レビューメディア「ジグソー」

現代的高音質レコードの典型

以前掲載したStereo Sound発売の高音質レコード、「安全地帯 ベスト」と同時に購入していたレコードです。

 

 

 

 

 

 

こちらもStereo Sound発売の高音質レコードですが、高音質レコーディング・カッティングの技術に定評あるMIXER'S LABによる制作が大きな特徴となります。MIXER'S LABについてはこちらの公式サイトをご覧下さい。

 

このMIXER'S LABの高音質盤シリーズは、特にTechnicsの試聴イベントでよく使われていて、自分の環境で聴いたら銅のような感じになるか気になっていましたので、どれか1枚は買ってみようと思っていました。今回購入したVol.2は選曲もまずまず好みでしたので、買う価値はあったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その選曲ですが、以下の通りとなっています。

 

 

Side A

 01. Manteca
 02. In A Sentimental Mood
 03. Smile

Side B

 01. A Night In Tunisia
 02. Caravan

Side C

 01. Sing, Sing, Sing
 02. Moonglight Serenade
 03. Memories Of You

Side D

 01. Take Five
 02. Li'l Darlin

 

 

なお、2曲目の「In A Sentimental Mood」ではMALTAのサックスソロを聴くことが出来ます。

 

33回転盤ですが、かなり溝の幅を広く取っていて、片面辺りの収録時間が短くなってしまう関係なのでしょう。この曲数ながら2枚組となっています。また、片面辺りの収録時間を短くすることで、レコードで音が歪みやすくなる内周側を極力使わないことも意図しているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更新: 2022/07/15
総評

「演奏」よりは「音」を聴いてしまう傾向

本作は元々SACD向けに収録されていて、46chのマルチトラック収録されていたそうですが、それを32bit/384kHzのPCMにミックスダウンして制作したそうです。

 

通常であれば高音質盤を制作するのであればハーフインチ・アナログマスターテープを使うのが慣例だったそうですが、ハードウェアを含むデジタル側の環境をProTools(サンプリング周波数上限192kHz)からPyramix(サンプリング周波数上限384kHz)に更新したことで、Pyramixの最高音質であればアナログマスターを超えると判断して、敢えてデジタルマスターで制作したとのことです。まあ、どちらかというとProToolsの純正オーディオインターフェースの音質がそれほどでもないことが原因のような気もしますが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

実際に自分の環境で聴いてみると、いかにもアナログという音ではなく、高解像度で情報量が多い、高性能なデジタルソースに通じる音質傾向という印象です。

 

「In A Sentimental Mood」で聴くことが出来るMALTAのサックスも、彼のソロアルバムよりも数段生っぽさが感じられ、全ての音が全くごまかし無く収録されているように感じられます。恐らく普段OrtofonのSPUで「レコードの音は良いなぁ」と言っている人達の好みには全く合わないものではないかと思います。

 

実際、私はこのレコードから24bit/88.2kHzのWAVを起こして聴いていますが、普段主にポータブルオーディオ機器の試聴ソースとして使っていて、それに違和感を感じません。アナログ的なスクラッチノイズなどがなければ、音質傾向はハイレゾのダウンロードファイルと言われても気付かない人が多いのではないかと思うほどです。

 

音質面で特筆するべきは、MIXER'S LAB全般に通じるのですが、圧倒的な低域の情報量です。かなりの密度で低域が詰め込まれているのですが、音の質が高いためにそれが不快に感じられないのはさすがです。どちらかというと低域を盛った音が苦手な私でも全く不快感はありませんでした。オーディオ的にはいかにも現代的な高音質で、いかにもMIXER'S LABらしい仕上がりと思います。

 

その反面、収録されている演奏そのものについては、実はそれほど印象には残りません。確かに高い技量のミュージシャンで演奏されているのだろうなとは感じるのですが、世界的な一流の演奏家にある「巧いだけではない何か」は、この演奏からは感じられませんでした。

 

「Caravan」や「Sing, Sing, Sing」辺りはシカゴの「Night And Day ~Big Band」でも取り上げられている楽曲ですが、そちらと比べると何となくアレンジがしっくり来ないこともあるのでしょう。

 

 

 

 

 

名曲「Take Five」にしてもオリジナルのThe Dave Brubeck Quartetには全く及んでいない仕上がりだと思います。

 

本作の音質は素晴らしいもので、オーディオの試聴ソースとしては素晴らしい出来なのですが、音楽的魅力はその次元には及んでいないかなと感じられてしまいました。

 

  • 購入金額

    4,400円

  • 購入日

    2022年02月02日

  • 購入場所

    HARD OFF

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