以前から何度も触れている通り、私はBluetoothで接続するオーディオの音がどうしても好きになれません。そのため、今大人気のTWS(完全ワイヤレスイヤフォン)も、値段だけで選択したような製品を持っているだけで、殆ど活用できていません。
しかし、ここ最近は「この程度なら何とか我慢して使えるかな」と思える機種がいくつか存在していました。その一つがTechnics製のEAH-AZ60だったのですが、この製品が先日EAH-AZ80、EAH-AZ60M2という2機種にモデルチェンジされました。この2機種は気になったので店頭展示が開始された直後に早速試聴しています。
EAH-AZ80は音もTWSとしてはかなり良質なのですが、コンチャフィットと称する耳の窪みを利用した形状による装着で、長時間つけっぱなしでも疲れにくいという点が素晴らしいと感じました。EAH-AZ60M2は純粋にEAH-AZ60のブラッシュアップ版という感じですが、これも音はなかなかで好印象でした。
この2機種はどちらかそのうち買っても良いかなとも思ったのですが、いずれも最近のPanasonicの方針により価格拘束商品となっていて、基本的に値引きゼロで買わざるを得ません。そうすると決してメインで使うことが無いTWSの金額としてはちょっと高価かな、という引っかかりがあったわけです。
一方、この2機種の発売と同時に急速に店頭から姿を消しつつあったEAH-AZ60は、それまでの27,720円という価格拘束が外されて、2万円弱辺りで売られる機会が増えていました。地元の販売店でも最後の在庫が値下げされていて、丁度その日の夜にスマホアプリでライブの無料試聴が出来るという機会があったため、TWSなら家事をしながらでも聴けるなと思ってしまったことから、その値下げ分の在庫を買ってしまったというわけです。
本当は外装色はシルバーの方が好みだったのですが、最終処分ということで既にブラックしか残っていませんでした。
新生テクニクスは単品オーディオの取扱説明書でもそうなのですが、必ず何かしらのリスナーに向けたメッセージがこのように用意されています。好き嫌いはあると思いますが、最近はAppleの模倣のような高級感の出し方をしている製品が多い中で、独自のスタイルを保っている辺りは評価して良いでしょう。
添付品です。イヤーピースは本体装着済みを含め5種類、説明書類、充電用USBケーブルが同梱されています。
アプリの設定項目は意外と細かい
今時のTWSですから、単にスマートフォンやDAPと接続して音を出すというだけであればまず問題が出ることはありません。購入日にはライブの視聴をするためにiPhone XS Maxと接続しましたが、音楽再生用で使うのであればDAP等に繋ぐことが多くなります。
その際細かく設定を変更するためにはiOS/Androidで提供される「Technics Audio Connect」というアプリが必要となります。
試聴はきちんとしたDAPで行いたいと思ったのですが、Androidアプリを自由にインストールできるものでなければEAH-AZ60が本領を発揮できないということで、こちらを使うことにしました。
このDAPについてはまた後日詳しく紹介することにしますので、今は気にしないで下さい。このDAPにGoogle Play Storeアプリを導入して、そこからTechnics Audio Connectをインストールします。
初期設定では「[Googleログイン名]のEAH-AZ60」という名前で登録されています。必要があればこれはカスタマイズすることも出来ます。Bluetooth接続が確立していれば、イヤフォン側のバッテリー残量なども最初から表示されます。
ノイズキャンセリングモードの切替や、アンビエント(外音取り込み)の効果量を設定することが出来ます。ノイズキャンセリングの出来は予想以上に優秀で、実はこの文章を入力するときにも途中までノイズキャンセリングモードで音楽を再生していて、途中からアンビエントモードに切り替えたのですが、ノイズキャンセリングモードの時には殆ど聞こえていなかった自分のキーボードの打鍵音が、アンビエントモードではうるさいくらいにきちんと聞こえます。
最新モデルのEAH-AZ80では最大3台対応のマルチポイントですが、EAH-AZ60では2台までとなります。もっとも、EAH-AZ80でもLDACで3台のマルチポイントを使えるわけではありませんので、個人的には実用度は大して変わらないかなと思っています。
表記が少々判りにくいのですが、ビットレートやレイテンシーをここで切り替えているということでしょう。自動にしておけばベストエフォートとなる筈です。
所謂イコライザーですが、個人的にはこの類の機能はまず使いません。final ZE8000のように極端にバランスが崩れているのに、音の質自体は悪くないというTWSであれば使う価値はあるかも知れませんが、Technicsは音作りが安定していますし変にいじる必要は無いでしょう。
Androidユーザーは注意した方が良いのがここです。デフォルトで「音質優先」になっているのですが、LDACは無効となっているのです。この組み合わせではLDACを明示的に有効化しない場合にはAAC接続となっていました。
LDACを有効化した後は、きちんとLDACで接続されるようになりました。AACでも基本的な音の傾向は変わりませんが、高域方向の濁りはLDACより明らかに多くなります。全体的な解像度もLDACの方が優位です。
EAH-AZ80の半額なら十分では
それではLDACで接続された状態で実際に音を聴いてみることにしましょう。
さすがにTechnics最上位の有線イヤフォンEAH-TZ700のようなナチュラル感はありませんが、軽くドンシャリにして殆どのリスナーが音楽を気持ちよく聴けるバランスに上手くまとめているというのが第一印象です。1万円台の有線イヤフォンと比較して、Bluetoothによる劣化を除けば互角以上の勝負は出来る音です。
BluetoothイヤフォンとしてはDavid Garrettのヴァイオリンも何とか聴ける質でまとめていますし、ヴォーカルも主な楽器も印象が変わるような音色の劣化は感じられません。
さすがに「I Won't Hold You Back / TOTO」のイントロのピアノはBluetoothによるブリージングが感じられますが、タッチの頭の部分は明瞭で何とか聴ける程度に踏みとどまっていますし、「Born For This Moment / Chicago」ではニール・ドネルの声が少し細身でハスキーですが、何とからしい雰囲気は保てています。シカゴならではのホーンの音色はちょっと厳しいところもありますが…。
以前からの印象通り「ギリギリ音楽を聴ける」というラインを上手く突いているなと感じました。実はEAH-AZ80の方がドライバーの性能が高い分だけBluetoothの劣化をハッキリ感じさせてしまう部分があり、この全てにおいて程々というバランスは初代EAH-AZ60ならではのメリットといえます。
最終価格ではEAH-AZ80のほぼ半額という辺りまで値下がりしていましたので、その価格帯であればEAH-AZ60のまとまりの良さは大きな魅力といえます。2万円以下のクラスのTWSとしては一推しの製品です。
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購入金額
18,810円
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購入日
2023年06月23日
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購入場所
ベイシア電器
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