ここのところ、嵌合の確実さと、つけ外しのしやすさを両立したイヤホン⇔ケーブル接続規格、Pentaconn earに関して、最初に入手したCIEM=アルファ☆デシベルのmiro BLEST
を皮切りに、
・「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス仕様の基準ケーブル」=onsoのiect_03
・BLEST購入時に長時間比較して悩んだ末に諦め、その後買い増した=日本ディックスのNox
・仕上がりの美しい、OFC(102SSC)× 4N純銀線の手作りケーブル=えんりオリジナルケーブル
とケーブルばかり3本紹介してきたが、BLEST購入時に添付品として選択したWistariaと合わせて、イヤホン/IEM本体が1つ、ケーブルが4本というケーブル超過剰状態...ではない。
実はもう一つPentaconn earコネクタ装備のイヤホンを持っている(ので、本体:ケーブル比率は2:4)。
それが、G4 イヤホンのARAYA +DNA1。
このG4 イヤホン、イヤホンの個人ビルダーなのだが、非常に評価が高い。...が、なにせ情報が少ない。検索すると、かつて楽天に出店していた形跡が見えるのだが、今は閉店状態(少なくとも半年以上ずっと店舗改装中の表示)。
現在は、X(旧Twitter)で、受注開始時期を告知⇒受注開始時刻以降にXのDM送付⇒予定数オーダー来たところで受注〆切⇒製作⇒バックオーダーがなくなったら再び受注開始...という完全受注生産のサイクルらしい。
2023年11月現在のイヤホンラインアップは、
・フラッグシップの4BA機:ARAYA
・ARAYAのDNAを継承しシングルBAにVSC(音響用空間)を加えて表現した:ARAYA +DNA1
・ARAYA +DNA1と同じドライバ構成ながら、より低域を重視した新チューニング:Dracula
の3種。
このうち、ARAYAがフラッグシップで、その音をVSCと呼ばれる機構を加えることで、シングルBAで目指したのがARAYA +DNA1。Draculaは直前の受付回からの新機種で、ARAYA +DNA1と同じドライバ構成。使っている樹脂やホールの数などを変更して、低域増強したものらしい。
このうち、ARAYA +DNA1が、VSCと呼ばれる音響用空間を設けることで、1BAの素直さ、濁りのない高音の美しさと、不足のない低域を両立していて評価が高いと聞いていて、他のシングルBA機の試聴では、「素直な音色で点音源」という「1BAの良さ」は評価しながらも、上下が足りず音量も稼げないものが多いと、「1BA機の物足りなさ」も感じていた自分にとっては興味の中心。
春ごろから、そんなG4 イヤホンのARAYA +DNA1のウワサやレビューを見て、「狙って」いたわけ。
しかし、なかなかゲートがオープンにならない(受注の開始コールが流れない)。
数ヶ月待ったところ、やっと受注再開の案内が。
G4 イヤホンは、ヘッドホン祭などいくつかのイヤホン系イベントで試聴が出来るようなので、参加のチャンスをうかがっていたが、その時点では参加が叶っておらず、ネットのレビューだけの知識しかない。どうするか迷ったが、結局無試聴で突撃!
前回の受注時には、受注開始後1分ほどで予定数に達したと言うことなので、時計とにらめっこしてスタンバイ⇒開始時刻1秒後にDM瞬速送付!⇒無事注文権げっとぉぉぉぉぉ!当初「受注予定数3機種で50セット」の予定が、なんと受注開始30秒ほどで予定数超過、結局1分間に送られたDMに関しては製作数を増やして対応するということにしたらしい(このときは60秒で78件のDMが殺到したらしい)。
SNSで確認すると、その時のオーダーを今も順次製作を進めてさばいている感じ。
cybercatは15秒以内にはDM送付完了していたし、翌日には仕様決め(カラーとコネクタ種類、同梱されるイヤピースの種類とサイズ)と代金振込が完了したので、早め目の受付だったようだが、それでも受注〆切後2ヶ月後の受領となった(たぶん78件中30番目以内←G4 イヤホンでは各オーダーの製作過程の報告が、下記のようにX(Twitter)であるので、それをカウントしてみた)。
購入分の製作途中画像①:型取りした直後。ここから研磨スタート
購入分の製作途中画像②:研磨後ドライバーや端子が組み込まれた。まだ「蓋」はされてない
商品内容としては、ケーブルレスなので、本体と自分が指定したイヤピースが2対がハードケースに入って届く(イヤピの1種は装着済)。
商品全景(ケースの「G4 audio」の下はシリアルっぽいので加工済)
本体は、カラーを「Super Transparent」とも別称される「クリア」にしたので、非常に美しい。コンパクトなボディに一基のBAユニットと、リング状の「VSC」。このVSCはVirtual Sound Chamberと呼ばれる「音響用空間」とのこと。音を響かせて、1BA以上の力強さを得る試みのよう。
左右の区別の懸念を伝えたら、右側ユニットに赤ドットを入れてくれた
ステム部分には、BAからつながる穴と、VSCからつながる穴、そしてハウジング内に通じているらしいそれよりもはるかに細い穴が2つ開いていてとても精巧(なので、比較的開口部の大きなイヤピースの方が「合う」のではなかろうか)。
ステム部分。一番大きいのがBA、次のがVSCに繋がる。一番細い穴はドリルでの手開けらしい。
ハウジングの造りは、透明度が高くて非常に美しく、濁りや歪みなど一切ない。さすが「Super Transparent」。片側5球の金属球が埋め込まれていたり、耳珠の逆側の耳介に一番接する部分にはいくつかの穴というか凹みがあったりして形状・意匠はかなり複雑。
装着時外側になる部分には大小計5つの金属球があしらわれている。
BAユニットは刻印部が内側にあり、機種名は確認できないが、以前Draculaのドライバー説明の際に、「BAは+DNA1と同じKnowles ED-29689」とあったので、きっとKnowles製の定番フルレンジBAドライバー「ED-29689」。
BAドライバーは型番刻印が見えないが、情報からはKnowles ED-29689と推理できる。
イヤピースは特定のものが添付されるのではなく、いくつかの選択肢の中から2種類選択し、サイズも指定して添付品を決めるという感じ。その選択肢も、かつての情報と比較すると不変ではないようで、より「合う」と思われるものを見つけた際に入れ替えているのか、供給状態で変更しているのかは不明。
ただ、数種のイヤピースを提示されて、その中からすぐ自分に適した/もしくは/購入品に合うと思われる品目とサイズを指定できるのは、かなりイヤピースに詳しい「通」なのでは??
つか、個人製作のハンドメイドイヤホンを通販で購入している時点で、沼の住民なので、そのあたりの知識はあるのが前提なのかな。
自分の購入時(2023年7月23日受付の製造ロット)では、
・1. Fiio HS18(S,M,L)
・2. Yinyoo TRI 角笛(Clarion)(S,M,L)
・3. Divinus Velvet(S,MS,M,ML,L)
・4. 日本ディックス コレイル(COREIR)(S,MS,M,L)
の選択肢があり、この中から2種選択して添付してもらう(なぜか、同じメーカーだけを2ペアは不可)。
この中では、Fiio HS18は未体験だったが、製品画像で確認すると「傘」の形状が、球状もしくはドーム状よりは上が絞られた円錐状に近く、このタイプのイヤピースの場合、「入れづらく/滑りやすく/落ちやすい」自分の耳道の形=極めて細い耳道、耳の中が湿っていないカラ耳、下向き開口という状態では、押し出されて滑り落ちる可能性があったことで避けた。Yinyoo TRI 角笛(Clarion)は持っているので、それを使えばよいのでそれも除いた結果、何かと話題になっている、音導管に金属コアを内蔵して、それにより高音のヌケと全域の粒立ちがよくなるという日本ディックス コレイル(COREIR)のSと、逆に未経験かつ全く情報がなかったDivinus VelvetのSを選択した(こちらの形状は、Fiio HS18と違って球状だったし)。
選択したイヤピは、日本ディックスのコレイル(COREIR)のSサイズと...
...もう一つが、Divinus VelvetのSサイズ。結構形状と装着位置が違う。
なお頭に書いた通り、ARAYA +DNA1のケーブル側コネクタはPentaconn earコネクタを選択してある。
※他に、2ピン(0.78mm埋め込み)とMMCXが選択できる。
これに、「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス仕様の基準ケーブル」=onsoのiect_03
をつけて、80時間ほどエイジングした(世の情報によると、本品バーンイン不要ともされているが、今までと条件を合わせた)。
ARAYA +DNA1はPentaconn ear(標準)なので同(異形)のiect_03を繋ぐと隙間が出来る
音質に関しては、現在のメインDAP=Shanling M3X Limited Edition
のバランスアウトに直結して、いつもの曲で評価してみた。
※セッティング:ゲイン=Low、DACモード=Turbo(DUAL DAC)、EQ=スルー
すべての曲で、ARAYA +DNA1の添付品として選んだ2種のイヤピ、COREIRとVelvetで評価した。
まず、高音質録音のハイレゾ曲(PCM24bit/96kH)で、3ピースジャズで音数も少なく、各楽器の描き出し方でイヤホン/IEMの得意不得意が把握しやすい吉田賢一ピアノトリオの「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」をアルバム“STARDUST”から。
VCS機構付きとは言うものの、1BAのARAYA +DNA1の音質は高域優勢なのだが、COREIRは金属コアの影響か、非常にシンバルが立つ。シズル感も強く、とても広がりがあり、トップシンバルのレガートが気持ちよい。スナッピーの反応も良く、スリリング。ピアノの右手の音も立っていて、ゴキゲン。Velvetにするともう少し落ち着き、スムーズな感じに。やはりARAYA +DNA1の音色傾向で、ベース控えめでシンバルとピアノの右手側にフォーカスというのは変わらないが、シンバルは少しアタックのキツさが緩まり、響きや広がりが大きくなる。スネアもスナッピーの音より、リムショットの芯が出てくる。ベースの低域自体はどちらのイヤピでもあまり変わらないのだが、高域がよりダイレクトなCOREIRの方が、アタック部分が強調されてベースの存在感が増すのは面白いところ。
同じく高音質ハイレゾソース(PCM24bit/96kHz)で、グッと現代的な音造りのJ-POP、宇多田ヒカルの「First Love」を“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”から。
まず、いずれのイヤピースを使っても、この曲とARAYA +DNA1の相性は、素晴らしくいい。ものすごくいい(大事なことなので2回)。ARAYA +DNA1の真骨頂である高域の美しさで、アコギとピアノ、ストリングスの美しい調べが、震えるような微ハスキーなヒカルのヴォーカルを取り巻いているが、低域に関しても、元々エレキベースではなく打ち込みのベース音で、少々過剰気味に突っ込んでいるバランスのミックスのため、表現がややのっぺりとしがちのイヤホン/IEMが多い中、「薄く」はなく、グルーヴィな低音はしっかりとありながらも、決して支配的ではない、という絶妙なバランスで、すごくいい。その上で、COREIRはアコースティックギターの響きが良く、特に1st Chorus ⇒ 2nd verseに移るときの、ブリッジ側をシャランと鳴らした音色がとても清らか。対するVelvetはそこまで「清らかさ」はないが、少し湿度感が上がって、泣きそうな声で歌うヒカルの声がドンピシャリ。このARAYA +DNA1+Velvetという組み合わせは、この曲を鑑賞するために創られたのかも知れない。それくらい、「合う」。
同じ女声バラード、女性声優洲崎綾(あやちゃん)の歌う「空」は、メモリアルフォトブック“Campus”から。
同じ女声バラードなのに、ピアノとストリングス、アコースティックギターは共通も、他はシンプルな「First Love」に対して、エレキギターとシンセのシーケンスフレーズなどもある「空」という音の構成や、ヴォーカルに突っ込んでいる熱量、ミックスのレンジの差などで、両方の曲が美味しいイヤホン/IEMは少ないが、ARAYA +DNA1との相性は、盛り上がるサビでもあやちゃんのヴォーカルが埋もれず、こちらの曲も珍しく良い。COREIRでは、右chのアコースティークギターの調べが美しく、サビでのストリングスの音も美しい。あやちゃんの表現も素晴らしく、サビで一段喉が開く感じなのがリアル。Velvetはやや柔らかめになるので、優しさは増すが、わずかにあやちゃんのヴォーカルが引っ込み気味になる(...と言っても、相性が悪いイヤホン/IEMに比べるとはるかに「出ている」のだが)ので、サビになるとややバランスが悪くなる。より「合う」のは、こっちはCOREIRとの組み合わせか。
デジタルな打ち込み曲は、ソシャゲーアイドルマスターシンデレラガールズの女子大生アイドル新田美波(CVあやちゃん)の初期持ち歌「ヴィーナスシンドローム」。
このラウドで音飽和系の曲、1BAのARAYA +DNA1で意外に破綻しない...というか、むしろ合ってるまである。この曲4つ打ち、時に8分音符で鳴らされるクリップ気味まで突っ込んだキック音、減衰系でなく圧が強いシンベなどで下がガッツリ埋められ、ともすればあやちゃんのヴォーカルが掻き消されるのだが、モリモリな下の音をいい感じでいなしている。かといって、下がなくってペタペタしたキックの音ではなく、ちゃんとボディがあるビート。COREIRを使うと、スピード感があり、タイトなリズム。左右に駆け回るSEも煌びやかで派手。だけど、あやちゃんの声は掻き消されずいい感じ。Velvetは刺激が少し減じるのが、さらに耳には優しいが、ちょっと曲調イメージからは離れるか。COREIRの方が、ビート感とヴォーカルの明瞭さがより両立する珍しい組み合わせ。
ビートのキレが大切なジャパニーズフュージョンは、T-SQUAREの「RADIO STAR」を、ゲストベーシストにJINOこと日野賢二を迎えたセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”から。
ベーシストがゲストなので、当然ベースフィーチャリングで、低音域がモリモリのため、1BA機には不利な楽曲。COREIRで再生すると、VCSの効果なのか、量や圧こそないものの、さほどに不足感を感じない低音で驚く。当然上はキレッキレでスピード感溢れ、河野啓三の流れるようなピアノソロも強弱が明確で、ダイナミック。Velvetはアタックの角が取れる分、COREIRよりもむしろベースは目立たなくなる。ピアノソロはややまろやかになるが、響きは増しており、テクニックをしゃぶり尽くすCOREIRか、全体を味わうVelvetかという感じ。
古典ロックの「Hotel California」はEaglesの同名アルバム(24金蒸着盤)から。
高音域が煌びやかで音が通るARAYA +DNA1では、Velvetでも充分アコースティックギターのカッティングが「シャリーン」と響き、現代的味付け。この曲、ギターの多重録音が耳に残るが、意外にサウンドのキモとなっているのがベースで、先日惜しくも旅立った故Randy Meisnerの、伸ばす音と止める音の切り分けで前進力を出している、大きめ収録のベースプレイがやや硬い感じ。COREIRに換えると12弦ギターのアルペジオや、イントロのシンバル、右ch端のエレキギターのカッティングなどは、さらにキレと響きを増して、その部分だけに着目(着耳?)すると美しいのだが、Randyのベースはさらにアタックが強調され、ちょっと70年代ロックと言うには現代的で、キレが良すぎる感じ。いずれも「悪く」はないが、複数イヤホンがあるなら、あえてARAYA +DNA1を選ばなくてもよいかなぁ。
ゲーム艦これの初期BGM、戦闘場面で使われたという勇壮な「鉄底海峡の死闘」を交響アクティブNEETsのオーケストラアレンジ集“艦隊フィルハーモニー交響楽団”から。
COREIRで聴くと、シンバル、ベル、スネア、金管高音部隊のスピードと破壊力が強く、低音組の量感はさほどではないものの、勇壮さはかなり強い。壮大さは若干譲るも、前に出る力強さで、悪くはない...が、音量によっては若干イタ目の音もある。Velvetにすると、かなり角が取れる。低音の量そのものはさほどに増えているわけではないのだが、聴こえ方が「速度が落ちる」感じがするので、よりふくよかになって塊感は大きくなる感じ。ただ、刺激は少なくなくなるので、曲を堪能するには少々音量を上げる方がベター。
最近配信音源で多い、比較的ピットレートが高い(269kbps)mp3楽曲は、YOASOBIやももいろクローバーZのサポートベーシストとしてひっぱのだこの、やまもとひかるの2nd配信シングル「NOISE」。
中高域に説得力のあるARAYA +DNA1では、このときはまだ少々線の細いひかるちゃんのヴォーカルはよく聴こえるが、ベースの方はスラップや高音弦のプレイは「通る」ものの、下は物足りない傾向。イヤピ別では、低音成分自体はVelvetの方が多いものの、ベースプレイを味わうための絶対量にはどのみち足りないので、ここはCOREIRでキレの良いスラッププレイを味わいたい。COREIRの通る音で、ピアノやギター、ハイハットが「抜ける」のは気持ちよいし。
なお、2つのイヤピを試してみて、自分にとって「装着感」が良いのは圧倒的にCOREIR。COREIRには金属コアを内蔵しているため、「イヤピが奥まで入らない」との事前アナウンスがあったが、実はコレが自分取っては大正解。自分の耳穴は細くて乾いているので、「(細く)長いステムに小さなイヤピをつけて奥まで押し込む」というのが一番良いのだが、「ステムの奥までイヤピが押し込めず」「イヤピ内部に硬い金属コアがある」というCOREIRの構造とイヤホンへの装着状態が、ステム延長効果があるようで、耳奥まで入ってしっかり留まる。
また、傘部の材質はシリコンのようだが、一部のシリコンイヤピにある、粉を吹いたようなサラサラシリコンではなく、ちょっとペタっとした材質。それが乾いた耳道に耳奥でもペタっと貼り付き動かない。
Divinus Velvetの装着感は、悪くはないが、本来表面はエンボス加工が施されていて「つるつる」というのがウリのイヤピ。実際には「粉吹きシリコンイヤピ」よりは抵抗があって、そこまで据わりが悪いわけではないが、COREIRと違ってイヤピをステム奥まで押し込めてしまうのもあって、ARAYA +DNA1のハウジングがイヤピと離れず(つまりステムが短い感じ)、耳奥まで突っ込むのにやや苦労する。
なお、音質とは関係ないが、今回試聴のためイヤピの頻回脱着をしていて感じたこととして、Velvetは脱着の繰り返しは、かなりのストレス。イヤピのステムとの嵌合部が柔らかく、ARAYA +DNA1のステムも細くはないので(実測φ6mm)、相当に嵌めづらい。さすがに今回の試聴時ほど頻繁に脱着することは、通常使用では考えづらいとは言うものの、交換時の忍耐は覚悟する必要がある。
全体として、自分のシングルドライバー機、特に1BAイヤホンの印象を覆すに十分な実力。特にさほどに低音スキーではない自分にとっては、1BAで不得意そうな低域は、多くの楽曲で「必要最低限だが決して不足ではない」という領域まで達していて、それでいて中高音域の濁らない美しさは出色なので、とても楽しく音楽が聴けるイヤホン。
特徴としては
◎痛くはない程度に丁寧に調教された目立つ高音
◎女性ヴォーカルや、アルト~ソプラノサックス、ピアノなどの主旋律が「立つ」音色
◎イヤピをCOREIRにすると、スピード感も加わった美しい中高域が味わえる
◎イヤピにVelvetを選んだ場合は、万能ではないが、湿度感が欲しい場合、超リアル
◎ドライバーのつながり部分やフォーカスの甘さを感じないのは、シングルBAならでは
◎1BAなのに意外なほど音量がとれ、ポタアン必須でない
◎コンパクトかつ耳にフィットする筐体で、装着しやすい
と、シングルBAとは思えないイヤホン。ただ、
■低音は「不足」はないが、ジャンルによっては「充分」ではない
■音の方向性としてはややクールかつ硬めで、曲調によっては温度感が足りない
と、若干苦手な(不向きな)曲・ジャンル(あえてARAYA +DNA1で聴く必要がない曲・ジャンル)はある。
ただそういうのは、こういったイヤホンに手を出す層は、複数イヤホン/IEMを所持しているだろうから、 「低音の迫力を求める」「柔らかく暖かめの音が欲しい」と言った場合は別のイヤホンを選べばよい。
頭売り(ケーブルなし)の1BA機としては決して安価な機種ではないが、1BA機としては規格外の広いレンジと中高域の美しさ、全品検査後出荷の信頼性も含めて「高い買い物」ではないと思います。
イヤホンイベントには出品していることもあるようなので、試聴の機会があればぜひ。
【仕様】
ドライバ構成:1BA+1VCS
製品内容:イヤホン本体(接続端子はMMCX、2pin、Pentaconnから選択可能)
イヤピース2種(複数の選択肢からサイズ指定で2種選択可能)
ハードケース
最近G4 イヤホン界隈では、イヤピースの加工が流行って?いる。これはイヤピースの「傘」の縁をギザギザに切り込み入れて、装着感と音質を向上させる試み。複数のイヤピで試行錯誤し、単に切れ込みを入れるだけや、切り込みが深いのや浅いのなどを作って試したようだが、現在はVelvetに、かなり細かい(細い)切り込みを入れるのに定着しているようだ(加工後イヤピの愛称「Gizapy」)。
手持ちのVelvetは一つしかないため、もったいないので、そのあたりに複数転がっていた、中華イヤホンのシリコンイヤピに切り込みを入れてみた(Velvet以外のイヤピで試したG4 イヤホンの複数のフォロワーが、効果ありの報告をしていたため)。
イヤピの一番盛り上がっている耳道と接する部分より先(縁)側に、「傘」の部分を裏返してから、薄刃のカッターナイフ
で切り込みを入れ、花のような感じに細工した(G4 イヤホンのX(Twitter)では、深い切込みと浅い切込みを交互にしたタイプや、三角に切り取るのではなく単に切れ目を入れただけのもの、もっと細かく(細く)切れ込みを入れてホウキ状になったものもあるので、どれが正解かわからない)。
音色は結構変わる。
ただX(Twitter)での報告を見ると変わり方は人それぞれのようで、「カットにより遮音が向上して低音が強くなった」「元々高い遮音状態なら~高音の伸びやこもり感の改善を感じる」と元々の遮音性(と、たぶん元となったイヤピ)によって、異なるみたい。
自分は、一言で言うとドンシャリになる変化を感じた。
環境はいつもどおりで、Shanling M3X Limited Editionのバランスアウト直結
ARAYA +DNA1で、いつもの曲を聴いてみると...
3ピースジャズの「Never Let Me Go」は、トップシンバルがさらに鋭く大きくなり、リズム感が増す(ただ、ちょっと硬すぎるかも知れない)。「First Love」は、COREIRの方向性をさらに進めたような感じの硬い音。ただHi-Fi感はかなりあがる。
この2曲は音は変わるが、「硬い」方に変わり、楽曲には合わないかな、という感じだったが、「空」は、元曲が若干上に抜けきらない音色だったのだが、上が開けてあやちゃんの声が近くなり、かといって下が弱くなるわけではなく、ベースは大きくなってグルーヴィに。そして最も良い方に変わったものの一つが「ヴィーナスシンドローム」。手を加えないイヤピだと、低音域が中~高音と比較するとやや控えめなARAYA +DNA1だが、Gizapyだとビート感が非常に強くなる。左右に駆け回るシーケンスパターンも派手で、1BAの限界突破したドンシャリ傾向になり、曲調にはすごく合う。
現代的な音楽に合うのは、ロック調ジャパニーズフュージョンの「RADIO STAR」も同様で、スラップベースと絡む板東クンのキックがキレッキレになり、スピード感が上がる。一方、河野のピアノソロは相対的に沈み、リズムコンシャスな曲に。逆に古典の「Hotel California」は、生ギターやティンバレスの鮮度は上がるものの、まるめ音色のベースの存在感よりも、ローピッチスネアが目立つようになり、時代感が出ない。
迫力という点でARAYA +DNA1が多ドラに譲った「鉄底海峡の死闘」は、低域の左右に広い盛り上がりとなり、低音の迫力と上の煌びやかさが両立し、攻撃力↑↑これは、1BAの限界を超えたか?一方、現代的な楽曲でリズムコンシャスな「NOISE」は、確かにリズム感が強くなるが、ベースよりもドラムス優勢になって曲の主題?(ベーシストひかるちゃんのソロ楽曲)には合わないか。
全体として、ARAYA +DNA1に装着するイヤピースをGizapy加工すると、上のスピードと低域の圧が増す感じで、ドンシャリ感が増す。とても1BAとは思えない表現型になるが、一方ちょっと湿度感は減ずるので、ARAYA +DNA1がよりクールになる。
ARAYA +DNA1にとっては、最近のデジタル楽曲には相性が良い加工だと思う。この加工、イヤホンを選ばず変化(あえて効果とは言わない)があると思うので、イヤピが余っている諸兄は試してみては?
「通る」高音が気持ちよい
キラキラとした高音域。刺さるほどではないが、清らかで目立っており、ヌケの良さを形作っている。
シングルドライバの良さがよく出ている鮮明な音
中域、特に中高域のハッとする鮮明さがこのイヤホンの真骨頂。
必要量はきちんとあり、ベース重視の楽曲でも破綻はない
必要「充分」か、と言われるとそこまではないが、腰高で座りが悪い...なんてことはまるでない。
もう少し低音スキーな方々には、同じドライバ構成ながら、低域を重視した新チューニングのDraculaをどうぞ、ということなのだろう。
高音の広がりもあり、音場は狭くない
一方、各楽器のフォーカスはやや大きめで、定位感は良いものの、分離の具合は「普通」。
-
購入金額
39,800円
-
購入日
2023年09月25日
-
購入場所
G4 イヤホン
jive9821さん
2023/11/01
ARAYA +DNA1が最も好バランスと思います。
Draculaは低域重視というよりも再生レンジがまるごと
低域方向にシフトしたようなイメージで、高域の不足が
顕著でした。さすがに弦楽器の音色が変わってきこえる
のはやり過ぎです。(と製作者本人にも言いました)
4BAのARAYAは悪くないんですが、これじゃ無ければと
いう個性は感じませんでした。折角少量生産のビルダー
で買うのであれば、ARAYA +DNA1辺りの個性が丁度良い
と思います。
cybercatさん
2023/11/01
Draculaに関しては今回ロットからの出荷で、最後まで仕上げの微調整をしていたみたいですので(外観とは言うものの、製品版製作開始後出荷直前にロゴの入れ方を変えたりまでしていた)、現在の「完成品Dracula」が、以前試聴されたときと同じかどうか、というのはありますが、一度は試聴してから買った方がよいかもしれませんね。