7月14日、ひっそりと封切られた、スタジオジブリ、宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」を見てきました。
直前までまったく情報がなかったのは、自分にとっても同じで、特に注目も期待もしていなかったので実は当日の昼まで知らず。たしか知ったのはTwitterの「今日から公開」という文字をどこかで見て。
新宿や渋谷は軒並み満席でしたが、まだ池袋は空いてたので、ちょっと高かったけど勢いで。
賛否うんぬんもたくさんあるようですが、まず自分は「好き」でした。
あらゆる情報がネタバレになってしまうので、いま言えるのはなんかあのポスターのサギが出てくるということだけ。それでよいです。何も知らなくていい。知らない方がいい。
初めて入るお化け屋敷って、どんなしかけがあるか知らない方が楽しいですよね。知ってたら「あ、これ知ってる」とか、心構えができてしまう。そういうの、一切いらないです。
ていうか、これほどまでに事前情報なしでジブリアニメが見られるのって、「ナウシカ」や「ラピュタ」を初めて見るという稀有な人だけなんです。
でも、今回は違います。徹底した情報統制のおかげで、誰もが小学生時代に初めて「トトロ」や「紅の豚」を見たときと同じ気持ちを味わえるんです。
これって、このネット社会の中で、調べる能力のある私たち大人でも、あの調べる能力も知識も興味もなかった子ども時代に初めてジブリに出会えた時と同じ気持ちが味わえるってことなんですよね。
それってすごいことだと思いませんか?
書籍の「君たちはどう生きるか」については、自分は一度読んではいました。ただ、あれは知ってても知らなくてもどうでもいいと思います。監督はそんな我々の「読んでおいた方がいいと思って…」という気持ちを軽々と乗り越えて、見事に裏切ってきます。
だから、ぜひ何も知らずに、情報なしで、見てください。私も何も言いません。
そして、見た人同士でなら、それぞれの思いや感情を語り合うことはとても楽しいはずです。あのシーンでのあのキャラがよかったとか、あそこでの動きが良かったとか、あそこは怖かった、意味がわからなかった、なんなのあの演出? いろんなことが語れます。
今回の作品は、宮崎監督自身も「よくわからない」ままで作り切ったのだそうです。自分の気持ちを自分がわかっているかなんて、自分にもわからない、人間ってそういうもんじゃないでしょうか(ちょっと哲学的)。
いろんな感情、葛藤、不安、矛盾を放り込んで、宮崎駿という人の頭の中を映像化するとこんな感じになる、そういうものなのだと思います。
きっと(いろんな意味で)心に残る「体験」になる
映画は、物語、教訓、感動、未知の感情、嫌悪などなど、いろいろなものをもたらしてくれます。
自分はあまり幸せにならない映画は好きじゃなくて、ホラーもスプラッターも全然苦手どころか嫌で、意味がわからないことを極端に嫌う性格です。
でも、この作品はそういう好き嫌いとか関係なく、ジブリと宮崎駿の作ったもの、という非常に強いバイアスを持って、自分の中で納得させられてしまいました。
映画が終わった直後、拍手する人もちらほらいたし、座ったままでいきなり論争を始めるグループもいました。誰もすべてを理解できる人はいないと思います。自分は少しの間、呆然としてました。
みんな、なにかの書物や歴史上の出来事、理論などを持ってきて、いろいろ重ね合わせてみることでしょう。
でも、どれも正解かもしれないけど、どれも不正解かもしれません。
考えるな、感じろ、ってよく言われますが、実際にやれと言われても予備知識があってどうしてもできないんですよね。
それを見事にさせてくれる、それが「君たちはどう生きるか」という映画だと思います。
遠回しな言葉しか並べられないですが、とにかく強烈に、自分の中に「なんかわけわからんもの見た!」という体験が植え付けられるはずです。それが、この映画をいま、できるだけ事前情報なしに見てほしい一番の理由です。
もちろん、しっかり事前情報を得てから見てもいいと思います。その見方も否定はしません。
でも、自分はジブリの中に、子ども時代のワクワク感とか、成長とか困難を乗り越える力とか、そういう物語を求めている部分があるので、大人の理屈で固められた映画はあまり見たくない。
ある意味で、自分の感性を問われる映画とも言えるかもしれません。そこに自信がない人が避けるというのもアリでしょう。
ただ、そんなことも気にしなくていいです。多分誰も、人の頭の中なんて理解できるわけがないんです。だから、みんなでこの映画を見て、全員が終わった瞬間に「?」ってなるような体験をするのが、この映画の一番楽しい見方だと思います。
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購入金額
2,000円
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購入日
2023年07月14日
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購入場所
池袋HUMAX
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