PC関連製品やオーディオ機器の代理店としてお馴染みのアユートが直販サイト「アキハバラe市場」で昨年末に販売した、「アキハバラe市場 ガチャ袋 イヤホン 12,100円」で引き当てたのが本製品でした。
このガチャ袋は計300個販売され、中身は以下のものだったようです。(正式に公表はされていないのでユーザー報告等からの推定)同一製品はカラーバリエーションの違いとのことです。
・1DDイヤホン 60袋 (qdc SUPERIOR)
・1DDイヤホン 75袋 (qdc SUPERIOR)
・1DDイヤホン 60袋 (qdc SUPERIOR)
・国産イヤホン 85袋 (Maestraudio MA910SR)
・国産イヤホン 5袋 (Maestraudio MA910SR)
・クアッドイヤホン 8袋 (Astell&Kern AK ZERO2)
・先駆者イヤホン 4袋 (Campfire Audio × Astell&Kern PATHFINDER)
・白虎イヤホン 2袋 (qdc WHITE TIGER)
・ドイツコラボイヤホン 1袋 (Vision Ears × Astell&Kern AURA)
最高級となるのは「ドイツコラボイヤホン」(AURA)ですが、qdc WHITE TIGERはそれに次ぐランクであり、直販価格198,000円という製品で、私のこれまでに所有したイヤフォンの中でも最高額ということになります。
正直にいえば自分がさほど良いものを引けるとは思っておらず、qdc SUPERIORを買ってしばらく試してみるかという程度の動機で購入しました。金額的に少し高いMaestraudio MA910SRよりはSUPERIORが良いな、という程度の話で…。
配達された箱を受け取った時に「SUPERIORやMA910SRの箱にしては重いな」とは思ったのですが、まさかWHITE TIGERが入っているとは、と素直に驚きました。
手に持って重さを感じた理由は、この竹製のケースの重みでした。イヤフォン本体は一見大ぶりなシェルですが案外軽いのです。
蓋を開け冊子類を取り出すと、目に入るのはqdcロゴ付きの布製セミハードキャリングケースと黒い紙製小箱、4.4mmプラグと2.5mmプラグが並んでいるところです。
これまでに購入したqdc製品と同様に、出荷検査票も入っています。
布製セミハードキャリングケースを開けると、ケーブルと3.5mmプラグ装着済みの状態でWHITE TIGER本体が収められています。
付属品は交換用イヤーピースとクリーニングツール、6.3mm変換プラグ、航空機アダプターとなります。
周波数レンジの広さは圧倒的
WHITE TIGERは元々レギュラーモデルとして存在しているTIGERのチューニングや素材を変更した、日本市場向けの限定生産モデルとなります。チタンシェルを採用するTIGERに対して、WHITE TIGERは樹脂シェル+マイカフェイスプレートという構成で、中身のドライバーは同等の構成でありながら価格はTIGER(発売時点価格269,980円)に対してWHITE TIGERは198,000円と大きく下げられています。
ドライバー構成は前述の通りTIGERと同一でBA×6基+EST(静電型)×2基の計8ドライバー構成となります。
周波数範囲は10 - 70,000Hzと極めて広範囲です。特性グラフで確認しても35,000Hz辺りまでは比較的フラットに伸びていて、BAドライバーだけのイヤフォンではなかなかあり得ないほどの広帯域を獲得しています。
一般的なqdc製品はリケーブル対応ですが、qdc/(旧)UEカスタムと言われる端子形状のものです。私が以前から所有しているqdc製品(3SH SEとTrES)も同様ですし、本製品のオリジナルモデルであるTIGERも同様です。
しかし本製品は日本市場専用モデルということで代理店側の要望が強かったためか、普及率の高いCIEM 2Pin形状となっていて、リケーブルの選択肢が広く、私が普段使っているイヤフォン(64AUDIO U4やUnique Melody MAVERICK等)とケーブルの互換性があるのが有難いところです。TIGERよりはコストは引き下げられていますが、それによるネガティブな要素は特に感じられません。
なお、添付ケーブルはイヤフォン側の端子形状は異なるものの、TIGER添付品と同様に3in1プラグを採用していて、先端部分を着脱することで1本で4.4mm5極バランス、2.5mm4極バランス、3.5mmシングルエンドに対応します。導体は純銅と純銀を組み合わせていると説明されていますが、それ以上の詳細は不明です。
音場が広く特定部分の強調感が無いことが好ましい
それでは、今まで使ってきたqdc製品である3SH SE、TrESと比較しながら音質を確認してみましょう。
DAPは私のメイン機であるCayin N6ii/R01を組み合わせます。
まず3SH SEはいかにもBAドライバー構成らしく繊細な音ではありますが、反面力強さや深みには欠ける傾向があります。
写真では「ICONIC / David Garrett」を再生していますが、ヴァイオリンの弦のこすれなどは細かく描写する一方で、少し主旋律の音に弱さがあります。また、「Born For This Moment / Chicago」などではハイハットのタッチなどはとても細かく描写するのですが、特に高域方向の音色に少し固有の癖が感じられます。価格帯としてはWHITE TIGERの1/3程度の製品ですが、ソースによっては十分楽しめる音というべきでしょうか。あまりオールラウンドという感じではありません。
次にTrESですが、実はこれも日本市場専用の限定モデルとして発売された製品です。まだqdcの代理店がミックスウェーブだった時代の製品ですが、レギュラーモデルのFusionのチューニングを変更したモデルで、Fusion/TrESはqdcとしては初のダイナミックドライバー採用ハイブリッド型イヤフォンでした。この製品については結構細かくレビューで記載していますが、とにかく「スッキリ、サッパリ、ハッキリ」という音です。
低域のレスポンスは良好ですし、高域方向もqdcらしく緻密でありながら固有の個性も弱く、その意味ではとても良く出来た製品です。ただ、とにかく間接音のような曖昧な音を描写しないイヤフォンでもあります。厳密には以前Cayin製の弩級DAP、N30LEを試聴した時にTrESを組み合わせたところ間接音もそれなりには鳴っていましたので、恐ろしく鳴らすのが難しいイヤフォンなのかも知れません。ロックやJ-Pop・アニソンを小気味よく鳴らすには良いのですが、例えば「Ten Summoner's Tales / Sting」などは全く面白みがありません。その意味ではこれもソースを選ぶイヤフォンといえます。
そして本題のWHITE TIGERですが、オリジナルモデルのTIGERはかなり主張の強い音だった記憶があるのですが、こちらは一聴すると地味にすら聞こえるほど強調感がありません。低域方向はさすがに20万円近いイヤフォンだけに深みもそこそこありますし、適度に間接音も乗ってきます。ヴォーカルや弦楽器の質感は手持ちのイヤフォンの中でもトップクラスに良好です。高域方向は一聴するとクッキリとしたTrESよりは描写が甘いように感じられるのですが、実は当たりこそソフトなもののかなり緻密に表現していることが判ります。
写真では「The Nightfly / Donald Fagen」を再生していますが、このようにオーディオ的に整った音の楽曲はきちんと正しく描写してみせる一方、「ICONIC / David Garrett」ではさすがに3SH SEとは格が違う質感でヴァイオリンを鳴らしてみせます。私がここまで聴いているソースは全てアナログレコードから起こしたハイレゾWAVファイルなのですが、アナログならではの質感は今回聴いた3モデルの中ではWHITE TIGERがずば抜けています。
WHITE TIGERの音として大きな特徴といえるのは、カナル型イヤフォンとしてはかなり広い音場を構築するのですが、その構築された空間の密度も十分に濃いということです。TrESなどはもう少し濃さがあってもと思うことが多いのですが、WHITE TIGERは濃密さを十分保った上での広い音場であることが好印象に繋がります。
実はWHITE TIGERはまだ10時間も使っておらずドライバーがほぐれきってはいないはずですが、それでも殆どの点でこれまで使っていた2モデルを上回るだけの魅力を発揮してくれました。現時点では主に弦楽器を鳴らした時の中域に僅かな籠もりがあるのですが、これはエージングが進むと共にある程度解消してくれるでしょう。最初の20分ほどは音が全く前に出てこなかったのでちょっと不安だったのですが、そこからは鳴らす度に良くなっていっている印象です。
福袋価格なので満足感しかない
本来の20万円弱という価格帯の製品としても、十分に満足は出来ます。個人的にはベースモデルでより高価なTIGERよりもこちらの方が好みの音です。
ただ、私が予算20万円でイヤフォン専門店に足を運んで、この製品を最終的に選ぶかと言われると、そこまでの自信はありません。私にとってはその価格帯は64AUDIO U6t/U4s、THIEAUDIO Monarch MKII、FAUDIO Mezzoなど、試聴してかなり満足度が高かった製品がひしめいていて、WHITE TIGERもそれらのライバルとして並び立つのは間違いないものの、最終的な選択肢となるかはなかなか難しいところなのです。
その点今回は福袋価格で入手できてしまいましたので、純粋に「自分が新しく買ったイヤフォン」として素晴らしく高い満足度が得られました。私自身これまで福袋系の買い物でここまでの当たりを引いたことが無く、戸惑いながら試聴していた訳で、音に没入しなければきちんとレビューを書ける自信がありませんでした。
今年は10円ジャンク完動品ディスプレイに続き、例年に無く良い引きですので、この調子が持続してくれることを祈ります。
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購入金額
12,100円
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購入日
2024年01月20日
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購入場所
アキハバラe市場 ガチャ袋 イヤホン 12,100円 【アキハバラe市場 2024福袋】
harmankardonさん
01/22
私は持った瞬間,軽く感じました.
jive9821さん
01/23
ありがとうございます。
2年前のガチャで異様に重い箱だったので、acoustuneの
ハードケース付きなんだろうなと思い、HS1697Tiと
HS1677SSのどちらかと当たりをつけたところ、個人的に
ハズレだったHS1677SSだったということがありましたので
結構箱だけで中身が想像出来てしまうようになりました。
今回初めて当たりを引けましたが、これで今年もハズレ
だったら、次に買うことはもうなかったと思います…。