIGERに替えてみると印象が随分変わります。キレがもう一歩あってもと思うのはU6tと同様なのですが、WHITE TIGERの持ち味である音場の広さがこの製品の弱点を補い、なかなか良いバランスで鳴りはじめます。U6tと比べればヴォーカルの生気もそこそこ感じられますし、バスドラムの重心の低さは価格帯を超えたものでしょう。

 

U6はバランス接続に対応しているのですが、採用している端子が3.5mm Proという微妙な形状で、対応ケーブルが無いため今回の試聴は全てシングルエンドなのですが、U6の構成上バランス接続が前提となった設計であるのは明らかで、まだ本領を発揮しているとは言いがたいものがあります。このモデルを新品で買えば4.4mm5極および2.5mm4極との変換ケーブルが付属してくるようですので、そのケーブルを入手して聴いてみないといけないでしょう。Amazonで売っている自称3.5mm Pro対応の変換ケーブルでは正しく鳴りませんでした。

 

 

音質面では価格を考えれば十分納得は出来るのですが、細かい部分の詰めの甘さは気になります。特に気になるのが曲間に必ず「プツッ」とノイズが入ることで、単体DAPとしてはちょっとお粗末かな、と。またプレイヤーソフトがHiBy Musicの劣化版のような出来(デザインからするとHiByで作られているのかも)で、HiBy MusicやCayin Musicでごく普通に読めるファイルの一部が読めなかったりしますし、読めないファイルが発生した後挙動が不安定となるのもいただけないところです。

 

今時本格的なDAPのボトムラインが6~7万円クラスまで上がってしまったということを考えれば、8~9万円のこの製品の音は十分高水準です。後はこの微妙な完成度を許容できるのかというところでしょう。

  • 購入金額

    10,000円

  • 購入日

    2024年05月13日

  • 購入場所

    eイヤホン 秋葉原店

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