レビューメディア「ジグソー」

質は高いが、あと1つ何かが足りない気がする

1967年結成、1969年レコードデビュー、現在まで活動休止無しという大ベテランロックバンド、シカゴの38作目オリジナルアルバム「Born For This Moment」が7月15日に発売となりました。

 

ただ、この発売日は今までに無く地味なものとなりました。これまでシカゴが発売したアルバムの中で、企画盤やベスト盤を除く完全新作ではきちんと日本盤が発売されていたのですが、今回はついに国内盤が用意されなくなってしまいました。ここ数作は輸入盤と国内盤を両方買うことが続いていたのですが、国内盤が用意されておらず久々に輸入盤CDのみを購入する形です。アナログLP盤も用意されているのですが、発売時期がCDとは結構離れているため、CDで出来を確認してからアナログ盤を買うかどうか決めようと考えていて、現時点ではCD1枚のみの購入です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までのジャケットはデザインモチーフがあって、そこにシカゴのロゴを当てはめるというデザインだったのですが、今回は単にロゴと文字のみの構成でちょっと戸惑いを覚えます。

 

 

 

 

 

 

 

ジャケットの内側やCDの盤面も同様にシンプルなデザインです。

 

 

 

 

 

 

 

ブックレットの真ん中はメンバーの集合写真となっていますが、今回はかつて無いほどメンバーの入れ替わりが激しく起こりました。

 

まず、36作目「Chicago XXXVI "NOW"」制作後に脱退が発表されたジェイソン・シェフ(Vo,B)と交代して加入したメンバーはニール・ドネル(Vo)とブレット・サイモンズ(B)だったのですが、専業ベーシストだったブレット・サイモンズが2022年5月に脱退し、エリック・ベインズと交代しています。

 

また、ビル・チャンプリン脱退時にビル自身の推薦により加入していたルー・パーディーニ(Vo,Key)が2022年1月に脱退して、ザ・フーのツアーメンバーであったローレン・ゴールドと交代しています。なお、ルーの甥であるピーター・パーディーニは現在もシカゴ関連の映像制作を行っていて、この辺りの背景はよくわかりません。

 

さらにオリジナルメンバーを除くメンバー中最古参であったキース・ハウランド(G,Vo)も手の怪我をきっかけに2021年12月1日付でそのまま脱退となってしまっています。こちらはツアーでキースの代役を務めていたトニー・オブロータがそのまま加入しています。結成から55年に及ぶシカゴの歴史の中でも半年の間に3人もメンバーが交代したことはなく、嫌でもバンドの存続を意識させられる状況でした。

 

 

 

 

 

 

今回も「Chicago XXXVI "NOW"」制作時に構築されたモバイル・レコーディングシステム「The Rig」が活用されていて「いつでもどこでも録音された」という記載があります。

 

 

更新: 2022/07/19
総評

どうしても「終わり」の気配が・・・

まずは収録内容を確認してみましょう。全14曲で全て新曲となります。

 

 

01. Born for This Moment
02. If This Is Goodbye
03. Firecracker
04. Someone Needed Me the Most
05. Our New York Time
06. Safer Harbours
07. Crazy Idea
08. Make a Man Outta Me
09. She's Right
10. "The Mermaid" (Sereia Do Mar)
11. You've Got to Believe
12. For the Love
13. If This Isn't Love
14. House on the Hill

 

 

今回はブックレットを確認してみるといくつか驚きがありました。過去の作品ではメンバーの脱退があった場合には、脱退したメンバーの残した素材が使われることはまずありませんでした。しかし本作ではルー・パーディーニやキース・ハウランド、ブレット・サイモンズの演奏やコーラスはしっかりと活用されています。8曲目「Make a Man Outta Me」に至ってはジェイムズ・パンコウ(Tb)とキース・ハウランドの共作であり、辞めたメンバーの作った楽曲がそのまま収録されるというのは記憶にありません。

 

本作からのリード・シングルは「If This Is Goodbye」で、こちらは公式で歌詞付きのビデオとPVが用意されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

率直に言えば、先に公開された「Official Lyric Video」を視てドキリとさせられました。この歌詞を読んでしまうと「これがバンドの最終シングルだ」と説明されても不思議無い内容だったのです。その後伝わってきた情報ではこのアルバムの完成後も新曲は制作しているとのことですが・・・。

 

まあ、現時点で終わりを考えていないとしても、残った3人のオリジナルメンバー(ロバート・ラム、リー・ロクネイン、ジェイムズ・パンコウ)はいずれも70代後半、日本風に言えば後期高齢者という年齢となってしまいました。現在のシカゴは完全にロバート・ラム主導のバンドであり、彼が活動できなくなったら恐らくその時点でシカゴそのものも活動を終えることになるでしょう。そう考えるとこのような曲が出てくるのも必然なのかも知れません。

 

そのような中でもちょっとした遊び心を感じさせるのが5曲目「Our New York Time」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

シカゴの楽曲を知っている人であればすぐに判るであろう、デビューアルバム収録曲「Beginnings」のイントロを殆どそのまま持ってきているのです。ツアーで「Beginnings」を始めると見せかけてこの曲を演奏してくれたら良いサプライズになると思うのですが、実際にあるかどうかは何とも言えません。

 

 

本作はメンバー外のミュージシャンも身内のような顔ぶれが多いのですが、比較的名前が知られたゲストは「Someone Needed Me the Most」に参加しているボビー・キンボール(元TOTO)や「For The Love」を共作して演奏にも参加している著名ギタリスト、ブルース・ガイチ程度でしょうか。まあ、ブルース・ガイチは「Night And Day ~Big Band」制作時にシカゴの正式ギタリストが不在だったことでメンバー並みに参加して、この作品における名誉メンバーのような扱いとなっていますが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個人的に前作に当たる「Christmas Album (2019)」はシカゴらしい音に感じられず、かなり辛い評価をしていました。それと比べれば本作はシカゴらしい楽曲の水準や演奏がある程度戻ってきている感はあります。

 

ただ、良い意味で予想を裏切ってダイナミックな音を聴かせてくれた「Chicago XXXVI "NOW"」の水準に達しているかと言われれば、残念ながらそこまでではないと思います。

 

今までのシカゴはリード・ヴォーカルは常に3人体制でしたが、本作におけるリード・ヴォーカルはロバート・ラムとニール・ドネルの2人だけであり、シカゴの看板の一つであったヴォーカリストの歌い分けが無いというのが、まず違和感の一つではないかと感じました。ニール・ドネルはヴォーカルに楽曲制作にとかつてのジェイソン・シェフ並みに活躍しているのですが、ヴォーカルも楽曲も、ジェイソンほどの強い印象が残らないということもあります。

 

近年はバンド活動に積極性を見せていたリー・ロクネインの存在感がやや薄くなっていて、「Chicago XXXVI "NOW"」の頃はロバート・ラム、ジェイソン・シェフ、リー・ロクネインの3人がそれぞれバンド全体の推進役となっていたものが、本作ではそういった強い推進力を見せたメンバーがいなかったのではないかという気がします。

 

楽曲の水準やアレンジのまとめ方など、さすがに大ベテランバンドであり一定以上の水準は保っているですが、本作は全般的に何となく小粒感があり、既存のファンが聴けば納得は出来るだろうと思うものの、「Chicago XXXVI "NOW"」のように新規ファンにも聴いてもらいたいというほどの熱は感じませんでした。

 

 

次作がリリースされるとして、その頃には恐らくロバート・ラムは80歳を超えてしまっているでしょう。その時にどんな音が届けられるのか、期待と不安が入り混じる心境です。

  • 購入金額

    2,290円

  • 購入日

    2022年07月16日

  • 購入場所

    あめりかん・ぱい

15人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • PullBarさん

    07/19

    Physical CD入手おめでとうございます。今回は大手は何処も入荷遅れですね。デジタルでアルバムを2度通して聴きました。最初に感じたのが全体的に軽やかなアルバムだなと。どうしてもリードボーカルが二人になってしまい、ボーカルの幅が狭まったのでその点が少し残念です。どうしてもシカゴには3人の異なる声質、タイプの違いが楽曲に幅を持たせる魅力の一つでしたので。バンドとしてのグルーブもXXXVIと比較すると感じにくく、ChicagoというバンドというよりはChicagoというProjectと感じました。ホーンを絡めた大人の落ち着いたアルバムですね。Peter PardiniはLouの親戚とは耳にしてましたが、「実弟」だったんですか。Louが今、70歳なので、かなり歳が離れてますね。
  • jive9821さん

    07/19

    > PullBar さん

    コメントいただき有難うございます。

    まず訂正ですが、ピーター・パーディーニは伝聞で書いてしまって
    いたのですが、調べたところルーの甥ということでした。本文は
    既に修正させていただいております。

    実は今回、普段あまり使わないショップを、何となくで利用したの
    ですが、ここが数少ない発売日にきちんと入手できた店だったようで、
    これは幸運だったと思います。

    >全体的に軽やかなアルバム

    >バンドとしてのグルーブもXXXVIと比較すると感じにくく
    >ChicagoというバンドというよりはChicagoというProject

    この辺りの感想は全く同感です。前評判では「現代版のChicago
    VII」とのことだったのですが、VIIと比べてもやはりちょっと
    大人しすぎるかな、という印象でした。年相応の変化と言えば
    それまでなのかも知れませんが・・・。

    実質的な前作である「XXXVI」が予想以上にエネルギッシュな
    作品であっただけに、ちょっとハードルを上げすぎていたのかも
    知れません。

    ただ、シカゴ脱退後に発表されたジェイソンの「Here I Am」の
    充実ぶりを聴いていると、彼を失った影響は小さくないな、とも
    感じます。
  • PullBarさん

    07/20

    ソングライターとしても優れているJason Scheff, Lou Pardiniが脱退した影響は大きいですね。
    耳にしているところではDennis DeYoungが新譜を2作に分けて2020, 2021年にリリースしたように、Chicagoも発表するということなので、XXXIXとして発表去れる次回作がどうなるのかも今から気になります。Tony Obrohta, Loren Gold, Eric Bainesが曲作り演奏に関わるのかも。
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