所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。創作物の本来の予定が途中で絶たれてしまうことは珍しいことではありません。特に、音楽にしろ、小説にしろ、マンガにしろ、商業ベースに乗っているものは、売り上げなどに左右されたりします。また、長く続くシリーズでは、著者が鬼籍に入って絶筆...と言うこともあります。ただ、それ以外の理由でも、突然シリーズ絶たれる場合もあります。そんな連作が予定されていた楽曲の予定外の最後の作品をご紹介します。
mink(이밍크:イ・ミンク)。韓国籍の歌姫。20世紀末~21世紀初頭、宇多田ヒカルや倉木麻衣、MISIA、嶋野百恵といったソウルテイスト、R&B系の女性ヴォーカリストが多数現れたが、それより若干遅れて、2005年8月“mink”
でデビューした。
活動の最終章としては、2008年に散発的にミニアルバム
とベストアルバムを出したが、録音済み音源の商品化、という感じで、実際には2007年末リリースのシングルあたりまでが活動のアクティヴ期間という感じ。
その彼女のラストシングルが、本作“Sense”。シングルにありがちな、派手でキャッチーな方向ではなく、しっとりとminkの美ハスキーな歌声を「聴かせる」方向の作品。
「Sense」。コモリタミノル(小森田実)の筆になるバラード。スローな打ち込みバラードだが、ちょっとゴスペル調の節回しがあるのが、これはキリスト教徒だったというminkに「寄せた」のかも知れない。その節回しを難なく歌いこなすminkも流石だが。歌詞はminkとコモリタの共作。♪Baby, I wanna hold you tight/光を放つ世界に/かけがえのない君がいる♪と歌われるサビの、ラスサビ最後だけ、♪かけがえのない僕がいた♪と重ねて過去形で歌われるのが、後から思い返すと意味深。
「Love is...」は打ち込みリズムの上でピアノが奏でるミドルテンポ曲。無機質なリズムに被せて、minkの、張るとハスキーさがやや薄れて透明感を増す声が響く。ファーストインプレッションとしては、やや「地味」な曲なのだが、1st verse⇒2nd verseと「起」⇒「承」という感じで、徐々に彼女の声だけで盛り上げていき、「転」に当たるブリッジ部で色をつけ、「結」の落ちサビで大きなスケールで終わる、という「歌を聴かせる」曲。
「Amazing grace~from mink summer live 2007 "Shalom"~」は、第二のアメリカ国家とも言われる、あの賛美歌の「Amazing grace」。上手い!こういった「誰でも識っている曲」というのは、優劣がわかりやすいが、ロングトーンの伸びといい、フェイクの上手さといい、言うことない。2007のライヴテイクで、バンドのメンツも豪華。ドラマー青山純、ベーシスト伊藤広規、ギタリスト鈴木健治、キーボード&コーラス佐々木久美、ピアノ下田義浩、パーカッションMac清水(清水祐一)と半分くらいMISIAのツアーバンドと被っている盤石のメンバーで、minkの歌を盛り上げる。
DVDは表題曲「Sense」のMV。父娘で営む大衆食堂のなかで繰り広げられる人間模様。女子高生グループでのいさかい、母がいない父子が泣きながら食べる夕食、そんな人々の関わりが繰り広げられる食堂の厨房で鍋を振る父、背中で語る...という監視で、曲にはとても合っている。もともと、デビュー年は写真の一枚もなく、露出が極端に少なかったminkだが、このMVでも姿を見せていない。
そんなもともと「露出が少なかった」minkだが、この作品の後、パッタリと消息が途切れる。以前から本人露出はライヴだけで、それもあまり回数はなかったので、次のシングルをおとなしく待っていたのだが、いつまで経ってもリリースされず。
本作は、実は「4 seasons」と名付けられた連作の一つ。「4 seasons」は前作の「夏盤」“Together again”で幕を開け、「秋盤」である本作“Sense”に続いていた(本作のリリースは「秋」である2007年10月31日)。本来であれば、2008年になって1月ごろに「冬盤」、4月頃には「春盤」が出て、「四季」が完成するはずだった。
それが、突然途絶えた。
その後ミニアルバムでいくつかの楽曲はリリースされたが、シングルのシリーズ中断に関してはレーベルからも何の発表もなかったので、宙ぶらりんなままだった。
かなり経ってから、minkのバンドにいたこともある佐々木久美のブログで、今は音楽を辞め、韓国に帰っていると報告があり、韓国で逢ったときの元気な様子も綴られていたので、最悪の結末ではなかったのだな、と安心したものの、「音楽から離れて幸せに過ごす」様子からは、なにか大きな出来事があったのかな、と。
あとふたつ季節を渡って、閉じてから旅立って欲しかった気持ちもあるけれど、一年の半分で終わってしまったシリーズが、今後どういう展開を見せたのか、それを想像する余韻も....?
そんな歌姫の、予定外の最終章の作品でした。
両ディスクにもジャケと同じ写真が刷られているのだが、見づらい
【収録曲】
<CD>
1. Sense
2. Love is...
3. Guilty as sin (original)
4. Amazing grace~from mink summer live 2007 "Shalom"~
<DVD>
1. Sense (Video Clip)
「Love is...」
minkの歌の上手さは堪能できるが....
本来4連作の2つめで、「承」扱い、「オッ」と耳を惹くようなアピール度には欠ける。
-
購入金額
1,575円
-
購入日
2007年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。