レビューメディア「ジグソー」

ジャズを題材にした映画のパンフとして、デザインが素晴らしい

BLUE GIANT。石塚真一のマンガで、それを原作に、立川譲監督により2023年2月に映画化された。

 

マンガの方は、仙台編⇒東京編⇒ヨーロッパ編⇒アメリカ編と続き、アメリカ編(正確には「BLUE GIANT EXPLORER」、ちなみにヨーロッパ編は「BLUE GIANT SUPREME」)は、2023年4月現在まだ続いていているが、映画は仙台編のごく一部に東京編を中心にしたオリジナルストーリーらしい。

 

地方に住む、世界一のジャズプレイヤーになることを目指すサックス吹きの青年(宮本大:みやもとだい)が上京し、大学進学で先に上京していた地元の友人のアパートに転がり込む。夜、河原で練習しながら、自分の音を表現するため、場所と、仲間を探す。そこで出逢ったのが、幼少期からピアノをはじめ、すでにライヴハウスに出入りする凄腕のピアニスト沢辺雪祈(さわべゆきのり)。そして天性のリズム感だけを頼りにドラムをやることになる、が転がり込んだ先の友人玉田俊二(たまだしゅんじ)。

 

この3人が、最終的にジャズトリオ=JASS(ジャス)を組み、客の入らないライヴでも来た人々を魅了したり、自治体の祭りで有名プレイヤーの前座扱いになりながらも真っ向勝負を挑んだりしながら、日本最高のジャズライヴハウス“So Blue”への出演を目指していくというストーリー。

 

映画では時系列的に、すでにが海外に行っているという状態で、「宮本大のデビュー時の日本での活動を関係者が振り返る」と言った感じの番組を収録しているようなカットが随所に挟まれ、やJASSの活動が回想される。これにより、「ト書き」くささを感じさせないながら、短い時間でのひととなりを把握できるようになっている。

 

また演奏シーンでは、実際のジャズプレイヤーのモーションから起こしたアニメに、音をイメージしたようなCG効果が大胆に付加され、非常にダイナミック。

 

そして音楽は、著名なジャズピアニスト上原ひろみが担当し、多くのオリジナル曲を提供しているのも話題を呼んだ。

 

自分は、原作マンガは完全に未読なのだが、映画でもキーとなっている曲(JASSのファーストライヴでの1曲目で、かつ、ラストライヴのアンコール曲)「FIRST NOTE」を、最近よく観ているサックスを吹くVTuber、姫宮レーニャちゃんが吹いていたことで興味を持ち、映画まで観に行く気になったという順序。

 

映画そのものは、東京辺中心とはいうもののかなり手が入れられているそうだが、コンパクトにまとまっているわりに、話の起承転結もあり、とても見やすかった。また、ライヴシーンも多く挟まれ、ジャズ入門映画の一面と、ダイナミックに可視化された「音」の表現などでアニメファンへの訴求もあり、良作だと感じた(原作は読んでいないので、原作の再現性や各キャラクターの描かれ方の違いはわからない)。

 

その映画のパンフレットが登録品。表紙・裏表紙抜きで24ページのパンフで、あらすじやキャストインタビュー、スタッフインタビュー、キャラクターデザイン、美術ボード、映画のカットというあたりは一般的だが、このパンフ、結構力入っている。

 

まず装丁が素晴らしい。LPサイズで、「ジャケットがある」。LPジャケットの中から、パンフレット本誌を取り出すと、その表紙には30cmアナログレコードが描かれている。そのレーベル面には映画の題名“BLUE GIANT”と大をはじめJASSのメンバーの名が描かれている。そこにレーベル名っぽく描かれているのは、JASSのラストライヴの会場となった“So Blue”。

アナログレコードを識っている人はこの装丁で、アガるよね
アナログレコードを識っている人はこの装丁で、アガるよね

 

溝もちゃんと曲間があるし、録音部分と無録音部分の違いも再現
溝も、ちゃんと曲間もあるし、録音部分と無録音部分の違いも再現

 

そして、特徴的なのは、JASSのメンバーについて、声優へのインタビューと、その演奏とモーションを担当した音楽家へのインタビューが載せられていること。この映画においては、声の演技だけでなく「演奏の演技」も重要だったと思うので(特に、最初はシロウトだったという設定のドラムの玉田の成長を音で演じた石若俊は大変だったと思う)。

例えばピアノの沢辺雪祈なら、演奏担当の上原ひろみと...
例えばピアノの沢辺雪祈なら、演奏担当の上原ひろみと...

 

...声担当の間宮祥太朗の二人のインタビューが載せられている
...声担当の間宮祥太朗の二人のインタビューが載せられている

 

また、JASSのメンバーがライヴを行った4カ所の設定画や、「音が視えるように」描いたライヴシーンのディレクション、JASSの持ち歌?4曲の詳説など、音楽系映画でもある故のページも多く、楽しめる。

4カ所のライヴ会場は緻密に設計されている
4カ所のライヴ会場は緻密に設計されている(名前から有名ライヴスポットが想起される)

 

映画のパンフって、映画本編では語られないことの資料的な価値と、後から見返した時に映画のシーンが蘇るか、と言う点が重要だと思うけれど、これはともに高いレベルで実現しているパンフレットだと思います。

 

【仕様】

・LPケース付(310mm×310mm)パンフレット本体(295mm×295mm)28P

《目次》

P 1 INTRODUCTION & STORY

P 2 CAST INTERVIEW

      YUKI YAMADA / SHOTARO MAMIYA / AMANE OKAYAMA

P 8 CAST PROPFILE

P 9 STAFF INTERVIEW

      YUZURU TACHIKAWA / HIROMI UEHARA

P11 INTRODUCTION OF THE SONGS

P12 STAFF INTERVIEW

      NUMBER 8 / SHINIVHI ISHIZUKA

P15 LIVE SCENE

P17 STAFF COMMENT

P21 REVIEW

P22 PRODUCTION NOTE

P24 CREDIT

 

「映画『BLUE GIANT』予告編」

 

おまけ:きっかけとなった姫宮レーニャちゃんの「FIRST NOTE」

    ※何度も演奏しているが、いずれも長い配信の一部なので、独立しているショート

更新: 2023/04/24
企画の面白さ

LPジャケットサイズで、中のパンフ本誌にはアナログレコードを模した絵が描いてある

読む時には、レコード盤を用意して、これから聴く、という感じ。無意味に?ジャケットがあるのがそれらしい。その割に(正規に買えば)たいしたプレミアがついているわけではない(同時に購入した他の映画のパンフは1,000円だったので、100円しか違わない)。

  • 購入金額

    1,100円

  • 購入日

    2023年04月13日

  • 購入場所

    イオンシネマ

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