現在私がメインに据えているDAPは、Cayin N6iiにオーディオマザーボードR01を組み合わせた、N6ii/R01という製品です。
元々オーディオマザーボードT01を単品で持っていて(異様に安かったので何となく買っておいた新品未開封)、それを活用するためにN6ii/E02のオーディオマザーボード欠品という個体を買い、結果的にN6ii/T01が1台出来上がったという形でした。
その後成り行きでN6ii向けのオーディオマザーボードとして最後発かつ最高価格となるディスクリートR-2R DAC採用のR01にグレードアップして、T01がそこからはじき出されて余っていたのです。
N6iiの最終進化形がR01と組み合わせた形であることは間違いないと思うのですが、しばらく使っていたT01も個人的には結構気に入っていました。N6iiは元々オーディオマザーボードA01(AKM AK4497EQ搭載)と組み合わされたN6ii/A01が最初に発売されていたのですが、この発売直後に試聴した時点では、私の中でのN6iiという製品の評価は決して高いものではありませんでした。10万円クラスとして妥当な水準こそ保たれていたものの、変な強調感があり質感は高くないという、ポータブルオーディオにありがちな完成度の低い音という印象しかなかったのです。その印象が少し変わったのがT01の発売によるもので、その後E01(ESS ES9038PRO搭載)やR01のリリースにより満足度が高まったことで結局購入に至ったわけです。
このような経緯があったため、マザーボード欠品で格安なN6iiの本体が中古で出てきたらもう1台買って、N6ii/T01を復活させようと考えていました。しかし別にオーディオマザーボード欠品でなくても明らかに安いものが出てくれば買っても良かったわけで、それがたまたまN6ii/A01という、個人的に最も印象の悪いN6iiだったわけです。
当然A01は良い印象がなく、早々にT01に換装するつもりではいたのですが、念のためA01でテストをしてレビューにまとめておくことにしました。
主要な付属品に欠品はなく、外装のコンディションも悪くはない個体で、何故妙に安く売られていたのか正直理由はわかりません。中古保証もきちんと6ヶ月付いてきていますし…。
ちなみに購入金額は下に記載した通りですが、実際にはこの販売店の6千円分クーポンを持っていたため、ここから6千円引いた額が実際の購入金額となります。
当然ですがオーディオマザーボードを見ない限り外観上の差は全くありません。ケースはどちらも純正の添付品を使っていますので、見分けは付きません…。
悪い意味でポータブルプレイヤーらしい音
それではメイン機として使っているN6ii/R01と、今回入手したN6ii/A01の比較試聴をしてみましょう。全く同じ内容のmicroSDXCカードを用意して、そこから再生する形で試聴しています。
オーディオマザーボードによって設定項目に差があるのですが、可能な限り同一条件になるように設定して比較試聴しています。
まずは「Forgotten Toys / David Paich」から「First Time」を聴いてみます。
音場の広さはそれほど大きな差は無いのですが、その空間の中での密度感やヴォーカルの肉声との近さは明確にN6ii/R01が上回ってきます。A01は一聴すれば低域方向が充実しているように聞こえるのですが、実際にはベースの帯域の量感を盛っているだけで深さはありません。また、この盛っている低域がやや高めの周波数帯となるため、キレの鈍さや見通しの悪さに繋がってしまうのもいただけない点です。発売直後にしっくり来なかったあの印象はやはり正しかったと再認識します。
「Generation Radio / Generation Radio」から「Why Are You Calling Me Now?」で比べてみると、冒頭のドラムソロで明確な差が付いてしまいます。A01はバスドラムの解像度が低く、量感はあるものの力感が乏しくなります。スネアドラムの明瞭さも1グレード以上の差がきっちり付いてしまいます。ジェイソン・シェフのヴォーカルもA01は生気に欠け、生っぽさが感じられません。同じN6iiでありながら音の印象には大きな差が付いてしまいます。
「ICONIC / David Garrett」から「ショスタコーヴィチ:3つの二重奏曲 作品97dから第1番:前奏曲 feat. イツァーク・パールマン」を聴くと、これまでで最もグレード差がはっきりと感じられました。とにかくヴァイオリンの音色が全く違います。特にイツァーク・パールマンの哀愁を帯びた音色がR01では高いレベルで再現されるのに対して、A01ではただ弾いているだけにしか感じられなくなりますし、そもそもヴァイオリンが作り物っぽくしか聞こえません。N6iiの発売直後よりは自分が使っている環境がある程度進歩していますので、少しは印象が変わるのではないかと期待したのですが、そのようなことは全く無く、むしろかつて感じられた差に確信を持っただけに終わりました。
ここまで聴いた時点でA01に早々に見切りをつけ、T01へと換装してみたのですが、正直言ってT01でもR01との差はかなり大きく感じられます。それでも変な強調感や作為的な表現はあまり感じられず、純粋にR01に下位モデルと言われてしっくりくる程度の音は保っています。N6ii/A01とN6ii/T01は販売価格でに大きな差はありませんので、もし今からN6iiを入手しようと考えている方がいらっしゃるとすればN6ii/T01の方をお勧めします。バランス接続が不要であればN6ii/E01もなかなか魅力的です。逆にバランス接続専用となるE02(ESS ES9038Q2Mデュアル搭載)は傾向的にA01にやや近く、魅力に欠けるように思いました。
N6iiの本領を発揮させるために欠かせないR01が、残念ながら生産完了かつ直販でも完売という状況であり、R01を入手できないという前提であればコストパフォーマンス面でN6ii/T01が最もお勧めとなります。
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購入金額
32,800円
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購入日
2023年04月09日
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購入場所
フジヤエービック
harmankardonさん
2023/04/12
そしたらヘッドホンで聴こうかと.ヘッドホン→イヤホンから,再びヘッドホンに戻りつつある状況です.
最近のDAPは重いですよね.
jive9821さん
2023/04/12
私の場合は元々家ではヘッドフォン、外出時にイヤフォンと
完全に使い分けています。そうなるとそれほど使う機会が
多くないDAPを複数持つ意味はあまりないのですが、今回は
N6ii/T01への思い入れで無駄な買い物をしてしまいました。
個人的には普段からスマホを複数持ちしているためか、多少
DAPが重くてもあまり気にならないようです…。