レコード盤はSONY系列のミュージックレインだけに、ソニーレコードでプレスされているようです。ソニーレコードの設備を使っているため、重量盤などではなくごく普通のLPとなっています。

まず、収録内容についてですが、基本的なアレンジは原曲のイメージを色濃く残したものとなっています。それを現代的な編成に改めたようなものといえるでしょうか。

アルバムを全て通して聴いて気付いたのは、良くも悪くも原曲に沿った歌い方であるということでしょうか。A面の方を聴いているときには割合素直な歌い方に感じたのですが、B面では原曲の個性が強いものが多いため、ちょっと原曲に引っ張られすぎかなと思った曲も一部にあります。

特にB-4の「レイニー ブルー」については、元が声にも歌い方にも強い個性がある德永英明の曲であるだけに、同じような歌い方を雨宮天の声でしてもあまりしっくり来ない感がありました。逆に元歌が正統派の歌い方であるA-1「かもめが翔んだ日」などは、声優らしい恵まれた声質でのびのびと歌っていて好印象です。ブレスの入り方などから判断する限り、基本的にはヴォーカルトラックの編集を最小限に抑えたものと思いますので、素の歌唱力はそれだけ高いということでしょう。

オーディオ的には、現代の録音を当時の音のイメージに近づけたという傾向でしょうか。レンジをさほど広くせず、雰囲気を保とうとしているのですが、低域の重量感や高域方向の解像度など、現代的な要素があちこちから垣間見えるというところです。ただ、ヴォーカルトラックはもう少しダイナミックレンジを残して録音して欲しかったところですが。抑揚が十分に表現し切れていない感があります。

殆ど予備知識が無い状態で入手したのですが、まだ20歳代の声優がこのような選曲の作品をリリースしたことに驚かされたこともあり、結構楽しめました。当時の楽曲が好きな方は聴いてみると面白いと思います。