香港のイヤフォンメーカー、FAudioが以前独自開発品として2種類のイヤーピースを発売しました。その2つの商品名は「FA Vocal」と「FA Instrument」であり、これ以上無い程判りやすく音質傾向を表したものとなっていました。
発売当初は結構話題を呼んだ製品でしたが、近年はあまり注目されることもなくなり、ついに今年の1月14日に生産完了が発表されてしまいました。
私も存在は知っていたものの、意外と高価ということもありこれまで買ったことがなかったのですが、取り扱い終了となるためか「FA Instrument」の特売品が出ていましたので、ここで一度試してみようと思い購入してみました。出来れば「FA Vocal」も試してみたかったのですが、生憎そちらは特売品が出ていませんでした。
率直に言って、外観上は3ペアで約2千円という価格が感じられるような何かはありません。普及価格帯のイヤフォンの標準添付品といわれても納得してしまうでしょう。
軸はやや細めで、私が普段愛用しているUnique Melodyや64AUDIO、Noble Audio辺りのノズルが太いイヤフォンで使うのは少々難しそうです。軸はさほど硬くないので無理をすれば装着できるかも知れませんが、あまりお薦めは出来ません。
今回はかつてリファレンスとしていたJH Audio Michelleで試聴してみることにしましょう。
ヴォーカルがバックの演奏に少し埋もれるイメージ
JH Audio Michelleもノズルはそこそこ太いイヤフォンですが、前述の各社と比べれば一回り細いという程度の太さであるため、何とかスムーズに装着することが出来ます。
なお、Michelleはこれまで何種類かイヤーピースを組み合わせてきましたが、結局は純正に戻ってしまうことの繰り返しでした。純正品は突出した何かはないのですが、フラットバランスもサウンドステージもバランス良く出してくれる良さがあるのです。
MichelleにケーブルとしてWAGNUS. Chocolat Lilyを組み合わせ、Cayin純正の4.4mm5極バランス変換プラグを通して、Cayin N6ii/T01で試聴します。
試聴ソースはいつも通りアナログレコードから起こしたハイレゾWAV数曲です。写真にもある「One Last Kiss / 宇多田ヒカル」も聴いています。
純正イヤーピースとの比較では、FA Instrumentはヴォーカルが少し引っ込み、バックの演奏から少し前に出ていたものが演奏と横並びになるイメージへと変わります。
FA Instrumentは低域方向の力感を少し盛る傾向があるといわれていますが、確かに純正イヤーピースと比べれば少しベースが厚くなるでしょうか。ただ、力感もそこそこ加わるので不快なだらしなさのようなものは感じられません。
しかしどうしても気になるのは高域方向の抜けが悪くなり、音場も少しヴェールがかかったかのような不明瞭さが出てしまうことです。改めて純正イヤーピースに戻してみると、高域方向が明らかにクリアかつ緻密になり、一音ごとの生々しさも増して感じられます。雰囲気で聴かせるタイプのイヤフォンには悪くないと思うのですが、メリハリの良いJH Audio製イヤフォンにはちょっと合っていないかと感じられます。少なくとも私なら純正から交換するメリットはないと思いました。
イヤーピースとしての装着感は悪くありませんし、イヤフォンとの組み合わせ次第ではある程度生きる製品だと思うのですが、今回のテストでは本来の価格に見合った満足度とは行きませんでした。特売品なので十分納得できる程度ではありますが。
-
購入金額
980円
-
購入日
2022年01月16日
-
購入場所
ヨドバシカメラ
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。