レビューメディア「ジグソー」

いい意味でポップで、前の作品よりグッと良くなった

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。初期に売れたシンガーやグループが、その人気を維持しようと、新しいことに挑戦するも、ファンの期待するものとは微妙に違い、路線を元に戻すことがあります。デビュー以来続けてきた制作陣から一新して作品を制作したグループが、制作陣そのものは変更後のままであるものの、曲の方向性を回帰して「かつての」テイストに戻した作品をご紹介します。

 

ZOO。JRのスキーツアーCF「Choo Choo TRAIN」

で大ブレイクして、ダンス主体のグループでも売れる!というのを確立したグループ。

※EXILEやJ Soul Brothers(特に三代目)がヒットチャートを賑わせている現在では信じられないかも知れないが、ZOOが活動していた20世紀末は、ダンスユニットは芸能界では裏方扱いで、表に出ることはまずなかった。

 

そんなZOO、適度にソウルテイストがある、キャッチーでノリが良く覚えやすい中西圭三提供の楽曲と、彼らのキレのあるダンスがマッチしてヒットするが、初期のダンスを引っ張ったというKAZUの脱退や、小室哲哉に見いだされ、後にtrfでブレイクするYU-KIの引き抜きなど、才能あるメンバーの離脱、デビュー時から楽曲を提供してきた中西路線からの変更などあり、人気に陰りが....

 

中西路線からの脱却を図った?4thアルバム“JUNGLE”

は、それまでの余勢を駆って(今と違ってCD販売がメインだったこともあり※)ある程度の販売数を示したが、曲がより尖ってしまったため、元々持っていた「キャッチーな曲をダンスで盛り上げつつ歌う」という良さが薄れてしまった。

※今のようにサブスクや試聴ファイルがネットに転がってはいないので、中身を確かめるためには買って/レンタルして聴いてみるしかなかったため、アーティストを信じて未試聴で買う「ブランド買い」が結構あった

 

それを「軌道修正」したと思われるのが、本作“Can I Dance?”。

 

制作陣の中心は、作曲は横山輝一と羽田一郎が主で、前作と変わらないのだが、特に尖った感じだった横山の曲が「丸く」なり、良い意味で大衆的になっている。

 

その横山の手になる「Every Time」。「Choo Choo TRAIN」にも通じるような印象的なサビとコーラスを持ち、ファットなシンセが彩る楽曲は、Aメロの部分のメロディがちょっと高難易度で、横山節を感じるが、コーラスの部分はいい感じにポップで覚えやすい。

 

羽田の曲はどうかというと、シンベが印象的な「INVISIBLE」は、マイナー(短調)で始まり、メジャーに転ぶBメロ、サビではマイナーで導入後メジャーで解決と長短ころころ変わる曲調だが、間奏はリズムだけになっているところにVOXスクラッチやバーンと鳴るピアノを入れたりして結構攻めてる。前作のでは横山が尖り、羽田が取っつき易い路線だったが「寄った」感じ?(ま、このアルバムの羽田の曲には「Gravity」のような超ポップ路線のものもあるが)。

 

横山と羽田以外では、最後の2曲をアイドル系への楽曲をしていた尾関昌也が書いている。ともにヴォーカルメインとなる曲で、「ダンス曲」と言う感じではないが、あまり多くの事を歌い手に求めないわりにちょっとキラッと光らせる部分があり印象に残る曲は悪くない。ピアノで始まる「Real Love」は、微ハネのリズムのミディアムテンポの曲だが、サビ前のコード進行が、気持ちブラックな感じの響きで印象を残す。

 

作曲陣のメインが変わっていないのに、曲の印象が変わったのは、ひょっとしたらこの作品は前作と編曲者が違うからかもしれない。前作までは一貫してメインアレンジャーは岩崎文紀だったが、本作では小野沢篤が中心になっている(水島康貴や山本健司も参加しているが)。デビュー時点から関わっていた岩崎より、小野沢の方がZOOらしいアレンジ、というのが不思議だが、ひょっとしたら前作では作曲が中西から変わったことで、新しい作曲陣の曲の特徴を伸ばそうとした岩崎に対して、寄り添う演奏で識られる小野沢は「ZOOらしさ」を表現したからかも知れない、とおもったり。

 

ZOOの良さは、歌を「聴かせる」より、楽しく踊りを「魅せる」方なので、そういう意味では本作は原点回帰。

 

中西抜きなのにZOOっぽさがある作品に仕上がっていると思います。

相変わらずZOOは参加メンバーの個別記載がないが、本作では前作より1名減って、8人の姿が写真に写っている。
相変わらずZOOは参加メンバーの明記がないが、本作では前作より1名減って、8人が写っている。

 

【収録曲】

1. OVERTURE(Instrumental)
2. Every Time
3. Ding Dong Express [Album Version]
4. Seven Snow Flakes
5. Alternate(Instrumental-SE-)
6. INVISIBLE
7. THE MOMENT YOU WERE MINE(Instrumental)
8. Gravity
9. Play Back
10. Interlude(Instrumental)
11. Merry Walking
12. Real Love
13. La Laは愛の言葉 [Album Version]

 

「Every Time」

 

更新: 2023/09/07
必聴度

新しいものを追求してみたが、原点に回帰した

「楽しく踊れる」ための楽曲の方が、尖っていて曲そのものに存在感がある楽曲よりも彼らには合っている。

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

11人がこのレビューをCOOLしました!

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