所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。限定盤企画。レアもの好きの琴線を鳴らす言葉ですが、複数ヴァージョンを用意してもある程度ペイする(見込みがある)アーティストには、売り上げのために用意されることがあります。その「限定」内容は多岐にわたり、楽曲の追加、ジャケットの変更、特別価格、アイテムの追加など様々なテを使って、限定盤を「限定」たらしめます。アイテム付属と楽曲追加が同時に行われた例で、どちらがファンにとって「主」なのかを考えさせられた作品がありますので、ご紹介します。
倉木麻衣。現在でも活動を続ける息の長い歌姫だが、デビュー時所属していたGIZA studioから、NORTHERN MUSICに移籍してからは物理CDの売り方が変わった。GIZA studio時代はとにかく多産で、年3~4枚ペース。1999年末デビューなのでその年は1枚きりだが、翌2000年は年間5枚リリースで、「いつCDショップに行っても麻衣の新譜がある」という露出戦略だった。それがNORTHERN MUSIC移籍以降は、リリースは年1~2枚と少ないが、多ヴァージョン横展開戦略で、通常盤、初回限定盤、さらに彼女の作品はタイアップも多く、アニメ主題歌になることも多かったので、そのアニメのキャラクターがジャケットのアニメ盤、加えて特定販売店限定盤やファンクラブ限定盤なども制作された。極めつけはダブルA面扱いということなのか、表題曲とカップリング曲の扱いを逆転させたヴァージョンが制作されたこともあり、新譜発売時には4~5種の「ほぼ同内容」のシングルが選択できることになり、フルコンプリート気質のファンの懐事情の心配と、選択して買う人には「どれを買うか」という悩みを生じさせることになる。
その奔りともいえるのが、NORTHERN MUSICに移ってから2作目の本作、“夢が咲く春/You and Music and Dream”。移籍後1作目の“Silent love〜open my heart〜/BE WITH Ü”も、麻衣のシングルとしては初めて「初回限定盤」が設定されたが、ジャケットは同じで、初回盤にはライヴDVDが添付されるだけで、CDは同内容。ライヴの中から1曲だけを切り出したものが収録されるDVDが不要で、音源だけ欲しい場合や、彼女のシングルを少しでも安く入手したい場合は通常盤、映像もいっしょに欲しい人は初回限定盤とわかりやすかった。
それが本作以降
・初回盤と通常盤でジャケットが異なる
・CDそのものに収録されている曲数が異なる
・DVDなど楽曲関連のものだけではなく、グッズなど楽曲に無関係なものが添付される
と、初回限定盤の差別化も進んだが、通常盤のジャケット写真の方が好み、という熱心なファンには「複数枚買わせる」ような手法となってしまった(そしてだいたい通常盤の方がアピール度が高いジャケ写になっているのが、上手いというかなんというか)。
この“夢が咲く春/You and Music and Dream”の初回限定盤は、「通常盤とは違うジャケ写を採用」「通常盤4曲に対して1曲多い5曲を収録」「グッズとして麻衣デザインのエコバッグを添付」という差別内容。
cybercatは、別ジャケやグッズには興味はないが、楽曲は全て押さえたい、というタイプなので、これだと不要なエコバッグが添付され、高額な(ま、差は220円だけど)初回限定盤を選ぶしかなくなる。「音源」を買っているのに、他の理由で高くなったものを入手というのが釈然としないな、と言う感じ。
なお、収められた楽曲は以下の通り(ヴォーカルトラックマイナスワンの「カラオケ」除く)。
「夢が咲く春」。タイトルから受けるイメージより、はるかにソリッドでCOOLなソウルテイストのあるアップテンポの曲。麻衣の他、ZARDへの楽曲提供でも識られる徳永暁人の提供曲。徳永の曲なので、「Winter Bells」や「Feel fine!」のような、明朗路線?かと思えば、粗めの音に仕上げられたリズムと、ミュートギターとローズ風のエレピの音が彩るスリリングなテイストの曲で、これはいい!
「You and Music and Dream」は、麻衣をデビュー時から支える「作曲=大野愛果+編曲=Cybersound」のコンビなので、「Love, Day After Tomorrow」や「Secret of my heart」のような、淡々とビートが続くような曲になるかと思ったが、正統派のバラード。生ピアノを中心としたバックに乗せて、麻衣の声が響く。♪I believe in you and music and dream/どんなに頑張っても
君なしじゃ/だめなんだ/拒むことも出来ない現実に♪
「You and Music and Dream -another ver」が、初回限定盤のみ収録の曲。シングルの歌詞カードにはクレジットはないが、一部ネット情報にあるように、「作曲・編曲:徳永暁人」ということはあり得なくて、少なくとも作曲は大野愛果。そしてインストナンバー。同じCDに収録されている「You and Music and Dream -instrumental-」との違いは、「instrumental」の方は麻衣のヴォーカルを抜いた単なる「マイナスワントラック」に過ぎないが、「another ver」の方は、ピアノ中心の楽器の使い方自体は変わっていないのだが、全編ピアノソロというか、ピアノでメロディラインもなぞり、元々のピアノラインはよりゴージャスになっていて、ピアノインストバンドで「You and Music and Dream」を演奏した、という感じのテイク。インスト好きの自分としてはこちらの方が断然好み。
そういう意味では、つかわなくて場所をとるエコバッグに追い銭を払っても、このシングルは初回限定盤を入手する価値があった。ま、実際には、このCDはオークションで倉木麻衣中期までの全タイプCDの一括譲渡で入手したので、限定盤でも価格は十分に安く、使わないエコバッグの収納スペースだけの問題だったが....
楽曲提供が配信のみになれば、このようなジャケットやグッズで釣る商売は廃れていくと思うが、先日も大手音楽ダウンロードサイトの仕様変更で、過去の購入作品が今後は再ダウンロード不可になるというニュースがあり、今でも「モノ」を押さえておく強み、というのもある。
楽曲自体は良曲で、特に初回限定盤のみの収録となる「another ver」に関しては、単なる「カラオケ」以上の魅力があって、手元に置いておく価値が高いのだけれど、販売手法に疑問が残る作品でした。
麻衣デザインだが、自分はエコバッグは要らないんだよなぁ....
【収録曲】
1. 夢が咲く春
2. You and Music and Dream
3. You and Music and Dream -another ver-
4. 夢が咲く春 -instrumental-
5. You and Music and Dream -instrumental-
「夢が咲く春」
「another ver」は、お手軽マイナスワントラックではなく、出来が良い
ただ、「倉木麻衣ファン目線?」で評価した場合、麻衣が歌っていないこのヴァージョンの魅力ってどうなんだろ。
この作品から別ジャケットになったジャケ写や、麻衣デザインのエコバッグの方が価値があるのかなぁ....
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購入金額
180円
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購入日
2012年03月18日
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購入場所
Yahooオークション
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