レビューメディア「ジグソー」

独特の雰囲気が魅力

先日まで発売前のKS-Remasta製シェルリード線を連続して取り上げていましたが、それは元々このGoldring Eliteと相性の良いシェルリード線を探すために試聴を始めたものでした。結果的に当初予定していた2機種以外から購入することになりそうになってしまいましたが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回取り上げている英国Goldring製MCカートリッジEliteは、実は新年早々に中古で購入していたものでした。購入時点でMy Sonic Lab製ヘッドシェルSH-1Rh(同社製シェルリード線MR-1Rh添付)と組み合わされていて、そこそこグレードの高い組み合わせなのでそのまま使えるかと思っていたわけです。

 

しかし、クラシックファンに絶賛されるEliteの良さは、この組み合わせではあまり感じられなかったのです。レンジが狭く中高域が変に硬質でヴォーカルものなどでは不満の方が出るような音でした。

 

そこで手元にあったKS-Remasta製シェルリード線、KS-LW-1500EVO.IIと組み合わせてみたところ、レンジの狭さは解消したのですが、今度は表現が妙にテンション高く明るくなってしまいました。PC-Triple Cの明瞭さが悪い方向に作用してしまった感があったのです。

 

こうなるとシェルリード線の交換は必須であるものの、もう少し落ち着いた音調の製品を組み合わせるべきと考え、純銀線を使うKS-Stage102EVO.IIと7N D.U.C.C.を採用するKS-LW-7000EVO.Iの試聴機を貸していただいて判断することにしたわけです。

 

結果としては第2世代Stageシリーズの実力を実感することとなり、このシリーズのいずれかを購入するとお伝えすることになったのですが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

シェルリード線の試聴を繰り返すうちにGoldring Eliteの性格もある程度は掴めてきたということで、今回はこのカートリッジを紹介することにします。

 

 

 

 

▲購入直後の状態
▲購入直後の状態

 

 

 

▲この組み合わせで納得できなかったことで一斉試聴が始まることに
▲この組み合わせで納得できなかったことで一斉試聴が始まることに

 

 

 

 

▲シェルリード線だけを替えた状態
▲シェルリード線だけを替えた状態

 

更新: 2022/05/18
総評

原音忠実タイプではないが巧く聴かせる

ヘッドシェル単体での音質評価は行っていないのですが、シェルリード線の試聴時に着脱のしやすさを重視してAT-LH18/OCCと組み合わせましたので、これ以降の試聴はAT-LH18/OCC+KS-Remasta製第2世代KS-Stageシリーズの組み合わせで行うことになります。試聴機器は当然ですが、Technics SL-1200G+Phasemation EA-200となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このカートリッジのユーザーは圧倒的にクラシック愛好家が多いようで、あまり他のソースを使って試聴しているレビュー等は見かけません。

 

一般的にいわれている傾向では、解像度は低く英国製品らしい音色やトーンに魅力があるとのことですが、私は容赦なくロック系の楽曲で試聴します。シェルリード線の方のレビューでご確認いただけますが、「Babylon Sisters / Steely Dan」や「Runaway Dancer / Champlin Williams Friestedt」「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」を聴いて判断しています。

 

その上での意見ですが、別にEliteは特に解像度が低いカートリッジではありません。比較相手がaudio-technica AT-OC9/IIIという解像度に全振りしたような製品であるだけに、さすがにそれよりは落ちますが、水準レベルの解像度は十分あります。レンジもまずまず広く、思った以上に細かいところまで出ていて感心させられました。

 

Eliteは針先がGyger Sというラインコンタクト針の一種なのですが、針先の径は5×120μmとかなり直線的なものです。国産で近い価格帯のPhasemation PP-300は同じラインコンタクト形状でも3×30μmだそうですから、それと比較すると針先が大きく直線的ですから、緻密さではやや劣ると思うのですが、聴感上十分なところまでは出ているといって良いでしょう。

 

発電系では純銀線を使ったコイルという辺りに特徴がありますが、あまり極端な銀の音色という印象はありませんでした。中域辺りの独特なしなやかさが銀なのかなと感じさせる程度です。

 

デジタル的と評される程の正確さを誇るAT-OC9/IIIと比較するとヴォーカルに独特の余裕のようなものが乗り、残響音や間接音が豊かに表現される辺りがこの製品の特徴といえるでしょう。音楽的魅力にあふれる反面、AT-OC9/IIIほどの原音への忠実さは追い求めていないように感じられます。間接音が豊かである分、直接音がややマスクされたように感じることで解像度が低いと勘違いするのかも知れません。しかし一つ一つの音を注意深く聴いていれば決してそうではないことが理解できるはずです。

 

同じaudio-technica製のMCカートリッジでも、音色と空間表現に全振りしたような傾向を持つAT-ART7と比較するとEliteの方がアタックへの反応も鋭く出ますし、独特の雰囲気は演出しつつもあらゆる部分で水準を割っていないというのが面白いところです。「10 Miles」などはEliteの中域が巧く作用してとても良い雰囲気を醸し出します。

 

 

そこそこ古い中古購入品ですのでこれをメインに据えるのはちょっと負荷がかかるので避けるつもりですが、AT-OC9/IIIでちょっと味気ないと感じたようなレコードでは、今後はこのEliteが活躍してくれることになりそうです。それだけの満足度は十分にありました。

  • 購入金額

    38,500円

  • 購入日

    2022年01月05日

  • 購入場所

    HARD OFF

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