レビューメディア「ジグソー」

SF定番の冷たい方程式と人間らしさの物語。生活感のある(?)鶴田ワールドが宇宙空間に血を通わせているかも。

  • by
    L2さん
  • 2022/05/13
  • (更新: 2022/05/13)

舞台となるのは、遥か未来の広大な宇宙空間。

人類の版図は、太陽系を越えて銀河にまで広がっています。

その版図を維持する為に、物資を輸送する航路が産みだされていきます。

 

瞬間移動のような技術はなく、人の営みを維持するには往復で数百日も掛かる輸送航路が必要。

物語の主人公は、そんな輸送航路を一人護衛船と輸送船のキャラバンで旅する女性モモ。

 

長大な航路を進む為に、莫大な燃料を積載してしまう化学反応式の推進力は積載量の無駄遣いになるという事で、宇宙船の推進力は全て電力由来となっています。

更には、乗組員の食料問題もあって、たった一人でのオペレーションを余儀なくされていきます。

そこに革命的な技術が導入され、電力と引き換えに食料を産みだす複製機が登場して、ますます一人でコンパクトに輸送航路を旅する事が可能となります。

そうはいっても、一人で好んで数百日も誰とも合わない生活をする人間は珍しい。

そんな時代の設定。

 

ちょっと特殊な趣味と生活スタイルを持つモモ艦長は、黒猫一匹を供として数百日の旅を続ける生活を飽きもせずに長期休暇も取らずに何度も繰り返すという強者。

実は、食糧複製機の応用で紙の書籍を複製出来るという事を発見し、趣味の為に航海に必要な電力を流用して旅を楽しむ為に輸送キャラバンの護衛船に引きこもっているようです。

設定を鑑みるに、複製機を使用する電力は一般人には手を出し難いようで、それを目当てに引きこもっている模様。

宇宙空間を旅していますが、まるで、中世の書庫や大図書館の中に埋もれる本の虫のような生活。

なんとも不思議な世界観です。

 

独特の雰囲気と柔らかなタッチが好きですね。

この世界の護衛船はオタクの楽園なのかもしれません。

多分。

  • 購入金額

    1,320円

  • 購入日

    2022年04月18日

  • 購入場所

    楽天ブックス電子書籍ストア

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