所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。20世紀末、日本のポップスを海外のアーティストに歌わせた作品、というのが流行った時期がありました。その場合のシンガーには、ネームバリューも狙って?ポップスやロックの名が通ったヴォーカリストが選ばれる事がほとんどでしたが、南ア⇒イギリス⇒アメリカとキャリアを形成してきた、通好みのヴォーカリストをセレクトした作品もありました。そんなレアな作品をご紹介します。
ZOOは、EXILEのリーダーHIRO(五十嵐広行)がかつて在籍した、20世紀のダンスヴォーカルユニット。後にTRF(当時の表記はtrf)に移ることになる、YU-KIこと北村夕起がヴォーカリストとして参加していた(ZOOとしてメインだったのはSATSUKI(御木五月))。後継の?EXILEと違って、メインヴォーカルが基本女性で、DJありのダンスユニットというのが特徴だった。
楽曲としては、中西圭三をはじめとしたヒットソングメイカー提供のソウルテイストのある楽曲をダンスアレンジし、ダンスパフォーマンスを魅せながら歌うスタイル。初期は特にキャッチーな楽曲で有名な中西の曲がほとんどだったのので、耳なじみがよく、大ヒットとなった曲も多い。
ただし、本アルバム“Song Of Zoo Meets House Style”は、ZOOの作品ではない。
名義はBand Of Gypsies Feat. Miriam Stockley。Band Of GypsiesとはJimi Hendrixのアルバム名みたいな名前だが、プロデューサー欄にもクレジットがあるので、いわゆる「企画した集団」。彼(等)がZOOの楽曲をハウス風にアレンジし、打ち込みで構築して、Miriam Stockleyが英訳された歌詞を歌った企画アルバムというわけ(他にラッパーとしてDes Strachenが参加)。だから、“Zoo Meets House Style”でなく、正しく“Song Of Zoo Meets ~”なわけ。
そういう意味では、J-POPを海外アーティストに歌わせたこのあたり↓↓に近いモノがある。
ここで歌っているMiriam Stockleyは、Freddie Mercuryのバンドコーラスや、Wham!のコンサートでコーラスを担当していた人物。日本ではAdiemusというヒーリング系ポップスグループの初代ヴォーカリストとして識られている。出身が南アフリカで、その後イギリスに渡って活動したので、ファンキィかつソウルフルな歌声なのだが、アメリカ的な「陽」な感じではなく、UKの暗い感じのファンクさというのが特徴か。
その彼女がZOOのヒット曲をハウスアレンジした楽曲を歌ったわけだが、世相なのかイギリス的なのか、どことなく「陰」なイメージのダンスミュージックになっているのが面白い。
EXILEもカバーした大ヒット曲「Choo Choo Train」。元々中西の「陽」の部分が良く出たハッピーな曲なのだが、オケヒットのシーケンスがマイナー(短調)で始まり、不穏な感じに?サビ前の曲なので、あの有名なフレーズが先に来るが、これも暗いw。でも意外に悪くない。Aメロは長調に戻るのだが、サビの短調化でスリリングな「Choo Choo Train」に。男女が腰に手を置いて数珠つなぎにゲレンデを滑る...というイメージの、CF(JR ski ski)に採用されたようなハッピーさはないが、極地のスキーという感じ?←究極過ぎるw
「Jungle」。おどろしい?ベースパターンと、打ち込みっぽいフレーズのピアノのコード、左右に駆け回るSE...かなりダークに、温度感低く創っていて、Miriamも淡々と歌っているが、原曲の猥雑な感じと意外にもイメージが近い。この作品では、ZOOが一番売れていた時期の初期3枚のアルバムやそのタイミングでリリースされたシングルから多く選曲されているが、特に初期3部作にこだわってはおらず、後期の作品からも選曲されている。「Jungle」は同名アルバム
からの楽曲だが、ちょうどこのタイミングでそれまでのフロントヴォーカリストのYU-KIが抜け、さらにキャッチーなポップス調の楽曲を提供していた中西圭三から離れたので、曲調的に混沌としていた時期。後にはフロントヴォーカリストはSATSUKIに固定されて、またポップステイストも大きくなったが、この楽曲ではコーラス...というか、男衆と女衆に別れてフルユニゾンで歌詞を歌っているだけなので、原曲でもヴォーカルは強い印象を残さず、結果として似る感じに。
「Given」は初期の曲ながら、中西の曲ではなく、当時久保田利伸と行動を共にしていたギタリスト、羽田一郎の曲。カッティング鋭い、打ち込みのダンスファンク曲で久保田テイストの楽曲だが、より打ち込みが目立つ。原曲では後にはダンサーに専念するLUKEが、YU-KIと交互に歌うチョイヘタウマテイストもある楽曲だが、このアルバムのMiriamヴァージョン、いいな。当然独りで歌っていて伸びのある声が、原曲より存在感がある。楽曲も少し速められたテンポに乗って、オケヒットやSEが乱れ飛び、「ザ・ハウス」という感じの音造りで、スリリング。これはGood!
ZOOって当時よく街に流れていたのと、初期の中西圭三提供の曲が、上手く彼らの帯域を活かしていて良かったので、どちらかと言うと「流れで」CDを買っていたが、改めて「曲」として聴き返してみると、良い曲も多いな、と。
このようなゴリゴリハウスは、今ではあまり聴くことが出来ないけれど、その懐かしさも含めて評価したい作品です。
このアルバムの歌詞カード、真に「歌詞カード」で、一枚の写真もない
【収録曲】
1. Gorgeous
2. Dada's Theme Count Down
3. Choo Choo Train
4. Jungle
5. Ya-Ya-Ya
6. Given
7. Present Pleasure
8. Last Play
9. Careless Dance
10. Native
「Choo Choo Train」
この希少盤をわざわざ探し出して聴くほどではないが、出会えたならZOOの曲のカバーモノとしてはかなり質が高い
よりドラマチックな造りになっていて、ヴォーカリストも上手い。
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購入金額
3,000円
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購入日
1993年頃
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購入場所
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