所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ゲーム音楽。CD屋などに行くと、「ゲームミュージック」とか「ゲームサントラ」というジャンルがあります。ただ、ひとことで「ゲームミュージック」と言っても、タクティクス系ゲームの軍隊音楽調のもの、萌えゲーのポップな感じのもの、中には音ゲー・リズムゲーのような「曲そのものを聴かせる」ものもあります。そんな「幅広い」ゲーム音楽の中、ギターとヴァイオリンを使った楽曲の、音の調和に魅せられた二人からなるユニットのデビュー作をご紹介します。
soLi。もともと音楽用語である「soli」を名に持つユニット。
soliとはsoloの複数形で、複数の人声もしくは楽器で旋律を形成することを指す。それはいわゆる「solo廻し」のような形態を採る場合もあれば、「合唱(合奏)」、「ユニゾン」、「ハモり」と言うような形態を採る場合もある。
この音楽用語をユニット名に持つのは、soLiが2名のソリストから構成されているから。
それがギタリストのISAOと、ヴァイオリニストの星野沙織。
ISAOは、浜田麻里のサポートや、BABYMETALの神バンド、今は亡き“手数王”菅沼孝三との活動、以前の米国での活動時は、ハイパーテクニックバンドDream TheaterのドラマーMike Manginiや、Steve VaiのバンドにいたベーシストPhilip Bynoeとの活動で識られる凄腕ギタリスト。ジャンル的にはハードロック~ヘヴィメタルのあたりが濃く、多弦ギター(7~8弦ギター)の使い手として有名。
星野沙織は、国立音大を主席卒業、その後数々のヴァイオリンコンクールで入賞するようなトップヴァイオリニスト。そしてクラシック畑の活動以外にも、アイドルのストリングス隊での活動や、モデル活動など異ジャンルでも幅広く活躍している人物。
そんな二人をつなぐのが、「ゲーム音楽」や「サブカル」。ISAOは、学生時代にRPGのBGMのメロディをギターで奏でると気持ちよいと気づき、プロになった後にもゲーム音楽カバーバンド(ULTIMATES)を立ち上げたこともある。また星野も、ゲームとかボカロが好きな後輩から声をかけられて、メンバーとして参加したライヴが楽しかったということで、その方面に興味を持つことになる。ふたりの出逢いは、前述のISAOのバンドULTIMATESで、エレキヴァイオリン奏者を探すことになり、星野が参加、その後ISAOのソロプロジェクトSpark7へも星野が引き続き参加したり、舞台音楽を一緒に創っていくうちに、ギター×ヴァイオリンのゲーム音楽指向ユニット、soLiを立ち上げることになったとか。
そのファーストアルバムが本作、“soLi”。ゲーム音楽テイストの、わかりやすくドラマ性がある楽曲が、二人の超絶テクニックで奏でられ、とてもカッコよく、親しみやすい曲が並ぶ。
まずオープニングの「Opening Gambit」、これがドラマチック。無機質なシーケンスっぽいパターンで始まり、ヴァイオリンの美しくも物悲しい音色と、ディストーションギターの早弾きユニゾンで曲になだれ込み、朗々とした哀しげなヴァイオリンのメロと、ライトハンドも使ったハードなギターの合いの手が溶け合うAメロ、普通ならシンセが奏でそうなオブリのフレーズをヴァイオリンが執る意外性のBメロ、キメを挟んで、とても明快で覚えやすいサビ。...かと思えば、ソロ部分は結構なテク魅せ魅せプレイで、煽る煽る。そしてそれを支えるリズム隊のハイパーテクニック。このアルバムでは2つのリズムユニットを使い分けるが、この曲(と2曲目、7曲目、9曲目)はベースBOH、ドラムス原澤秀樹のコンビ。実はcybercatは原澤からこのユニットにたどり着いた。原澤が自分が参加したsoLiの楽曲のドラム演奏動画をYouTubeに上げていて、そのプレイ動画(とくにこの「Opening Gambit」)で着目し、そこから元曲MVに行き、さらに全曲トレーラー動画を観て、ディスク購入する気になったわけ。ここでの原澤のプレイはものすごいの一言で、左手の守備範囲の特に縦方向の広さや、重ねシンバルを多用した多彩な音色、変拍子フィルのおさめ方などあらゆることが神がかっている。つか、4人構成で一人はドラマーなのに、弦数多いなw(合計18弦=ギター8弦+ヴァイオリン4弦+ベース6弦)。
「Mirror's Nest」もゲームっぽい。ギターとヴァイオリンのメロの取り合いは、こちらの方が融合が大きい。ギターがヴァイオリンのメロディラインを取るのはなんとなく想像つくが、その逆も結構あり、互いがひとつのメロディを取り合い、分け合い、溶け合い...と、とても面白い曲。後半では星野のヴァイオリンと秋津瑞貴のチェロが左右チャンネルに別れて、高音域と低音域でメロディを分けると言うような試みも聴かれる。この曲(と3曲目、6曲目、8曲目)のリズムユニットは、ベース瀧田イサム+ドラムス前田遊野のコンビで、ISAOとは、ソロプロジェクトSpark7や、BABYMETALの神バンドで旧知の仲。結構プログレ色強い演奏かも(譜割りがそうなのだが)。
このアルバムは、ISAOと星野のふたりが曲を書いているのだが、ISAOが「自分にはないクラシカルな感性」と言うのが、星野が書いた3曲の内の一曲「Der Baum」。この曲はリズム隊レスで、逆にヴァイオリン3、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1の弦楽隊+ISAOのギター+星野のヴァイオリンという構成。弦楽の中から、フワッと泣きのディストーションギターが浮かび上がるのが新しい。
ゲーム音楽って、 クラシックやロック、ポップスなどのエッセンスを取って、わかりやすく耳なじみよく再構成したものが多い。その基本線は崩さない上で、これでもかとハイパーテクニックをぶつけてくる作品。
ギター+ヴァイオリンではなく、ギター×ヴァイオリン。
そんな相乗効果が感じられる作品です。
【収録曲】
1. Opening Gambit
2. Burning Blood
3. Behind U!
4. Mirror's Nest
5. Der Baum
6. the Flamer
7. Plasma
8. Quiet Waltz
9. the Tower
「Opening Gambit」
出逢いの動画、原澤秀樹による「Opening Gambit / soLi 【ドラム動画】」
ドラマチックな構成を持つ楽曲と卓越したテクニックの融合
採用されている曲にはあまり統一性はないが、それぞれの曲のバックにストーリーが見えるような曲を、ギターとヴァイオリンが溶け合いながら奏でている。
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購入金額
3,300円
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購入日
2022年01月04日
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購入場所
disc union
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