所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ミュージシャンの入り口として、最近YouTubeをはじめとした動画投稿が認知されてきましたが、学生時代の楽器演奏動画投稿⇒弾いてみたYouTuberとして人気が出る⇒実績あるバンドに加入、プロ活動開始...というステップで世に出てきたプレイヤーがいます。そんなプレイヤーが、学生時代の動画投稿の集大成として創った「卒業アルバム」をご紹介します。
Fami。( ふぁみ。)、ベーシスト。
最近多い「動画投稿出身」のミュージシャン。ミニスカートで暴れながら?ベースを弾く女子高校生としてYouTubeで活動し、高校生活を通して投稿した。初投稿の「ロキ」の当時は、演奏そのものはまぁ上手いものの、「弾いてみた」プレイヤーとしては大きな特徴はなく、あまり強く印象に残るものではなかった。それが1年ほど後に投稿した矢島美容室の「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」あたりで吹っ切れたのか?、その後「おジャ魔女カーニバル」のタッピングの嵐で魅せはじめ、DECO*27の「ゴーストルール」の投稿付近で、「基本スラップ、ときどきタッピング、スパイスに特殊奏法を効かせて、そして常に暴れながら弾くw」というプレイスタイル?を確立する。この暴れ方のインパクトがあったのか、今では彼女の動画の多くが再生回数10万回を越え、中には1000万再生を回している動画もある(2023年2月現在)。
そんな彼女が、弾いてみた動画投稿者として過ごした高校生活の集大成として、アルバムを制作した。
制作資金としてクラウドファンディングを行ったのだが、目標金額1,270,000円に対して、6倍以上の8,070,268円を集め、無事1stアルバムを制作することが出来た。
その1stアルバム、タイトルはまんま“卒業アルバム”。
高校生活の型にはまらず、YouTubePlayerとしてWebの世界に飛び出し活動した彼女の人脈で、複数のボカロPやプレイヤーがかかわっており、単なる「卒業記念CD」に終わらせていない。
「べぇすかぁにばる」。配信でもリリースされている本アルバムだが、唯一配信には含まれていないのがこの曲(要するに物理CD特典)。創ったのは、ボカロPとしても活躍する芸人の粗品。ちょっとコミカルでアニメのテーマソングのような覚えやすさがあるこの曲を歌うのは当然Fami。で、ベースも彼女なのだが、単にスラップのベースラインを弾くだけではなく、コードもソロもベース(多重録音)というベースフィーチャリング...というかモリモリなw曲。ベースの魅せ場はぎゅっと凝縮して、出すぎないアプローチをとった、このアルバムの他の楽曲とはちょっと異質。その割には、歌をメインにするところでは、打ち込みのドラムと饒舌なスラップベースのみで、ベースの重ね録りなしの部分もあって、メロディメイン、というのは崩していない。
「PASSION」は、ボカロPのるりまるが曲を書き、Fami。が詞を書いた曲。面白いのは、歌詞に使った言葉の断片をクラウドファンディングで募集したこと。「ふぁみ。アルバム収録曲に歌詞を入れられる権利」として500円の値付けがされ、これに応募した人の言葉をつなぎ合わせて曲としたらしい。曲の方は非常に爽やかな造り(最初はね....)。配信アルバムの場合はこの曲が1曲目になるわけで、ゴリゴリベースでアクの強い「べぇすかぁにばる」からはじまる円盤版とはかなり印象が異なるのでは?Fami。のベースと息のあったリズムを形作るのは、この作品の複数の楽曲でドラムを叩く青山英樹。父譲り?(英樹の父は名ドラマー故 青山純)のタイトなリズムで、ベースが五月蠅くなりがちのベースプレイヤーの楽曲を上手く締めている。ただ、ゴリゴリ来るベースソロのあたりで、それまでの抑えたプレイも、爽やかな曲調もダイナシだがw
「ぱおん。」は、弾いてみたベーシストのソロアルバムなのにFami。がベースを弾いていないという異色曲。ベースは同じく演奏動画出身で、二十歳ソコソコでGACKTのサポートベーシストを務めるIgo(囲碁健康体操)。曲はニコ動で殿堂入り楽曲も出しているいぶすきが詞とともに書き、ギター(Leda)、ドラムス(裕木レオン)を加えたバンド仕立ての楽曲で、ユニゾンリフも多用したテクニカルなのに、♪どう生きたって正解/ぱおんぱおーん♪とコミカルでキャッチーな歌をFami。が楽しげに歌う。
ベーシストのアルバムなのでベースの魅せ場がある曲が当然多いのだが、Fami。が曲を書いた曲も、編曲は他者(みきとP)に渡しているのが功を奏したのか、一曲目以外はベース過剰感はあまりなく、良い塩梅。むしろ、「ヴォーカリストFami。」の方がフィーチャリングされている気配すらある。楽曲としてよくまとまっていて、とくに好んで投稿していたボカロ系楽曲なので、「塩梅」がわかっているのか、曲盛り上げる歌い方やベースプレイをしていて、「暴れ弾きベーシスト」の絵(映像)がなくてもきちんと楽しめる作品になっている。
そんな彼女だが、先日メンバー全員が女性のヘヴィメタルバンド、LOVEBITESに参加することが発表された。これは前ベーシストの脱退で活動休止を強いられていたLOVEBITESが、全世界公開オーディションを行い決定されたこと。
これに伴い、弾いてみた動画に関しては当面休止、という案内が出ているが、いままで彼女があまり外に出してこなかったヘヴィメタルと言うジャンルという部分が、この作品の延長線ではないので、新ジャンルに注力するんだろうな、と(あとイメージ的にもヘヴィメタバンドメンバーとちょっとコミカルな面もあるボカロ系楽曲の弾いてみたプレイヤーではかけ離れている)。ただ、オーディション内容が、LOVEBITES側が用意した楽曲に、オリジナルのベースラインをつけて演奏する、ということだったので、この活動によりFami。の新たな面が見られるのかもしれない。
そういう意味でも、学生時代の活動からの「卒業」を感じさせる作品です。
【収録曲】
1. べぇすかぁにばる
2. PASSION
3. L.FEVER
4. ぱおん。
5. memoria
6. 自己愛メイクセンス
7. 青春ロック
「PASSION」
つべの向こうで飛び跳ねながらベースを弾くFami。だけではない一面が見られる
プレイ動画はインパクトを考慮してか、派手にステップを踏み、髪を振り乱しながら弾く姿が印象的だが、当然音だけのCDでは別のアプローチをとってきた。
「動画の彼女」を期待しすぎると、ちょっと方向性が違う。
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購入金額
3,000円
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購入日
2023年01月27日
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購入場所
ふぁみのマート(BOOTH)
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