ここ数ヶ月ほど、アメリカの共同購入サイト「Drop」(旧Massdrop)で、JVCブランドのイヤフォン類の格安販売が頻繁にあります。
日本でも同じ製品が売られているHA-FW01は$120、HA-FW1000Tは$149など、日本市場の価格を知っているとかなりの格安さが目立ちます。
その放出されているJVC製品の中では最上位となるイヤフォンがこのHA-FW1800というモデルとなります。HA-FW1800は日本市場では出回っていないモデルですが、日本で販売されているHA-FW1500のデザイン違いというべきもので、中身は同一の構成です。
具体的にはハウジング背面が黒塗装でビクターの象徴「ニッパー」(蓄音機に耳を傾けている犬)が印刷されているのがHA-FW1500、金塗装でJVCロゴだけなのがHA-FW1800となっていて、それ以外の違いは無いはずです。
日本で買えばHA-FW1500は6万円台の製品ですが、DropでHA-FW1800を買うと$219で、私の購入時点で日本円換算しても28,000円少々でしかないのです。この価格であればHA-FW1500の中古を買うより安価ですから、時間はかかるもののアメリカからの取り寄せを選択してしまいます。
「日本製」と明記されたものをわざわざアメリカから取り寄せるというのも妙な気分ですが、この方が安くなるのですから仕方ありません。
箱の外枠を取り去ると、JVCのロゴが印刷されている以外は黒一色のシンプルなデザインの箱に入っていることが判ります。
「艶」や「余韻」ではない付帯音
イヤフォン本体はもとより、ケーブルやイヤーピース(Spiral Dot+)も日本市場向けのHA-FW1500と特に違いは無いようです。
添付のケーブルおよびSpiral Dot+ Mサイズを装着した状態です。過去のSpiral Dotは他社製より表記サイズに対して実寸が小さめであったため、他社製でSまたはMSが丁度良い私であればMサイズで行けるかと思ったのですが、実際にこの後の試聴ではしっくり来ず、すぐにMSサイズに交換してしまいました。
振動板だけではなくハウジング部分も木製であることが見て取れます。個人的にHA-FW1500よりも配色は好きですが、背面はJVCロゴよりニッパーの絵の方が良いですよね。
それでは早速音を確認してみましょう。私は基本的にCIEM 2pinのイヤフォンを使っていますので、あまりグレードが高いMMCX対応ケーブルは持っていません。そこで今回は標準添付のケーブルで試聴しますので、アンバランス接続のみということになります。試聴に使うDAPは、私のメイン機であるCayin N6ii/R01です。
HA-FW1500を発売直後に聴いた時点では、率直に言ってJVCの最高峰モデルHA-FW10000よりはHA-FW1500の方がまだ聴けるバランスかなと思っていました。HA-FW10000は低域の重量感などはイヤフォン離れしていますが、低音の質自体はお世辞にも高くはなく、またヴォーカルや弦楽器などに他のイヤフォンとは明らかに違う付帯音のようなものがついて回るのが納得できませんでした。HA-FW1500はそれと比べるとスケールは落ちるものの低域方向のレスポンスが良く、ウッドドームカーボン振動板の癖もやや大人しいという印象があったためです。
しかし、写真にある「CWF I / Champlin Wiliams Friestedt」聴いてみて頭を抱えました、低域方向のレスポンスの良さは以前試聴した通りと思ったのですが、ヴォーカルが明らかにひどく脚色されています。このままでは聴くに堪えないと思い、Astell&Kern A&Futura SE100に差し替え、そのまま時々休憩を挟みつつ、3日間ほど鳴らしっぱなしにしてみました。
トータル60時間ほど鳴らしてみてN6ii/R01に戻して試聴を再開しました。
基本的には第一印象とそれほど大きくは違わないのですが、ヴォーカルの質がある程度はまともな方向へと変化していました。少なくともようやくジョセフ・ウイリアムスのヴォーカルが何とか彼の声に聞こえる程度には改善されています。ただ、低域のヌケが良くなった結果、低域から中低域にかけての密度感がやけに薄いことが気になります。そこでイヤーピースを標準添付のSpiral Dot+からAZLA SednaEarfit CrystalやSednaEerfit VIVIDのSSサイズに交換してみたところ、こちらの方がしっくりくるようです。最終的には付帯音が最も少なく感じたSednaEarfit VIVID(Green)のSSサイズで、耳にしっかりと押し込む形で装着するのがベストという判断になりました。
この状態では低域~中域までのバランスはまずまず良好です、ただ、高域は出ていないわけではないのですが、質が余り良くありません。金属感が上手く表現されていないため、出ていても妙な安っぽさが常につきまといます。
また、大幅にマシにはなったものの、やはりヴォーカルに固有の音が常に乗ってしまうのがどうしても気になります。ウッドドームカーボン振動板の音を「艶がある」と評する人がいるのですが、はっきり言ってこれは艶などではなくただの付帯音です。ウッドドームカーボン振動板のイヤフォンは大体一度は試聴しているのですが、どれを聴いてもこの付帯音が気にならない製品はありませんでした。JVC製(製造はこれまで日特でしたが)のイヤフォンの最大の弱点がウッドドームカーボン振動板ではないかと思っているほどです。
5万円以上クラスのイヤフォンとしてみると、この音ではちょっと魅力薄というのが本音です。ただ、今回は3万円以下で購入していますから、そのクラスの製品として考えれば水準はクリアできているのではないかと思います。
個性的なイヤフォンが欲しいなら選択肢にはなり得る
その後DAPをSE100や、HiBy R6Pro ALに交換するなどして数日聴き続けても、根本的な印象は変わらなかったのですが、ふともっと「強い」アンプで鳴らしたらどうなるのかと思いつき、Chord Hugoに繋いでみました。
さすがにHugoの駆動力はなかなか強烈でした。低域方向の解像度が見違えるように向上しますし、バスドラムの細かいタッチやベースラインの細かい部分まできちんと表現できるようになりました。ただ、Hugoを以てしても、中域より上に乗ってくる付帯音を排除することは出来ていません。
このイヤフォンは何を聴けばマッチするのかと考えていたのですが、Hugoとの組み合わせの場合ジャズのウッドベースの音などはなかなか魅力的です。ただピアノや金管楽器の音まで含めるとそこまで魅力的ともいえません。ヴォーカルものは論外ですし、クラシックでもヴァイオリンの音を聴いてしまうと素直には納得できないものを感じます。
昔買ったHA-FX850もそうだったのですが、部分的な魅力は理解できても、この音に合う音楽を見つけられない、つまり使い処が見つからないのが、私にとってのJVCのウッドドームカーボン振動板採用モデルです。
HA-FW1800やHA-FW1500の美点は、ウッドドームカーボン振動板モデルとしては低域方向のレスポンスが良いこと、他のモデルと比べれば緩さが感じられないことで、その意味では割合「普通」に近い音だということです。
私としては敢えてお薦めするほどの製品ではありませんが、ウッドドームカーボン振動板の付帯音を含めて好きな人であれば、日本円換算で3万円を割るHA-FW1800は悪くない選択肢といえます。定期的に国際便の送料無料キャンペーンなどもありますので、そのキャンペーンとHA-FW1800の販売時期が重なれば入手するのもアリでしょう。
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購入金額
28,339円
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購入日
2023年02月24日
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購入場所
Drop.com
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