中国の高級イヤフォンメーカー、qdcは日本でもすっかりと定着したブランドです。同社としては廉価製品となるUranusは、3万円クラスのイヤフォンとしては私も特にお勧めする1本となっています。
そのqdcですが、今年の4月から国内の代理店がミックスウェーブからアユートへと移管されました。
最新モデルTIGERなどは最初からアユート発売となっているので良いのですが、従来のラインナップはアユートへの移管後もミックスウェーブ扱いの製品が数多く市場で流通している状態です。
それが理由なのかは定かではありませんが、先日ヨドバシカメラの通販で、ミックスウェーブ時代のqdc製品が一斉に大幅値下げとなりました。
本来は以前聴いて気に入っていた6SE辺りが欲しかったのですが、生憎重度の予算不足により、辛うじて購入出来る金額であった3SH SEで妥結しました。以前からUranusを買おうと思っていましたので、その予算で買えるのであれば許容範囲かという考えで…。
貼付されている保証書などで判る通り、ミックスウェーブ扱いの品となっています。
添付品は6.3mm - 3.5mm変換アダプター、航空機アダプター、ケース、イヤーピース(通常のシリコンタイプS,M,L、ダブルフランジS,M,L、シリコンタイプMは本体にも同じもの装着済)、マニュアル、検査証、クリーニングブラシとなります。
qdcのイヤフォンの特徴はUranusおよびハイエンドモデルを除き、フェイスプレートがマイカ(雲母)製で、個体ごとに模様が異なるという点があげられます。私が購入した個体はこんな感じでした。綺麗ではあるのですが実物は意外と地味に見えます。
音場の広さは特徴的だが、上位モデルよりは密度感が薄い
早速ですが音質を確認してみましょう。一応3日間ほどPCが動いている間はCHORD Hugoに繋ぎっぱなしにして普段聴くような曲を流し続けておきましたので、当初よりはある程度ほぐれた感のある状態です。
DAPはいつも通りCayin N6ii/R01とAstell&Kern A&Futura SE100を使います。イヤーピースはAZLA SednaEarfit XELASTECを組み合わせました。
まずはCayin N6ii/R01の方で聴いてみましょう。
qdcらしいと感じるのは、気持ちよく広がっていく音場と、少しだけ固有の音色が乗る高域でしょうか。以前聴いた上位モデル5SHとよく似ていますが、音場の密度感が薄くなること、低域方向の厚みが無いことで下位モデルであることを実感させられます。とはいえ、この製品の比較対象とするべきなのは、私が所有する製品ではJH Audio MichelleやiBasso Audio IT04等ですから、その辺りと比較して水準として劣ってはいないと思いますから、クラス相応の実力は十分備えていると考えて良いでしょう。
この両者との比較では、Michelleは全ての要素が程々に高い水準でまとまる万能型、IT04は軽めのリスニングに適したタイプと思っていますが、音場の広さはこの両者との比較でも明らかに頭一つ抜けていて、音楽を雰囲気で楽しむには適していると思います。もっとも、じっくりと音を聴くのであれば個人的にはMichelleの方に分があると思いますが。IT04と3SH SEであれば3SH SEの方を取ります。
「Forgotten Toys / David Paich」では、ヴォーカルの質感と空間表現で聴かせるのが3SH SE、弱ドンシャリでまとまったバランスと、力感やエネルギー感を十分に伝え、オケも含めた演奏全体で聴かせるのがMichelleという印象です。「Explosive / David Garrett」ではヴァイオリンの音色が綺麗系なのは3SH SEですが、Michelleと比べるとオケが薄く、総合的なバランスはMichelleが上回ってきます。
続いてAstell&Kern A&Futura SE100でも聴いてみましょう。
SE100は徹底した直接音重視という音質傾向を持つDAPですが、3SH SEとの組み合わせではイヤフォン側の若干演出がかった空間表現がSE100の味気なさを見事に補い、N6ii/R01の時よりもよりリスニングが楽しめる傾向を見せます。
丁度作ったばかりの「安全地帯XIII JUNK / 安全地帯」のLPから起こしたデータを再生してみると、このアルバムの特徴であるアコースティックサウンドはかなり高い水準で再現される一方で、低域は深さや力感がやはり不足します。その辺りを求めるのであれば、より上位の製品を選ぶべきということでしょう。
今後ケーブルの交換などでもう少し密度感を向上させることは出来るかも知れませんが、現時点ではあくまで5~10万円クラスのイヤフォンとして妥当な音、というところです。十分水準の高い音ではあるものの、より上位の存在が透けて見えるという、いかにもミドルクラスらしいまとめ方と感じます。もっとも、今回の購入価格であれば通常価格のUranusを買う程度ですから、その価格を加味すれば素晴らしい満足度なのは間違いありません。
カスタムに近い
音質以外の点で私がこのイヤフォンに感心させられたのは、装着感です。
今回は耳への密着度を重視して音場の密度を損なわないよう、イヤーピースにAZLA SednaEarfit XELASTECを組み合わせたのですが、この状態できちんと装着すると、カスタムイヤフォンに迫るほどガッチリと耳にはまります。本物のCIEMであるHisenior T2 Customより、少し取り外しが楽という程度ですから、ユニバーサルイヤフォンとしては圧倒的な密着度といえます。
カスタムイヤフォンを作るほどでは無いが、カスタム的な装着感が欲しいという方はその点を買って選ぶ価値がありそうです。
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購入金額
31,980円
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購入日
2022年11月05日
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購入場所
ヨドバシ.com
harmankardonさん
2022/11/10
jive9821さん
2022/11/10
3SH SEに関しては、以前聴いた5SHとある程度似ているという
印象は受けましたね。ただ、6SE辺りだとまたちょっと違った
傾向ではあったと思います。
個人的にはqdc製ならDrop.comで時々出てくるAnole V3II SEが
面白そうと思っているのですが、この円安ではなかなか手を出せず…。
harmankardonさん
2022/11/11
jive9821さん
2022/11/11
その意味では最も安価なNeptuneの完成度の高さが光ると
思っています。ただ、Neptuneは数あるうちの1本なら良い
製品ですが、メインの1本としては選びにくいので、結果的に
Uranusがイチオシとなってしまいますね。