レビューメディア「ジグソー」

メロデッィクでハイスピード、かつキャッチーなメタル

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。20世紀の終末あたりから音楽に取り入れられてきたマシンを用いた演奏。単純なリズムを繰り返すだけのリズムマシンから、磁気テープによるループ、単純な音の配列を記憶するシーケンサーが進化して1曲まるまるパートわけして保存再生できるようになり、フレーズごと録音し必要なら音程を変えてステージ上で再生するリアルタイムサンプラーや、楽器の音を発音原理から解析してゼロから作るモデリングまで進化してきました。特に近年、コンピューター系の進化や廉価化でジャンルを問わず、特にリズム系楽器や持続音の和音楽器はマシン(PC含む)がになっているケースが増えて来ました。以前はバンド形態で演奏されていたジャンルを、ギター系以外はマシンで補ったインディーズ盤をご紹介します。

 

エミルの愛した月夜に第III幻想曲を(Emille's Moonlight Serenade)。コンポーザーでギタリストのサラ(SARA)と、ヴォーカリスト荊(いばら)による、男女二人の音楽同人サークル。同人誌も扱うアニメ・マンガ系ショップの同人音楽コーナーで前作“ビスクドール”

が流れていたので識り、その厨二病的歌詞と、ハイスピードかつポップな部分もあるハードな楽曲、ヴォーカル荊の声質、さらに言えばミュシャによるジャケットイラストも気に入り持ち帰ったのだが、その彼らの2023年9月現在の最新作が、本作“BLACK DAHLIA”(2023年4月30日リリース/M3-2023春)。

 

“ビスクドール”同様、キャッチーかつハイスピードな打ち込みメタル曲が収められている。

※楽器のプレイヤーとしては、ギターとベースがサラ、ギターソロが前作同様七牟礼一芭(ななむれかずは)とクレジットされているだけなので、あとは打ち込み。

 

♪LaLaLa♪と歌われる短いコーラス曲で、ちょっとラピュタっぽさもある?プロローグ的小品「Greater Good」に続いて、実質的な開幕曲は「Song for the Stars」。ピアノでゆっくりと始まり、メロディをひとしきりピアノソロ状態で奏でた後、エレキギターが入るとともにリズムイン、スラッシュ化。ヴォーカルが入るところで、いきなり転調があるのが印象的。荊の声は相変わらずよく通る声で、心地良い♪この歌を届かせて/貴方の元へ/光となり永遠に/天高く舞い上がれ/月が癒やすまで/天使の歌声を/人々が救われては/歓びと無力さを知る...♪歌詞も厨二的路線継続で、メタル調のツインギター仕立てのソロもカッコいい。2nd verseはバックが薄くなり、生ギターとピアノが前に出てドラマチックな構成だが、ここはちょっとドラムの打ち込み色が強くて少しノリ切れない感じ。スラッシュ系のハイスピードメタルは、体育会系汗と気合い!みたいな部分があるので、特に「抜いた」部分があるこの曲は、生ドラムを入れて欲しかったなー..

 

一番ポップス色が強いのが「Hear my Voice」。ドラマッチックなバラードで、荊が切なく歌う。当然この曲も打ち込みなのだが、ベースを生にしたのが功を奏して?よくある「打ち込みバラード」に陥っていない。よく動き、装飾音が多いベースがゆったりとした「曲のベース」となっていて、硬さがあまり感じられない。短いがアコースティックギターのソロも曲に合ってる。ヴァイオリン音色でのオブリもあるので、その部分も含めて、バンドでの演奏にすればそれはそれで魅せると思うが。

 

ラストの表題曲「BLACK DAHLIA」は、チェンバロのイントロに続いて、荊がピアノだけをバックに歌って曲に入り...リズムインとともにハイスピード化!ピッキングハーモニクスも使ったギターリフとツーバス想定のハードで音飽和系のビートでグイグイ引っ張る。途中三拍子系になるシカケもあって、盛り上がる。クラシカルな音階で、速弾き主体のギターソロ~ラスサビ前にセリフパートもある曲構成は「王道」で盛り上がる!!

 

歌上手い荊が歌う、メタル文法だがキャッチーなサラの楽曲、というエミルの愛した月夜に第III幻想曲をの方程式を今回も踏襲した聴きやすい作品。頻回の転調を含んでいたり、リズム的ギミックがあったりと、編曲も凝っていて単に「聴き流す」には惜しい出来。

 

ただそれだけに、ハイスピードスラッシュ部分では目立たないながら、リズムオフ部やスローペースになるとき、特にドラムスの「硬さ」ちょっと耳につく感じ。基本的にスラッシュ系のメタルは運動会的要素もあるので、ここは人が叩いて欲しかった。ポップスや軽めのロックでは打ち込みになることが多いベースが、サラの手弾きなのでドラムレスのスローな部分では気になる部分がないのに、ミドルテンポのパートで急に「硬く」なるのが実に残念。

 

YouTubeには、かなり以前のものだがバンド形態でのライヴ映像も残っているので、最新の曲も含めて、フルバンドのライヴ盤でも出してくれないかと感じているエミルの愛した月夜に第III幻想曲をの最新盤でした。

ブックレットとピクチャーレーベル、奥に見える初回特典ポストカードは同一絵柄
ブックレットとピクチャーレーベル、奥に見える初回特典ポストカードは同一絵柄

 

【収録曲】

1. Greater Good
2. Song for the Stars
3. Blind Devotion
4. Eye for an Eye
5. Hear my Voice
6. Harmony
7. BLACK DAHLIA

 

「BLACK DAHLIA ティザー」

※ティザー中に曲名がないが、「BLACK DAHLIA」⇒タイトルコール⇒「Blind Devotion」⇒「Song for the Stars」⇒「Eye for an Eye」⇒「BLACK DAHLIA」⇒「Hear my Voice」の順

更新: 2023/09/10
必聴度

リズム的に凝ったアレンジが多いだけに、マシン臭さが耳に残る部分がある

メタルはやはり「熱い」部分がないとダメなのだろうか?体育会系?

  • 購入金額

    2,178円

  • 購入日

    2023年05月18日

  • 購入場所

    メロンブックス

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