Chicagoは以前ご紹介した
が、あの時期(1980年前半)は中興の?時期。その頂点でグループを去ったPeter Ceteraの美声と、名プロデューサーDavid Fosterの采配ががっちり噛み合って、Chicago=バラードのバンド、のイメージが強いが、実はこの1960年代末から続く長い歴史を持つバンドは初期はドロくさいエネルギッシュなバンドだった。
このアルバムにも収められている「25 or 6 To 4 (邦題:長い夜)」のヒットから最初のピークを迎えるが、創設メンバーのひとり、ギタリストのTerry Kathの非業の死(拳銃でふざけていた?(←諸説あり)時に実弾が入っていた)で低迷期に入る。彼の死がこのアルバムの2年後の“Chicago XI(オリジナルアルバムとしては9枚目)”の発表後だったが、Xは「If You Leave Me Now (愛ある別れ)」などのヒットはあるものの、後のPeter路線に通じる洗練さだし、XIにはめぼしいヒットがなく、Terry黄金期のChicagoはベストアルバムである本作「IX」がカバーする「VII」までなのだと思う(なぜか「VIII」からの選曲はない)。-Chicagoはライヴ盤もベスト盤も含めて通し番号をつけていたので、本作は「IX(9)」のナンバーを持つ-
「25 or 6 To 4」。あの特徴的なリフとラッパのラインで始まる名曲。長く演奏された代表曲なので、後のライヴアレンジの方がなじみがあるが、元はEagles
を彷彿とさせるような暗いエネルギーにあふれたロック。Terryのモジュレーターがかかったような音色の長いギターソロが、ものすごい存在感!元題の「(午前)4時25、6分前」を「長い夜」と訳したのは名訳だ。まだ陽もささない夜明け前に、何か言う事を探しながら夜が明けるのを待っている...とは!
「Does Anybody Really Know What Time It Is?」は④過誤らしいブラスロックなのだが、ちょっとプログレの薫りも漂うイントロに時代を感じる。曲に入ってしまえばむしろThe Beatles後期のようなリズムとメロディに合わせて、ブラスのラインが寄り添うように、時にフェイクしながら盛り上げる。特にラストはかなりジャジィ。このあたり、彼らがかつて“ジャズ・ロック”と呼ばれていた所以。
「Saturday In the Park」はこれも代表曲。ラッパのラインが目立つあたりは初期っぽいが、キーボード中心の曲なので今聴いても違和感がない(むしろドラムのデッドな音作りに時代を感じる)。Chicagoと言うバンドは、PeterやTerryに限らず、James Pankowらボーカルが取れるスターには事欠かなかったので、陰に隠れた感があるけれどこの有名な3曲すべてがRobert Lammの筆になるものというのも興味深い。詩もとても深い、若い、鋭い。
政治的メッセージ、世の不条理に対する不満、若さ故のいらだち、社会の矛盾と戦争の傷跡....Chicagoはそんな“熱い”バンドだった。「偉大なる星条旗」という邦題がちょっとシニカル(当時の邦題はつけた人のセンスが??なものも多く、思わず全て掲載-下欄-)。
変わっていくことが、成熟することが、果たして良いことなのか?カッコ悪くても、若いままで、熱いままでいいんではないか、そんな気持ちになる、作品です。
【収録曲】()内邦題
1. 25 or 6 To 4 (長い夜)
2. Does Anybody Really Know What Time It Is? (一体,現実を把握している者はいるだろうか?)
3. Colour My World (ぼくらの世界をバラ色に)
4. Just You 'N' Me (君とふたりで)
5. Saturday In the Park
6. Feelin' Stronger Every Day (愛のきずな)
7. Make Me Smile (ぼくらに微笑を)
8. Wishing You Were Here (渚に消えた恋)
9. Call on Me (君は僕のすべて)
10. (I've Been) Searchin' So Long (遥かなる愛の夜明け)
11. Beginnings
「25 or 6 To 4」
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購入金額
2,800円
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購入日
1990年頃
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購入場所
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