レビューメディア「ジグソー」

著名オーディオ評論家2人による高音質盤

いかにもオーディオ向けという人選で制作されたアルバムです。

 

まず、制作したUltra Art Recordが2人の著名オーディオ評論家、麻倉怜士氏、潮晴男氏による共同レーベルであり、レーベルの基本コンセプトが「大人のための大人の音楽」、命題として掲げるのが「上質な音楽を極力加工せず生成りのままでリスナーに届ける」という、いかにもオーディオファンが好みそうなものです。

 

ちなみに確か麻倉氏が代表、潮氏が副代表となっていたと思うのですが、潮氏のお話を伺った限りでは「面倒なので代表は麻倉怜士に押しつけた」とのことだったと記憶しています。

 

そしてこの作品のメインの演奏家は小川理子。ジャズピアニストという側面もありますが、それ以上にパナソニックの高級オーディオブランド「Technics」のトップであり、パナソニックの家電事業でも役員を務めた人物として知られています。

 

実際、ブランド休止前のTechnicsはオーディオ界の歴史に残る名機を多数生み出したものの、どちらかというと測定値至上主義というかデータ優先の設計で、必ずしもその音への評価がずば抜けたものではありませんでした。

 

しかし、小川氏がトップとなり、製品化への最終決定を下す立場となって以降の新生Technicsは、旧Technicsに批判的だったような人達からも「意外と音が良い」と評価されることが多くなったと思います。音楽的な素養があるトップが就任したことによる効果なのかなと感じます。

 

 

さて、話を本作に戻しますが、3年前のアナログオーディオフェアで、Technicsの試聴イベントを担当された潮氏が、78回転レコードの音を聴いてもらいたいと取り出したのが、本作収録曲を片面に1曲ずつ収録した12インチシングルのサンプル盤でした。これをTechnicsが誇る弩級ターンテーブル、SL-1000Rで聴いたのですが、この音がとにかく圧巻でした。私が愛用しているTechnics SL-1200Gも78回転に対応している製品ですので、このレコードをそのうち自宅でも聴いてみたいと思っていました。

 

ただ、何しろ僅か2曲のみの収録で11,000円(+税)という高価なレコードです。他にも聴きたいレコードはいくらでもありますので、このレコードは後回しになっていました。

 

先日久々に「リリースから日数も経過したので、いくらかでも安く売っているところはないか」と探していたところ、本来のアルバム盤となる33回転の「BALLUCHON」が新品の割になかなか安くなっているものを見つけ、こちらも聴いておこうという気分になり何となく購入してしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナログオーディオフェアではこちらの33回転盤も再生され、78回転盤さえ聴かなければこれも十分に高音質といえるものという感想でした。

 

 

 

 

 

 

 

国内盤としては珍しく、解説がしっかりと付いています。これによると、A面が麻倉氏、B面が潮氏によるプロデュースとのことです。

更新: 2022/06/08
総評

オーディオ的に王道というべき出来

まずは収録曲を確認しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見えにくいと思いますので、書き出しておきましょう。

 

 

Side A

    01. Oh Lady Be Good
    02. Love For Sale
    03. In A Sentimental Mood
    04. Do Nothing Till You Hear From Me
    05. I Got Rhythm
    06. But Not For Me


Side B

    01. Take The "A" Train
    02. C Jam Blues
    03. Smile
    04. Perdido
    05. Nobody Knows The Trouble I've Seen
    06. Lady Madonna

 

A-4の「Do Nothing Till You Hear From Me」、B-3「Smile」では小川理子のヴォーカルも聴くことが出来ます。

 

 

決してオーディオ機器のサンプラーという訳ではないのですが、やはり目立つのは演奏以上に音質的な良さです。特にベースラインの鮮やかさは高音質盤と呼ばれる作品の中でも秀逸なのではないかと思います。一部楽曲で聴けるサックスの質感もかなりリアル感があります。私の中ではジャズ的な音のまとめ方が少ししっくり来ない部分はあるのですが、概ね殆どの人が高音質盤と素直に評すだけの完成度となっているでしょう。

 

演奏内容については、私自身がこの分野の門外漢ですのであまり詳細に語るべきでは無いと思います。ただ、個人的な好みからすると「Take The "A" Train」「Lady Madonna」辺りのアレンジがちょっとしっくりと来ないかな、というところです。「Oh Lady Be Good」の仕上がりは結構好みです。

 

前述の通り2曲でヴォーカルも聴けるのですが、普段Technicsについてのインタビューを受けているときの話し声とは結構印象が異なり、いかにも女性ベテランジャズシンガーという印象です。

 

 

実はこのレコードはシリアルナンバー入りで、私が購入したのは「000440」でした。

 

 

 

 

 

 

 

下手にオーディオ面での予備知識が無い人の方が、純粋にこの作品を楽しめるのではないかという気がします。そういえば3年前のアナログオーディオフェアでは、私はテクニクスブースの最前列の席に座っていたのですが、途中後ろを振り返ると一般客に混じって小川氏が技術者の解説を聞いていました。担当していた技術者の方が妙に緊張していたのはそういうわけだったのかと…。

  • 購入金額

    4,800円

  • 購入日

    2022年06月05日

  • 購入場所

    Amazon

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