SHUREが全てのアナログ関連製品の生産完了を発表したのが2018年。その後SHURE向けの交換針を供給し続けているのは実は日本のメーカーが中心です。特にJICOは本来の専門分野であった交換針だけではなく、M44シリーズカートリッジ本体の再現にも挑戦して、一躍評価を高めました。
一方、交換針の世界最大手といえるナガオカは、元々GD63-44GというM44G向けの交換針は販売していたものの、これは2020年頃に販売を完了していました。
ナガオカにはその後もM44向け交換針の問い合わせは多く集まっていて、当初はGD63-44Gの再生産も検討されたそうですが、これは型番通りM44G向けの交換針で、DJ用途で使われることも多いM44-7の針として使いにくいという弱点がありました。実際DJプレイには使えなかったそうです。
そこでDJプレイに対応させつつ、再生能力もより高めた新製品の開発に取りかかり、満を持してリリースしたのがこのDJ-44Gという交換針です。価格も以前のGD63-44Gより安価な、M44シリーズの型番に合わせた4,400円+税と決定されました。実はJICOが次々とM44関連製品のリリースを続けていた時期に当たる昨年のOTOTENで、ナガオカの営業担当の方に「ナガオカでは出さないのか」と尋ねてみたところ「ご期待下さい」との返答があり、どのような仕上がりになるのか気になっていました。
そして今年いよいよ販売開始となったDJ-44Gだったのですが、予想以上の低価格と高品質が評判を呼び、現在に至るまで品薄状態が続いていまして、私も入手できていませんでした。そして今年のOTOTENのナガオカブース前でたまたま会ったオーディオユニオン アクセサリー館のKさんに「来月15日にナガオカさんやるからよろしくね」といきなり言われたのです。要はDJ-44Gを中心に据えた試聴イベントを行うということで、そこで音を聴いた上で購入できるということから、取り敢えず参加してみることにしました。
▲試聴会にはJT-80シリーズ、MPシリーズのカートリッジも一通りありました
試聴会ではSHURE純正のM44-7+純正針、M44G+純正針、JICO製の互換カートリッジJ44A 7+JICO製針(接合針)が用意されていて、それぞれを入れ替えての試聴なども行われました。試聴会のレポートも上がっていましたので、リンクを貼っておきます。
そして「禁断の組み合わせ」と称して実験されたのが、JICO J44A 7のボディにNAGAOKA DJ-44Gを装着するというものでした。これはかなり良い音で鳴り始めたのですが、突然フェードアウト状態になってしまったのです。見ると、何と針が外れてしまっていました。針を挿すときに「やけに緩い」という話だったので、ちょっとした個体差で径が僅かに合っていなかったのでしょう。
その結果を見て、それなら自分の環境でも試してみようということで、DJ-44Gを購入してきましたので、早速取り上げたいと思います。
廉価ながら音質も一級品
営業さんに説明されて判ったのですが、実はこのパッケージは交換針が4本収納可能な構造となっています。Kさんに「そういうことはちゃんとアピールしないと」と言われてしまっていましたが…。
試聴会でM44-7の純正針と入れ替えて聴いた結果として、SHURE純正の針よりもレンジは広く解像度も上がり雑味も減るという、目に見えて品質は上という結果となりました。
そこで今回はJICO J44A 7との組み合わせに絞って試聴してみようと思います。
装着して見ると、確かにJICO製の針と比べると装着時に緩さがありました。ただ、最後はきちんと押し込まないと挿さりきらない状態でしたので、試聴会とは違い途中で脱落することはないだろうという感じはしました。
試聴会では30秒も持たなかったのですが、この写真で判るように「Fahrenheit / TOTO」A面1曲目「Till The End」を聴き終わる段階でも特に問題は生じていません。僅かな個体差なのでしょうが、私のJ44A 7+DJ-44Gは問題なく使えるという結論になりました。
その上でJ44A 7標準装着のN44-7 IMP(現在は生産完了となっている接合針モデル)と比較試聴してみると、DJ-44Gの方が明らかにエネルギー感があり解像度も高く、高域もクリアです。以前から私は主張しているのですが、「恐らく世界で最も接合針の音が良いのはナガオカだ」と感じられます。JICOの接合針も別に悪いわけではないのですが、やはり全体的に音が濁りますし、解像度も無垢針よりは明確に劣ります。OrtofonやGRADOの接合針はもっと明確に劣ると思っていますが…。ナガオカの接合針は他の接合針にありがちな濁りが殆ど感じられないのです。
そして改めて感じたのは、JICO J44A 7のボディの素性の良さです。SHURE純正よりも針の音質差を克明に描き出しますし、付帯音が取れて一音ごとの質感が高いのです。現状JICOボディ+ナガオカ針は低価格カートリッジとしてとてもお買い得といえるだけの音が出ています。
個体差によっては試聴会の時と同様に使えない可能性もありますが、脱落さえしなければとても魅力的な組み合わせといえます。
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購入金額
4,840円
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購入日
2023年07月15日
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購入場所
オーディオユニオン アクセサリー館
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