レビューメディア「ジグソー」

ビフォー/アフター "Peter Cetera"

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。バンド、という集団でその核となる人物が去ったあと、残されたメンツはどう活動するのか、そんな難しい問題に取り組んだ作品をご紹介します。

Chicago。もうすぐ半世紀に届こうか、という歴史を持つこのバンドの「予定された最大の危機」はこのアルバムの前にあった(「予定されていなかった最大の危機」はもちろんオリジナルメンバーの一人、Terry Kathの拳銃暴発事故による不慮の死)。それは20年近くバンドのフロントマンとして活躍したベーシスト兼ボーカリスト、Peter Ceteraの脱退。

複数のメンバーがボーカルをとれるバンドとはいうものの、“16”の「Hard To Say I'm Sorry(素直になれなくて)」、“17”の「Hard Habit To Break(忘れ得ぬ君に)」というChicago中興を支えた2大バラードのメインボーカルで、この頃のChiagoと言えばPeterの透き通る美声とDavid Fosterのプロデュースによるドロ臭さの抜けたブラスとアレンジが最高のコンビネーションだったが、その一つの柱が抜けたあとの動向が注目された一作だった。

良くも悪くも引き続きプロデュースしたDavidのカラーが続き、安心して聴ける作品ではある。

そしてChicagoとしては幸運にもこのアルバムからJason Scheffという逸材を得る。
2012年の現時点でもメンバーとしてとどまる彼は、Robert LammらChicagoのオリジナルメンバーとは一世代近く若い人物だったが、Terryの穴を埋めるために加入したが、世代が違うためメンバーと合わずすぐに解雇されたDonnie Dacusと同じ道をたどることなく、Chicagoを支えつづけている。
新生Chicagoの出発点とも言える作品
新生Chicagoの出発点とも言える作品
そんな彼のデビュー盤とも言えるのが、この“18”。

「If She Would Have Been Faithful」。エレピ+やわらかなブラスで静かにはじまり、コーラスが重なって、ディストーションギターの♪ギューン♪というグリスで始まる、ある意味「ザ・シカゴ バラード」。幸いにして?(いやそういう人物を探したのかも知れないが)Peterと声質が似ていながらも若々しいJasonの声が「新しいChicago」を感じさせる。

このアルバムは曲間が極端に短かったり、長かったりと工夫が凝らしてあるが、バラードの前曲のあとすぐに始まるのが「25 Or 6 To 4」、すなわち彼らの初期の傑作「長い夜」のリメイク。残響と電子音が強調された打ち込みのドラムス。落とされたテンポ。新しいブラスの旋律。ヘヴィなギターソロやリフ。挿入されたキメのフレーズ...結構新味を入れているけれど「長い夜」の「新たな良さ」は出てないかも。メンバーとしてはPeterがいなくとも初期の曲はダイジョウブ、ということを言いたかったのかも知れないが、ちょっと凝りすぎたか?

それこそ初期の懐かしい感じのブラスアンサンブルが聴ける短いInterludeに続いて始まるのは「Nothin's Gonna Stop Us Now」。さわやかなAORで、Buzzy Feiten

との共作。そういえばDonnieの解雇後、準メンバーとしてChicagoのギターを支えたChris Pinnickがバンドを離れ、この作品ではBuzzyを始めMichael LandauやTOTOのSteve LukatherといったDavidのプロデュース作品でおなじみのギタリストが脇を固める。

この作品は大ヒット作「17」のあと、主役とも言えるバンドのフロントマン離脱後、と難しい時期に創られた作品。Jasonも燦めきはみせているがイマイチなじみきってはいない。

でも、現在では「PeterのいないChicago」の方が長い歴史を持つようになってしまったChicagoにとっては「起点」といえるアルバム。

「ビフォー」に引きずられなければ楽しめるアルバムです。
*:Amazonは試聴ファイルがある紙ジャケ盤に繋いでありますが、自分の所持するのは通常廉価盤です。

【収録曲】
1. Niagra Falls
2. Forever
3. If She Would Have Been Faithful
4. 25 Or 6 To 4 (長い夜)
5. Will You Still Love Me?
6. Over And Over
7. It's Alright
8. Interlude (Horns)
9. Nothin's Gonna Stop Us Now (ふたりの絆)
10. I Believe
11. One More Day

「Nothin's Gonna Stop Us Now」

  • 購入金額

    1,800円

  • 購入日

    1995年頃

  • 購入場所

24人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • aoidiskさん

    2012/09/07

    すいません、どんなのはいっていたか

    全然分からず、でも、このシカゴの写真見たら

    COOLしかないですね。
  • cybercatさん

    2012/09/07

    aoidiskさん、コメントありがとうございます!
    >すいません、どんなのはいっていたか
    >全然分からず、
    新版の方はあんまり動画ないなぁ...
    「25 Or 6 To 4 (長い夜)“18”Version」

  • jive9821さん

    2013/01/22

    一応Chicagoマニアの端くれとしてコメントさせていただきます。

    「25 Or 6 To 4」のリメイク版は、もともとJames PankowとRobert Lammで取り組んでいたヘビー系の曲だったものを、David Fosterの提案で「25 Or 6 to 4」のメロディーと合体させて出来上がったものだそうです。残念ながらDavid Fosterが狙っていたほどの反響とはならず、結果的に「Will You Still Love Me?」が大ヒットしたことで救われたということになりましたが。

    ちなみにこのアルバム、CDとLPとで左右の音が逆という問題を抱えているのですが、意外と多くの方は気付いていないようです。
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